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2005年11月17日

集合的な脳。

仕事のなかでエコシステムという言葉が出てきて、ああ、そういえばそんな言葉が一時期よく使われていたな、と思い出しました。

もともとエコシステム(Ecosystem)とは、生態系という生物学の用語ですが、食物連鎖などをはじめ生産、消費、分解などのサイクルをまわしていくことのようです。つまり、動物が植物を食べる、その排泄物が植物の栄養になる、というような永遠につづく循環です。

この言葉がビジネスとしても使われるようになった。つまり、複数の会社がパートナーシップによって協業し、ともに発展していくようなビジネスモデルのことを、自然界の生態系になぞらえてエコシステムと呼んだわけです。考え方自体は、それほど新しいものではないと思います。IBMなどではかなり前からステークホルダーという考え方のもとに、企業と利害関係をともにする人々との関係性を重視してきた、ということを以前、何かで読んだ記憶があります。と思って、調べてみると、IBMのサイトにまさにエコシステムの解説がありました。

関係性ということでは、マーケティングの分野でいうと、リレーションシップマーケティングということが、かつて言われていました。顧客との継続的な関係性を重視して、集客はもちろん、顧客の維持に注力すべきである、という考え方です。お客さまは神様です、とは昔から言われていたことですが、お客さまによって企業は生かされている。ただ、CRM、テキストマイニング(アンケートの自由回答の文章を分析する手法)というITの手法に走りすぎると、ほんとうにお客さまの心がみえているのだろうか、という疑問も若干感じたのですが。

ブログやSNSの世界も、ある意味、エコシステム的なところがあるんじゃないか、と考えました。読むこと、コメントをつけること、というのは、時間がかかるものです。自分の時間を消費して、自らの時間や労力を「与える」行為といえます。変なたとえですが、プランクトンがサカナに自分の身を与えるような行為(とはいえないか)でもある。けれども、その与える行為が、ブログの書き手を生かしてくれる。そして今度は与えてくれたひとにコメントを返す、もしくはそのひとのページを訪問してコメントすることで、循環していくわけです。

以前、あるセミナーで東京大学の社会心理学博士、池田謙一教授のお話をうかがったことがあるのですが、そのなかで池田教授は、上記のような生かし生かされる関係を「互酬性」という言葉で説明されていたようでした。インターネットは顔のみえない世界なので、ハンドルなどの匿名による書き込みも多く、個々に対する信頼性は低い。しかし、何かしてくれたことに対してはお返しをしたくなる、という意識が高いようです。というのも、コメントの連鎖を考えるとよくわかる。

コメントで書き手を生かし、生かされた書き手が読み手にコメントする。その循環が相互を生かすものであれば、永遠に生かし生かされる関係として続いていく。しかし、どちらかが支配する、奪う立場になると、生態系のバランスが崩れる。攻撃的な書き込みや煽動、いわゆる祭りというものは、盛り上がっているようにみえますが、生態系を破壊するものであるように思います。ネガティブループに引き込むことによって読み手の意識から何かを奪いつづける。

生態系には、バランスが重要だ、と思いました。

と、書いていていつものようにまた飛躍するのですが、映画館には足を運べないものの、レンタル屋さんに通って、来年から再び映画年間100本鑑賞プロジェクトを進めることにしました。そんなわけで、リハビリをかねて映画を観はじめたのですが、古めの映画で申し訳ないのですが、「コンスタンティン」を観ました。

B001ALQWLYコンスタンティン
キアヌ・リーブス, レイチェル・ワイズ, ジャイモン・フンスー, プルイット・テイラー・ヴィンス, フランシス・ローレンス
ワーナー・ホーム・ビデオ 2008-07-09

by G-Tools

キアヌ・リーブスが主演で、タバコを吸うときの仕草はかっこつけすぎ、と思ったのですが、やはりかっこいい。横顔がいい。彼は霊感のある私立探偵(というか霊媒師?エクソシスト?)で、特殊な能力を生かして、邪悪なものたちと戦う。具体的に邪悪なものとは、悪魔と天使なんですが、現実世界というのは、この悪魔と天使の世界のはざまで成立していて、バランスが取れている。その均衡を崩そうと、天使ガブリエルが企むのですが、この天使の翼が真っ黒なんですよね。天使なんだけど腹黒い。その対比を映像で表現している。天使、悪魔、人間の戦いという構図で、さっと頭をよぎったのが、まさに「デビルマン」なのですが、やっぱり同じようなテーマでSFXを駆使しても、邦画ってのは限界があるのでしょうか。コンスタンティンでは、ガブリエルの女優さんは(うーん、誰だっけこのひと)ものすごくきれいなひとなんだけど、それだけに黒い翼との対比が印象的でした。

キリスト教には、自己犠牲という考え方もあります。これは限りなく与えつづける考え方かもしれません。しかし、そんな高貴な悟りにはすぐに到達できないのもまた人間です。そして、バランスの崩れた世界というのを体験してこそ、貴い考え方もわかる。痛みをわかった人間こそが、ほんとうにやさしくなれるのかもしれません。

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■いつもながら最後には話が大きく脱線しちゃったのですが、エコシステムの解説。
http://www.blwisdom.com/word/key/1056.html

投稿者 birdwing : 2005年11月17日 00:00

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