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2006年4月 6日

その先の未来。

東京タワーを間近でみてきました。こんなに近くでみたのは久し振りです。昨日とはうって変わって快晴の春の青空に、すくっと屹立する東京タワーは凛々しいな、と思いました。赤と銀色の配色が美しい。「Always 三丁目の夕日」という映画ではCGで建設途中のタワーが再現されて象徴的に扱われていましたが、やはり日本人の気持ちを代表する何かがあるような気がします。中断したまま読んでいないリリー・フランキーさんの「東京タワー」を思い出したりもしました。

ところで、この東京タワーですが、まった別の場所に新東京タワーができるとのこと。伝統的な東京タワーは333mですが、新東京タワーの方は610mです。墨田区にできることが決定したというニュースがありました。デジタル放送関連の機能が集約されるらしい。機能的なものはもちろん、21世紀のぼくらの気持ちを象徴するような建築物であってほしいと思ったりもします。

ぼくが今日、東京タワーをみたのは別に東京見物をしていたわけではなく、東京プリンスホテルパークタワーで開催されているIDF(インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006)に参加したからでした。半導体の最大手インテル社が主催するイベントです。

基調講演を拝聴したのですが、同時通訳の機械を外して聞いてみました。英語はあまり得意ではないのですが、同時通訳はありがたい一方でちょっと混乱もします。美しいプレゼンテーションの画面を集中してみていると詳細はともかく、なんとなくプレゼンテーターが強調していることは伝わってきました。今回は、途中でゲストのスピーカーを壇上に呼んで、お話をうかがうような形式でしたが、なかなか説得力がありました。マッシュアップ的などという言葉も安易に言ってしまいそうになりますが、ひとりのプレゼンテーターが話しつづけるよりも新鮮です。それぞれのゲストスピーカーの方に特長があり、いろいろと考えさせられました。

ふたつの基調講演のあいだに映像が流されたのですが、この映像がよかったです。各国の子供たちが、ITについて語るのですが、昔のことを覚えているよ、というキーワードでいろんなことをお話します。たとえば、「昔は人に道を聞いたんだよね」「パパはオフィスって場所で働いていたんでしょ」「ダイアルアップってものがあったよね。がーって音がして」のような過去を「覚えているよ」と延々と語りつづける。結局、モバイルPCによるナビゲーションで道がわかる、無線によりどこでも仕事ができる環境になる、アナログによるインターネットは消滅するなどのことから、あらゆる技術が過去のものになってしまうことで、その先の未来のことを喚起させるような映像です。ちょっと感動しました。いま当たり前のような現実も、きっと子供たちにとっては過去のものになるはずです。UMPCも発表になりましたが、大きくハードウェアの世界に変化がありそうな予感もあります。そして、それを支えるのがインテル社の技術という印象を持ちました。

講演の壇上に並べられたマシンのなかにはIntel Macのマシンもありました。ちょうどアップルからIntel MacでWindows XPが動くBoot Campというソフトウェアを提供するニュースが盛り上がっていました。詳細についてはあまり公開されていないためアナリストによっては懐疑的な見解もあるようですが、大半はこの動きを評価しているようです。ぼくもこれはいいな、と思っています。思わず、Intelが入っているMac miniが欲しくなった。

基調講演の最後には、デジタル・ヘルスとして医療分野に向けたインテル社の取り組みについてのプレゼンテーションもありましたが、これも興味深いものでした。壇上で、医療用のタブレットPCを操作して、電子カルテの実演のようなものをされていたのですが、実際に息子(次男)が喘息で入院したとき、入院した病院は最先端の施設が導入されていて、看護婦さんはベッドの脇に備えられているタッチパネル式の機械を操作して、診断結果などを入力していたことを思い出しました。その画面はテレビにもなっていて、キッズチャンネルのようなアニメをみることもできる。さらにぼくは使わなかったのですが、病室外と、テレビ電話のようなこともできたような気がします。

ゲストスピーカーである日本医療情報学会理事長(兼学会長 東京医科歯科大学 情報医科学センター センター長)の田中先生という方は、次のようなお話をされていました。電子カルテのような医療のIT化をすすめるにあたっては、まず標準化がある。次に個々にあわせたカスタマイズがある。そしてさらにユビキタスとして、いつでもどこでも健康状態がモニタリングされていて治療を受けられる社会がある、ということです。

個々に合わせたカスタマイズ、ということでちょっと思ったのは、個人の遺伝子情報もデータベース化されるんじゃないだろうか、ということです。というのも、Googleが地図情報や図書館情報だけでなく、遺伝子情報もデータベース化しようとしている、というニュースを読んだことがあったからです。真偽は不明なのですが、SF映画のような未来が身近に迫っている感じもあります。

いつも健康状態をモニターされているのもちょっと困りますね。ナノレベルの目にみえないRFIDのようなチップを身体に埋め込んで(というよりも薬を飲むようにチップを飲み込んだり注射で身体に入れて)、モニターされた情報は無線で身に着けている時計のような機器に送って管理する。そんな感じかもしれません。問題が生じると「ストレス・ガ・ジョウショウチュウ・キュウソク・ヲ・トッテクダサイ」などと、デジタル・ヘルス・エージェントに言われてしまうのでしょうか。いずれは立体映像のような形で、チップから読み取った情報を解析して異常が認められると、ぽんと妖精のようなバーチャル・エージェントが出てきて「ねえ、ちょっと頑張りすぎよ。休んだら?っていうか、休みなさい」と警告されるのかもしれません。

どんな未来になっても自分の健康は自分で管理したいものですが、そんなSFっぽい未来もちょっと期待しています。

投稿者 birdwing : 2006年4月 6日 00:00

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