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2007年8月11日

数字と美しさ、共感覚について。

午前中、夏風邪を引いてしまった長男くんを奥さんが病院に連れていったので、次男くんと留守番してNHKのテレビを観ていました。

最初は夏休みらしくカブトムシVSクワガタムシの特集をやっていました。ヘラクレスオオカブトなど世界の甲虫が紹介されていて、さすがにでっかいなーと思ったのですが、どうしてもムシキングを思い出してしまう。本物のカブトムシにリアリティを感じなくなっているのは、ゲームやアニメの悪影響でしょうか。

その番組が終わったところで、地球ドラマチックというシリーズの「ブレインマン」の再放送が放映されていたのだけれど、これがとても面白かった。NHKのサイトで制作のクレジットを探してみると、2004年のドキュメンタリーでそれほど最近ではないようです。まずは以下、クレジットを引用します。

原題:Brain Man 制作:Channel4(イギリス・2004年) ナレーター:渡辺徹

サイトに掲載されている番組紹介は以下です。

ダニエル・タメットは、どんな計算でも頭の中だけで答えを出すことができます。 ダニエルのもとを訪れた番組スタッフは、彼の数字に対する驚くべき能力を目にすることになりました。実際に計算しなくても、頭の中に答えが浮かんでくるというのです。数字を色や形や質感をともなったイメージとして認識しているダニエル。 番組では、彼が本当に計算の答えをイメージで読み取っているのかどうか、科学者に確かめてもらうことにしました。ダニエルの特殊な能力が明らかになるとともに、人間の脳が持つ新たな可能性を探ります。

ダニエルは幼い頃にてんかんの激しい発作を起こして、それ以降、数字がイメージとして見えるようになったとのこと。また、自閉症の傾向もあったようですが、現在では社会的に問題なく生活しているようです。

彼はどんなに難しい計算でも瞬時に答えを出します。こうした特定の能力に通常のひとにはない能力を発揮することを、サヴァン症候群というらしい。Wikipediaの解説です。

サヴァン症候群(-しょうこうぐん、savant(仏語で「賢人」の意) syndrome)とは、知的障害を伴う自閉症のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮する者を指す。サヴァン症候群の共通点として、知的障害と共に異常といえるほどの驚異的な記憶力・表現力を持つことが挙げられる。彼らには「忘れる能力」が無いとされ、かなり昔から知られてはいたがその原因は未だ論議されており、正確には掴めていない。現在では脳の器質因にその原因を求める論が有力だが、自閉症者が持つ特異な認知をその原因に求める説もまた有力である。

ぼくがすごいな、と思ったのは、たとえば計算式を与えられると答えが数字ではなく、映像として彼の頭に浮かぶということです。

たとえば「1」は光がフラッシュするような閃きのようで、「9」は巨大な何か、「6」はとてもちいさい何かだとか。そして893であれば、893のカタチがあるようです(ヤクザじゃなくてね)。番組のなかでは研究者が粘土で893のカタチを作らせるのですが、数日後に同じ数字を作らせても同じカタチになる。

それから数字に快・不快もあるようで、円周率は彼にとっては「心地よい」数字の連続らしいのですが、その一部を変更して彼に見させて悩波を測定すると、わざと変えた部分になると脳波が乱れて動揺する。なぜだか理由は分からないけれども、穴に落ち込んだような気持ちになったらしい。

そもそも数字と映像は脳のなかでは 別々の部位で処理されているらしいのですが、何かのきっかけでこれらが連携するようになることを「共感覚」と呼ぶようです。これも思わずのめりこんでみてしまうほど、ぼくには興味のある話題でした。

というのはやはりぼくも趣味でDTMをやっていて、音になんらかの色や匂いがあるような気がしていたからです。Wikipediaの解説から引用します。

共感覚(きょうかんかく、synesthesia, synæsthesia) とは、ある刺激に対して通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚をも生じさせる一部の人にみられる特殊な知覚現象をいう。 例えば、共感覚を持つ人には7という文字に青い色を感じたり、音階のミの音に緑色を感じたり、ハンバーグの形が苦い味に感じたりする。 英語名 synesthesia は、ギリシア語で共同を意味する接頭辞 syn- と感覚を意味する aesthesis から名づけられた。

茂木健一郎さんがよく使うクオリアにも関係があるようですね。

表現する人間として究極の理想というのは、創作した作品が受け手の心のなかにどれだけリアルな感覚を再現できるか、ということではないでしょうか。たとえば楽曲を聴いていて、夏の海の照りつける日差し(触覚)を感じたり、潮の匂いを嗅ぐことができたり(嗅覚)、思わず目の前に青空が広がったり(視覚)。

AME-FURUという曲を作ったときには、雨の効果音に頼ってしまったところがありますが、効果音がなくてもメロディから雨音が聴こえてくること。湿っていて、それでいて冷たい空気が感じられるような、そんな楽曲ができたらしあわせだなあ、と思います。

とはいえ、こうした能力はやはり一部の天才だけにもたらされた神様の贈り物なのでしょうか。ぼくが数字をみて快感になるのは、ちょっとボーナスが増えていたときぐらいだもんなあ(苦笑)。数字に美しさを感じることはあまりありません。むしろ数字や語学はぼくにとっては苦痛です。そういえば、番組のなかでダニエルは超難しいローカルな言語を1週間で覚える、ということをやってのけていました。数学的なセンスと語学のセンス、あるいは脳の機能は、どこか通じるものがあるのかもしれません。

ひょっとすると、数学もテツガクもブンガクも、最終的には同じ根っこから派生している学問であって、ぼくらが求めているのはひとつなのかもしれない、などと考えたりもしました。

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共感覚の人々が登場する映画は多いようです。代表的なものは、「レインマン」だと思うのですが、「グッド・ウィル・ハンティング」とか、ビューティフル・マインドも好きな映画ですね。

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2008-11-19

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松竹 2004-11-25

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2009-04-10

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YouTubeからBrain Manの映像。残念ながらイギリスの番組で、英語です(泣)。ただ、使われている映像のエフェクトが結構好みで、内容はわからなくても映像だけみていても楽しめると思いました。ダニエルの脳内の数字によって喚起される映像を視覚化した部分が非常に面白かったのですが、もう少しYouTubeを探してみるとあるのかな。

■Daniel Tammet - The Boy With The Incredible Brain [1/5]


投稿者 birdwing : 2007年8月11日 21:55

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