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2006年2月 7日

合成から創造する。

いろんなことをとめどなく考えつづけるブログですが、秩序が生まれそうで混沌としているぐちゃぐちゃな状態です。そのぐちゃぐちゃな状態から、最近よく使われる「マッシュアップ」という言葉を思い出しました。もういまさら、という感じなのですが、実は最新の言葉を理解していないぼくは、きちんとマッシュアップを理解しようと思いました。

「マッシュアップ(mashup)」は昨年の末ごろからテクノロジー的な用語として使われる頻度が高くなってきたようですが、もともとはヒップホップ系DJ関連の音楽用語だったようです。基本的なことを、マルチメディア/インターネット辞典から拾ってみます。

■マルチメディア/インターネット辞典
http://www.jiten.com/dicmi/docs/k31/22734s.htm

DJの間でリミックスのスタイルで使われてきた、1つの曲からメロディーを、もう1つの曲からボーカルを取り出すなどして、複数の曲を1つに合成して新しい曲を作る手法の総称。

この手法自体は、特に新しいという感じはしないのですが、DJのデンジャー・マウスとラッパーのジェイ・Zがビートルズの音源を勝手にリミックスした「ザ・グレイ・アルバム」のように、著作権を無視して勝手に使うような違法性が漂うところにラジカルさを感じます。軽薄に言ってしまうと、カルチャーっぽい匂いがする。その人気にあやかるようにして、デビッド・ボウイはリミックスコンテストを実施したようで、なかなか楽しそうなのですが、DJたちからは「商業的だ」とめちゃめちゃ批判されていたようでした。古い記事ですが、HOTWIREDの2004年5月の記事です。

■ネットで普及する音楽「マッシュアップ」は著作権の常識を変えるか
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20040604204.html


マッシュアップのファンだというDJのジャンマ氏も「ボウイにもっと注目を集めるための、商売のテクニックでしかない。このコンテストにはあまり興味が持てない。わざわざこういうジャンルにボウイが首を突っ込む必要もないような気がする」と語る。

かつての「恋のマイアヒ」をめぐる「ノマネコ」騒動を思い出しました(どうでもいいことですが息子の小学校の運動会でずーっと流れていて、何も小学校の運動会でマイアヒ〜じゃなくてもいいのに、と思ったものです)。おれたちが勝手に作り出したもので商売するなんて、という怒りがあるようです。技術的な分野では、オープンソースをめぐる論争に近い気がしました。知というものは純粋にみんなのものであり、商業的な金儲けに絡め取られるものではないという考え方です。

とにかく違法すれすれのところで音楽を創り上げていたところに、マッシュアップの精神、というものがあるのではないでしょうか。Googleでざっと検索したレベルの情報なのであまり深いところまで調べてはいないのですが、2003年11月にはAll About「テクノポップ」で四方宏明さんがマッシュアップについていろいろ書いていました。つまりずいぶん昔から言われていたことだったわけです。

■ポップ裏街道〜Part 4 マッシュ・アップの作り方
http://allabout.co.jp/entertainment/technopop/closeup/CU20031126/index.htm

最近はどうだろうと思ってKIZASIで「マッシュアップ」を検索したところ、日本では布袋寅泰さんの『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』とRIP SLYME『FUNKASTIC』が話題になっていました(最近の音楽はまったく聴かないので、遅れていて恥ずかしいです)。1/23の週では、収集ブログ内言及実数として、65件のブログで取り上げられていて、1月〜2月のピークとなっています。ちなみに関連語を形容詞でみると、1位は「簡単に」、2位は「新しい」、3位は「かっこいい」となっている。このうち1位の「簡単に」というのは、「簡単に言ってしまうとマッシュアップとは・・・」と言葉を解説するために使われているので、まだまだ一般には浸透していないため、説明が必要になっているのかもしれません。この検索結果からは、否定的な言葉は少ないようです。かっこいい、新しいものとして受け入れられているという印象がありました。

この布袋さんとRIP SLYMEのマッシュアップはトヨタのbBのCM曲に使われているということで、トヨタのサイトを探してみたのですが、すごいサイトでびっくりした。そもそも製品コンセプト自体が、クルマをミュージックプレイヤーとしているため、クルマ×音楽のマッシュアップといえるかもしれません。

■トヨタbBのサイト
http://toyota.jp/bb/

■動画も見ることができるトヨタのブログ
http://blog.toyota-music-player.jp/

一方で技術の方でマッシュアップというのは、Googleに代表される地図サービスが、まさに急速に生まれつつあるようです。つまり地図+特別な情報というかたちでコンテンツを組み合わせることにより、さまざまなサービスが生まれている。以下、CNETの記事です。

■マッシュアップ--仮想空間と現実をつなぐ地図
http://japan.cnet.com/column/web20now/story/0,2000055302,20093879-3,00.htm

ほんとうは技術についての理解を深めようと考えていたのですが、音楽の背景だけでもいろんな発見があり、ついつい書きすぎました。もう少しいろいろと調べた上で、面白い視点があれば追加で書くことにします。

考えてみると、インターネットがもたらしているあらゆる社会現象がマッシュアップ的かもしれません。マイアヒのように音楽とFlashアニメーションのマッシュアップもあるし、こうしてブログで他の記事を引用すること自体が別のテキストと別のテキストをリミックスするマッシュアップじゃないか、と。そういえば、ソフトバンクで写真などの引用を認めるサイトのニュースが注目を集めていたことを思い出しました。

■ソフトバンクグループ、ブログでの正規引用を認めたニュースサイトを開設
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20095811,00.htm?tag=blogger.cr

素材や情報はもちろん知識も共有(Share)する時代なのかもしれません。しかしだからこそ、企業としては知財という観点が重要になってくる。どうぞお使いください、とブロガーたちに素材や情報を提供するのか、これは私たち会社のものだから使っちゃダメと阻止するのか。情報あるいはコンテンツは誰のものかということで、これも議論になりそうです。

ちなみに趣味のDTMの場合ですが、既存のCDからボーカルだけ取り出してリミックスした曲はもちろん違法となり、MUZIEでは審査ではねられて公開不可になってしまうような気がします。しかしながら、自分がいままで作った曲のマッシュアップはありだな、と思いました。やってみようかな。しかし、そのためにはまずマッシュアップと言われているCDを聴かなくては。

投稿者 birdwing : 2006年2月 7日 00:00

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