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2008年10月13日

対話で導く技術。

インターネットの利用で最もよく使うのは検索エンジンだと思うのですが、検索が「対話」であるということはあまり意識していないものです。けれども、検索窓に言葉を入れてクリック、という行為についてもう少し丁寧に考えてみると、検索エンジンと対話をしていると考えられます。

たとえば仮にサーチエンジンを擬人化して、サーチ子(幸子?笑)としてみましょう。検索の過程では、次のような対話がなされているのではないでしょうか。

サーチ子:「何を調べたいですか?ここに入れてくださいね」
利用者:「クラウドかな。最近よく使われるよね。クラウド・・・なんだっけ」
サーチ子:「クラウドコンピューティングという候補がありますが、いかが?」
利用者:「それそれ。調べて(ボタンを押す)」
サーチ子:「ご主人さま、こんな結果が出ました」
利用者:「いつも早いね、ありがとう。うーむ、この記事を読んでみようか」
サーチ子:「では、わたくしはここでお待ちしております。
       御用があれば声をかけてください」
利用者:「うん。またね、サーチ子」

コンシェルジュ(案内人)という言葉も使われたことがありましたが、インターフェースを人間と親和性のあるものにしていくと人間に近くなる。もちろん機能重視のユーザーや技術者にとっては、演出過剰な親和性よりも削ぎ落とされた使い勝手のほうが便利だとは思います。ビジュアルによるインターフェースよりコマンド入力のほうが慣れているということもある。それから正直なところ、あまりバーチャルなコンテンツに馴れ馴れしく語りかけられると、気持ち悪い(笑)

とはいえ、多くのひとにとっては、機能を理解せずに直感的に使うことができるほうが便利です。分厚いマニュアルが添付されるような機器は、どこか設計が技術よりで、ユーザーのことを考えていないと思われても仕方ない。というのは、iPodに付属するマニュアルは薄っぺらな冊子にも関わらず、使いこなせてしまう。ユーザービリティを洗練させるとシンプルになっていきます。

いまのところグーグルはあまりにも機能的な検索エンジンですが、いずれは上記のような対話で処理できるようになるかもしれません。SFのようですが、そう遠くない未来には実現するのではないでしょうか。さらに音声で対話できるようになれば、もっと人間的になる。いわゆるロボットです。

音声認識、音声合成(たとえば音楽制作のVocaloidなど)について以前から関心がありました。そんなわけで動向をウォッチしていたところ、グーグルでもGoogle Audio Indexingという開発が行われ、動画コンテンツの発言や会話の内容から検索できるような技術に取り組む動きもあるようです。

とはいえ、最近のニュースを読んでいて面白い、と思ったのはCNETjapanの「人工知能による会話マーケティングの可能性」でした。ここでは日産のNOTEのサイトを紹介しながら、ユーザーと対話するインターフェースの面白さ、可能性について解説されています。

日産NOTEといえば、アニメ「The World of GOLDEN EGGS」のキャラクターが愉快に喋る、あのCMを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。実はCMだけでなく、ウェブサイト「NOTEにのって!.com」もおもしろいことになっている。人工知能を用い、ユーザーの質問にCMのキャラが反応してくれるというものだ。

GOLDEN EGGSはチョコにもなっていましたが、人気がありますね。実際のサイトは以下になります。音声が出ることがあるので、ご注意ください。

■NOTEにのって!.com
http://www2.nissan.co.jp/NOTE/E11/0801/index.html

081013_note1.jpg

音声をオンにすると、実際にテキストと音声でコーチが語りかけてくれます。そして、サイトのナビゲーションをしてくれる。さらに、「コーチと会話する」という部分をクリックすると入力窓が開いて、コーチにテキストで話かけることができます。同様の仕組みは数年前に某キャッシング企業がサイトの上部に受付嬢を配置して、お客様からの質問に答えるというコンテンツを用意することによって、アクセス数が急増した、という事例もありました。

コーチには申し訳ないのですが、どうでもいい質問をしてみました。まずは「あんた、だれ?」

081013_note2_re.jpg

会話になっていますね。次に、「ひま?」

081013_note3_re.jpg

前の質問より苛立っている気がする(笑)。答えが短めです。

どんな質問をしてもサイトのコンテンツに誘導されてしまうのが残念ですが、仕掛けとしては面白い。

この会話エンジンは、ピートゥピーエー(PtoPA)という企業が開発した人工知能ソフトウェア「CAIWA」を利用しているようです。そして、どのようなテキストが入力され、会話されたかによって、マーケティングに利用しようという試みもあるとのこと。無意識のうちにアンケートをされているような感じがして、あまりあからさまにテストされるのはどうかと思うのですが、そんな活用方法もあるでしょう。ぼくのように、どうでもいい会話をしている訪問者のデータは、まったくマーケティングに役に立たないかもしれませんが(苦笑)。

余談ですが、NOTEのサイトでは、GOLDEN EGGSのブログパーツも6種類用意されていて、それぞれが面白い。いくつもブログパーツを貼り込むとエントリーが重くなってしまうのでどうかと思うのですが、3つほど貼ってみます。

まずは、ひたすらクリックすることによって、ジェシカ姉さんと試乗ソングを競うパーツ。でも、ジェシカ姉さん、テンション高すぎ(笑)。うぉ~という唸りからハイテンションのボイスが楽しい。

タイプの練習のパーツもあります。やってみたところ、む?これなんて書いてあるんだ?と困惑したため、初級と診断されてショックだった。いや、ぼくは一応ブラインドタッチで早いつもりなんですけど。

さらに、これはびっくりする!要注意です。

使い古された言葉ですが、インタラクティブ(双方向)という意味では、こうしたブログパーツも対話のひとつといえるかもしれません。とはいえ、GOLDEN EGGSのキャラクターと合っていて、うまくできたコンテンツだな、ということを感じました。企業やクルマの好感度も上がります。

キャンペーンを仕掛ける裏側には、技術であったりコンセプトであったり、マーケティングによる効果測定などビジネスとしての現実があるのですが、楽しいコンテンツは純粋に楽しい。ビジネスの視点を持ちつつ、楽しむ純粋さを忘れないようにしたい。

また、ネットに限らなくてもいいかもしれないですね。佐藤尚之さんの「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」という本には、スラムダンクの作者である井上雄彦さんが読者に感謝を伝えるためのキャンペーンとして、廃校を利用して黒板にマンガを書いた、というようなイベントが書かれていましたが、そんな発想ができるといいなあと思いました。

投稿者 birdwing : 2008年10月13日 11:41

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