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2006年1月 9日

満足にはおしまいがない。

昨日、博物館に行った帰りにおもちゃ屋さんでお年玉を使ってほしいものを買い込んだうちの息子(長男)ですが、もう今日はいろいろ楽しんだからいいでしょう、と思っていたのに、「なんだかつまんない」とのこと。それまでは正月からどこにも行かずに家で遊んでいたはずなのに、楽しいことがあるともっと楽しみたいという欲が生まれるようです。満足というのは満たされると次の段階に向う。マズローでしたっけ、自己実現の欲求に向かう5段階の欲求というのは、モチベーションの本のなかでよく使われる言葉です。

そんなわけで明日みよう、と言っていた「ULTRAMAN」の映画を夜にいっしょに観たのですが、ミュータントとして人間が怪獣に変わっていくシーンなどは、ちょっと子供には怖すぎる。というか刺激が強すぎる映像があり、長男はいいとしても2歳の次男にはあまりみせたくなくて、そのシーンになると2歳の次男には目隠しをしたりしていました。一瞬だけど遠山景織子さんと大澄賢さんのキスシーンなんてものも、なんだかむずむずする。こういうのは子供と見るのは居心地が悪いものですね。

子供も大人も楽しめる映画というのは、なかなか難しいものです。ぼくは大人としてULTRAMANが楽しめたのですが、息子にとっては「怪獣は一匹しか出てこなかったじゃん」という感想でした。怪獣との戦闘シーンも控えめで(しかしCGによる映像はかなりすごい)、若いイケメンが主人公ではなく(といったら失礼だけどハムの別所さんがウルトラマン)、家族があって、さらに子供の頃に銀色の流星のような飛行機をみて空を飛ぶことに憧れていた=パイロットという仕事を選んだ=ULTRAMANになって自ら空を飛べる喜び、などが描かれているこの作品は、ぼくはいい映画だと思ったのですが、子供には伝わりにくい。

では、ヒーローもののように戦闘シーンもあって、子供に観せたい映画は何かというと、ぼくがいままで観たなかでは「アイアンジャイアント」かな、と思いました。実は殺戮が目的で作られた異星のロボットが地上にやってきて少年と出会う。その少年との触れ合い、ロボットの心のなかに生まれた感情などが描かれるわけですが、ぼくはとても感動した。しかしながら、息子に勧めたら断られた。しょぼん。

映画にしてもゲームにしても、戦闘シーンがあるから成長して犯罪をおかすようになる、というのは短絡的であると思います。これは仮想の世界である、現実の世界にきちんと戻れる、という判別さえ教えてあげれば、きっと問題にはならない。そのためには、親が現実世界の安全地帯になること、あたたかい場所を確保して子供たちが帰ってくることができるようにすべきだし、子供が仮想の世界に行って帰ってくることができなくなるような現実を作り出さないようにしなければならない。

残念ながらぼくはガンダムは全然観ていないし、ヒーローや戦隊モノに関するこだわりもありません。むしろこだわりはじめたのは、息子が生まれてからでした。しかし、いまの潮流として、オタクな大人たち、大人になれない大人たちを楽しませるための仕掛けが多すぎるようにも思います。もちろん、大人たちもかつては子供だったわけで、大人のなかにある子供ごころをくすぐるものは、現代の子供たちにとっても面白いものということはある。ただ、郷愁をそそるものが売れるから、ということで量産していくのは、ちょっとどうかなとも思います。

余談ですが、子供ができてよかったのは、子供の頃の自分を追体験できることです。つまり子供の遊びや興味を知ることで、ぼく自身が体験してきた出来事も明確化されるし、子供たちが好むものもわかる。大人は大きな子供であるし、子供はちいさな大人かもしれない。ある境界があって、そこから先は大人、というわけではなくて、子供は大人を内包しているし、大人も子供を内包している。

通常、劇場では子供といっしょに映画を観ることはあっても、自宅ではあまりないのですが、ULTRAMANをいっしょに観てしまって、もっと家でくつろいで子供といっしょに観ることができる映画を、と思ってしまったのでした。

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■アイアンジャイアントでも、さりげなくCGが使われています。CGというのは、実写でもアニメでもない、まったく違う何かを創り出すような気もしました。これ、ピート・タウンゼント(ザ・フー)が総指揮だったのか!

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ピート・タウンゼント ティム・マッキャンリーズ
ワーナー・ホーム・ビデオ 2007-12-07

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投稿者 birdwing : 2006年1月 9日 00:00

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