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2006年9月 3日

切り取られなかった現実。

太古の昔からそうだったのかもしれないのですが、洞窟のなかに閉じこもって動かないでいれば安全だけれども、洞窟から外に出て動き出すとリスクもともなうものです。そして、自分の思惑通りに進展しないのが世のなかというもので、現実は予想外の偶然であふれている。

茂木健一郎さんの著作などでは、その偶有性を楽しむことが重要であると書かれていたのですが、設計図にない偶然という生成される現在が面白いものであり、自分の思い通りにはいかない現実を楽しめるようになると、自分の幅も広がるような気がしました。そして、一般的なWeb1.0的なコンテンツではなく、ブログやSNSが面白いのも、どうなるかわからない生成する現実にあるかもしれません。

夏休みの終わりに北海道を旅行して、その旅行記を書こうとしたのだけれども、自分には無理であるということに気付きました。書こうと思えば書けるのだけど、その旅行記を発表する自分に抵抗がある。ひねくれているのかもしれません(たぶんそうだ)。しかしながら、結局のところ今週はブログで何らかの形で北海道のことを取り上げていて、なんだ、書いてるじゃん、という気もします。たぶんそれがぼくのスタイルなのでしょう。

北海道では人気を集めている旭山動物園にも行ったのですが、長男(9歳)が動物園で面白かったのは、なんとトンボでした。夏の終わり、とにかく北海道は至るところトンボ天国で、層雲峡では木の柵の上に5匹ぐらい並んで止まっていたりする。うちの息子はそんなトンボたちを追いかけ回していて、追い掛け回しているうちに帽子の上に止まったりしているのですが、18匹目を捕まえたっ!とか自慢する。ダイビングする北極熊とか、チューブのなかを遊泳するアザラシとか、それが見所でしょう、と思うのですが、気がつくと彼はトンボを追い掛け回してました。写真はトンボを捕まえている息子です。

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ただ、それがいいと思うんですよね。別に旅行の正解を強制する必要はないし、トンボをたくさん捕まえることができたので北海道は楽しかった、というのであれば、それは息子の思い出として価値があるわけです。別にガイドブック的な名所をまわらなくても、本人にとって価値がある経験をすれば、それが旅の醍醐味でもある。

写真を撮影するという行為もそういうところがあって、何を切り取るかということはカメラマンの意図が大きく反映することになります。同じ風景をみていたとしても何を被写体としてクローズアップするかによって、みているものの意味さえ変わってしまう。そこが単なる記録と違って面白いと思うのですが、逆に怖い部分もあって、たとえば報道などの映像や写真は、何を切り取るかによって観るひとたちの意識を操作することにもなり得るわけです。

ぼくはどちらかというと切り取ってしまった現実よりも、切り取られなかった現実のことを思うのが楽しい。たとえば写真のフレームの外で佇んでいる子供とか、収拾のつかない諍いに困惑しているカップルとか。

息子には、使い捨てカメラを2本持たせて自由に撮らせたのだけど、いちばんうまく写っていたのは、層雲峡の展望台に据え付けられた望遠鏡をのぞいているどこかのおじさんでした。こりゃ誰だ?あまりにもうまく写っていないか?ということで盛り上がったのですが、息子のコメントとしては「風景を撮ったら、おじさんが入っていたんだよう」とのこと。狙って撮影したのではないショットは、なかなか楽しいものがあります。

という意味ではあまり面白みはないのですが、以下は、ぼくが北海道旅行で撮影した写真です。北海道大学の風景と、旭山動物園の一部です。

上段左から、飛行機からみた雲(息子撮影)、クラークさんの銅像の台座にあるボーイズ・ビー・アンビシャスの碑を触っている息子(大志もってくれるといいのですが)、北大で公開されていたモンゴルの恐竜展の骨(パラサウロロフス?)、恐竜の子供の化石、ポプラ並木の前にあったベンチの地面、校舎(何学部の校舎だったか忘れた)、子供たちが水遊びしていた公園の水、次からは旭山動物園でペンギン、観覧車(乗ってみたかったけど乗らずに終了)です。

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写真は難しいですね。また日をあらためて掲載することにしましょう。

投稿者 birdwing : 2006年9月 3日 00:00

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