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2006年2月 3日

生活知のテクノロジー。

突然の歯痛で困りました(いま痛みが和らいできたのですが)。ついでにコンタクトレンズを片方だけ紛失してしまった。あんまりついてないようですが、気持ち的にはなぜかいい感じです。なんとなくいろいろなことを前向きに考えることができる気がしています。

さて、ほとんど技術とは関係ないWeb2.0に刺激された思索について昨日書いたのですが、釈然としないものを感じていました。というのは、トレンドを分析しようとすると、どうしても定量的な結果に頼らなければならなくなる。日本人はランキング好きです。ランキングの上位にあるものは人気があるものだから、チェックしなければと判断するのではないでしょうか。しかし、ランキングをつくるためには数値的なものさしが必要です。定量的な結果に頼らずに個々の関係性を尊重したサービスを考えようとすると、当然のことながら全体把握というものはできなくなります。この相反する方向性をどう合致させたらいいのか、どうも釈然としないわけです。

ブログの書き込みを定量的に調査してランキング化するものとしては、以前、このブログでも紹介しましたが、KIZASIという仕組みが面白いと思いました。このブログマーケティングツールを開発しているCACでは、さらに「ブログクチコミリサーチ」というサービスをはじめたようです。いずれは有料化するようですが、現在は無料なのでいろいろと試してみました。

なかなか面白いです。現在は機能が制限されているようですが、キーワードを2つまで入力できて、約1690万件のブログエントリーのなかから入力した言葉に合致するブログの数を時系列でグラフ化してくれます。グラフは折れ線グラフと棒グラフから選ぶことができたり、実数と補正値(10万ブログ中の言及数)で表示することもできます。

たぶん固有名詞的な特定キーワードを入れるのが基本だと思います。ライブドアを入れてみると、堀江さんの逮捕期間で記事の増減が顕著でした。けれども、昨日から感情の重要性にこだわっていたぼくは、「楽しい」と「寂しい」で検索してみています。数値的には「楽しい」ことを書いているブログの方が多く、しかも年末に多い。ところが仕事初めのころにはやや減少している。関連する語のランキングも全品詞、名詞、形容詞、動詞で表示することができて、しかもその言葉をクリックすると、実際のブログを表示することもできます。これは!という具体的なアイディアを思いつかないのですが、何か使えそうな気もします。といっても、これもやはり定量的な分析がメインです。

画面をキャプチャーしてみました。このページの右上にあるような感じです。赤い棒グラフが昨年の末からの、「楽しい」と書かれたブログ数の推移です。

ところでぼくの釈然としない気持ちを解明してくれたのは、やはり茂木健一郎さんの本でした。実は1月には集中的に茂木さんの本を読んでいたのですが、あまりにも傾倒しすぎるのもどうかと思い、3冊でとりあえず中断しました。しかし、購入しておきながら読んでいない本が1冊あった。ちくま新書の「「脳」整理法」という本です。

この「「脳」整理法」を読みはじめところ、やはりのめり込んでしまい、既に半分ぐらいの第5章を読んでいるところなのですが、冒頭で「世界知」と「生活知」という言葉が出てきました。「世界知」とは、「世界の成り立ち」についての知識であり、科学に代表され、統計的な真理を求めるものだそうです。一方で「生活知」とは、「いきいきと充実した人生を送るための知恵」と書かれています。規則性やランダム性ではなく、偶有性のあるものであり不確実な知です。まだじっくりと読んでいないので、間違っているかもしれないのですが。

つまりぼくはこのふたつを混同していたわけで、そもそもまったく別のアプローチであり、考え方です。統計的な真理に基づいた世界知を求めることは、重要かもしれません。しかしながら、ぼくはこの統計的な真理には限界があると思います。というか、世界とは何だ、ということを解明すること自体に無理がある。統計的なランキングは面白いのですが、当たり前のことだけれども、統計が世界のすべてをあらわしているか、ということそんなことはない。

今後、重要になる技術とは、ひとりひとりが情報化社会でどう生きていくか、という「生活知」に根ざしたテクノロジーではないでしょうか。もちろん統計はこれからも残っていくと思うのですが、Web2.0的なテクノロジーというのは従来のような世界の成り立ち方を解明する統計的または科学的な手法に基づくテクノロジーではないような気がしています。きちんとした方程式化できないものであったり、定量的な評価で決まるものではないかもしれないし、きちんと正解があるものでもない。正解を創る、生成する、というようなものかもしれません。

茂木さんはさらに「生活知」のキーワードとして、偶有性、一回性、他者、コミュニケーションなどを挙げています。なんとなくぼんやりとしたコンセプトが浮かんできたのですが、結論を急がずに、まずは混沌のままにしておきます。

投稿者 birdwing : 2006年2月 3日 00:00

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