« 奇跡のシンフォニー | メイン | ネットの質問箱。 »

2008年12月 2日

聴き上手を進化させる。

仕事力を向上させるためにいろいろな本を読み漁っていますが、営業力やコミュニケーション力は特に強化したい分野です。書物に書かれた智恵だけでなく現場で痛感するのは、聴くことがいかに難しいかということでしょうか。ひとの話を聴くのは難しいですよね。

企画提案や営業、セールスでは、もちろん押しも重要ですが、相手の話を"傾聴する力"が重要です。あえて自分の売りたい製品やサービスをいったん忘れて、お客様の話をきちんと聴く。お客様が置かれている状況や期待している解決策をわからずに、自社のサービスや製品を押し売りしても成果はあがりません。まずはヒアリングに徹すること。すると、その後の商談もスムーズになります。

忘れっぽいので、ぼくは聴きながらよくメモを取ります。A5判の無印のノートを使っていて、そこにブルーブラックのuniball Signo(極細0.38mm)というボールペンでメモを取る。きれいに書く必要はないと思っているので、ノートに書かれた文字はひどい。ぐちゃぐちゃですね。途中まで書いたキーワードや書きなぐった図形ばかりです。落ち着いて話を聴くことのできるセミナーであれば、まだ少しまともなノートになります。こんな風に。

081202_note.jpg

あとで断片から全体像を引き出せるようなメモを取るように心がけています。とはいえ、メモから完全に話の内容を再生する必要はありません(というか無理です)。メモは記憶を呼び出すためのインデックスで構わない。曲解や誤解は困りますが、自分なりの解釈で要点を押さえることができれば、それで十分ではないでしょうか。

最初から聴き上手のひともいるかもしれませんが、ヒアリングの上達は訓練で可能だと思います。要点ではないところばかり聞いて、たいせつなポイントがアタマを素通りしてしまうのは問題ですが、聴くことに意識を集中しているうちに自然と聴くツボもわかるようになります。要は場数です。きちんと聞く姿勢を繰り返せば、習慣として聴けるようになる。

ちなみに「聞く」は一般的に聞こえてくる音を拾う意味ですが、「聴く」は耳を澄まして身を入れて音に集中する意味として使うようです(鳥の声は聞くで、音楽は聴く)。だから聴けるようになりたい。傾聴することは、仕事だけではなく、家族や仲間とのコミュニケーションについても重要なことかもしれません。

ここ数日、自分を突き詰めていろいろと考えました。ほんとうに誰かの話をきちんと聴けているのか。聴いたつもりになっていないか、と。

そんなことを自問した結果、ぼくは聴き上手になろうと思いました。さらに、聴き上手を究めた上で、明晰な思考のもとにアドバイスができるようになりたい。コンサルティング、もしくはカウンセリングの技術を身につけたいと思っています。そのためには、聴くことができるだけでは足りないものがあり、聴き出す力、聴いたことをフィードバックして相手の内部にある何かを引き出す、あるいは相手を内側から動かすスキルが重要になります。

ということで注目したのが、NLP(Neuro Linguistic Programming:神経言語プログラミング)でした。

以前から気になっていたのだけれど、少しばかりアヤシイというか胡散臭いものも感じていたので、きちんと学んだことはありませんでした。けれどもネットで情報を集めてみると、考え方自体はとても面白い。盲目的に信じるつもりはありませんが、カウンセラーもしくはセラピストの技術のひとつとして参考にしたいと思います。

NLPは、1970年代に言語学博士のリチャード・バンドラーと心理学・数学のジョン・グリンダーというふたりによって、過去の偉大なセラピスト3人の考え方を体系化した学問のようです。当時、アメリカにはベトナム戦争によって、身体だけでなくこころに傷を負った兵士たちがたくさんいました。彼等をこころの病から救う技術として効果があったとか。

潜在意識もしくは五感に訴えかける言葉を重視しているようです。ちょうどぼくは、五感と言葉のつながりや、あるいは身体感覚と言葉のつながり(=文体と身体)についてブログで追究しようとしていただけに、ものすごく興味深い。

ただ、ちょっと怖いと感じたのは、NLPは人間のこころに存在している"プログラム"を書き換えることで、感情や行動を制御するということでした。これは行き過ぎると洗脳になると思います。しかし、善意で用いればそれこそ他者を救済するための力となる。

先日視線についてのエントリを書いたのですが、NLPにはVAKという考え方があるようです。人間は五感を使って世界を認識していて、どの感覚を優位的に使うかということから、以下の3つのタイプに分けています。

V:視覚(Visual)
A:聴覚(Audiotory)
K:嗅覚・味覚・触覚などの体感覚(Kinesthetic)

この応用だと思うのですが「アイ・アクセシング・キュー」という技術のことを知りました。これは非言語的なコミュニケーションである眼球の動きを意味づけます。眼球の動きを言語化して、以下のように読み解いています。眼球の動きによって、潜在的にこころが視覚や聴覚や体感覚の何を感じているのかがわかるようになり、また催眠のように示唆できるようになるらしい。

  • 眼球右上→未来の映像:Visual
  • 眼球右横→未来の聴覚:Audiotory
  • 眼球右下→未来の体感覚:Kinesthetic
  • 眼球左上→過去の映像:Visual

  • 眼球左横→過去の聴覚:Audiotory

  • 眼球左下→過去の体感覚:Kinesthetic

思えば、うちの次男くんは絵が好きなのですが、話しながら眼球をやや右上に動かすことが多い。これはまだ見ぬ未来のイメージを自分のなかで言語化しているといえそうです。今度、昔書いた絵のことを話してみよう。左上を見るかどうか楽しみです。

つまり、ボディランゲージのようなものから話者の意図を「聴き取る」こともできるわけです。あるいは、話し手が左横に視線を向けながら「あなたは昔こういうことを言いましたね」と語ることにより、聞き手の過去の潜在意識を掘り起こすような誘導もできるのかもしれません。うーむ、やっぱりなんだか怖いのですが。

ほんの入り口を浅く考察しただけですが、言語学や心理学を学ぶことによって、言葉と五感や潜在意識の新しい関係も見出せそうです。

でも、ぼくの正直な印象としては、こういう裏の手口がわかってしまうと白けますね。NLPの技術を鵜呑みにしてひとを操ろうというリーダーやコピーライターあるいは個人事業主もいそうですが、そんなひとをみつけたら、その手口を暴いてしまいたくなる。彼の手口に騙されるな!洗脳されるな!と言いたくなります。手品の仕掛けがわかってしまったような白々しさがあるのは、ぼくだけでしょうか。

ここまでの考察を無にするようですが、人間を説得するのは「術」ではないと思いました。ぼくはやっぱり人を動かすのは、知識や技術を超えた人間性ではないかと信じていたい。ただ、どうしようもない状況に陥っているひとを救うためには、こうした手段を学んでおくことも重要かもしれません。

説得力のある言葉は才能によって作られる・・・と言ってしまうとそれでおしまいですが、説得力のある言葉には、それなりのパターンや技術がある。そのノウハウを科学的に分析することは、決して無駄ではないと考えています。そこにブンガクと心理学、言語学、認知科学などが融合する余地があるのではないか思うですが、さていかがなものか。

投稿者 birdwing : 2008年12月 2日 23:24

« 奇跡のシンフォニー | メイン | ネットの質問箱。 »


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://birdwing.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/1021