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2009年1月11日

羊男の作り方。

ほとんどテレビを観ないのですが、最近は家に帰って家族が寝静まったリビングのソファにひとり座り込み、テレビを観るようになりました。えーと、インターネットのお引越しがいまだに終わっていないので、暇なのです(苦笑)。いやー、ほんとうに暇だ。暇だ暇だ暇だ。それにしても、ネットに接続しないおかげで早寝早起きになりました。時間がゆったりと流れます。ネットジャンキー気味の自分には、なんとなく日々が物足りないんですけどね。

そんなわけで暇をもてあまして、先日、日付変更線を越えるあたりの時間帯にNHKの韓国語講座をぼんやりと観ていたとき、面白い情報を得ました。

ドラマ形式のレッスンになっていて、とある家族のストーリーです。嫁いできた女性が体調を崩してしまう。すると息子の母親とお姉さんが彼女をサウナに連れて行って、元気づけてあげます。韓国風のサウナのことを韓国語で何といったか忘れましたが、みんながアタマに巻いているタオルが一風変わっていました。

それぞれの耳の横にボンボンみたいなものが付いています。なんだろうこれ?と思っていたら、その後、解説に加えて作り方を教えてくれました。「羊の頭」というそうです(韓国語は失念)。どうやらふつうのタオルで作ることができるらしい。作り方を覚えたので、写真つきで解説してみましょう。

①タオルを用意します。

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②3つに折ります。

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③端っこを内側から巻いていきます。

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④反対側も巻いていきます。

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⑤真ん中を開いてここに頭を入れます。

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というわけで、携帯電話のカメラで自分撮りですが、被ってみました。

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次男くんにもかぶせてみた。似合うようです。

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DSに夢中になっている長男くんにもかぶせてみました。どうやら気に入ったらしく、眠るまでずーっとかぶっていました。

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インドではターバンの巻き方に特長があります。あの巻き方をすれば、ああインド人だね、というように即席インド人になれます。被り物にもそれぞれの国の文化があるようですね。といっても、この「羊の頭」はサウナができた後に生まれたものだと思うので、遠い昔から伝統があったわけではなく、最近生まれたものではないでしょうか。サウナに入っているみんなが羊の頭を被っている光景を想像すると、おかしい。とはいえ主として女性向け、あるいは子供向けという気がします。いい年をした男性が被ると、どこか不気味だ(苦笑)。

羊の頭で思い出したのですが、村上春樹さんの初期の小説では、特長的なキャラクターとして羊男が出てきます。確か着ぐるみの羊だったような気がして気になって調べてみたところ、こんな挿絵が掲載されていました。

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これは「羊をめぐる冒険」のなかに出てくる挿絵です。ぼくが持っているのはハードカバーで、1983年3月10日の第5刷ですが、P.335に掲載されています。

4062002418羊をめぐる冒険
村上 春樹
講談社 1982-10

by G-Tools

「羊をめぐる冒険」といえば、いまは亡き親父が群像を定期購読していて、雑誌に書き下ろしで掲載されていたこの小説をひと晩で読み終えて、「面白いからおまえも読んでみろ」とすすめられたことを覚えています。いま思うと、村上春樹を息子にすすめる親父は、かなり頭がやわらかかったのかもしれない(羊毛なみに)。とっつきにくい親父で、頑固だとばかり思っていたんですけどね。

小説から、羊男の容姿について描写された部分を引用してみます(P.336)。

羊男は頭からすっぽりと羊の皮をかぶっていた。彼のずんぐりとした体つきはその衣装にぴったりとあっていた。腕と脚の部分はつぎたされた作りものだった。頭部を覆うフードもやはり作りものだったが、そのてっぺんについた二本のくるくると巻いた角は本物だった。フードの両側には針金で形をつけたらしい平べったいふたつの耳が水平につきだしていた。頭の上半分を覆った皮マスクと手袋と靴下はお揃いの黒だった。衣装の首から股にかけてジッパーがついていて簡単に着脱できるようになっていた。

あらためて引用すると、さすが村上春樹さん。文章がとてもうまい。などと書くのは大変失礼ですが、描写の正確さといい、何を描写して何を描写しないかという取捨選択といい、ひらがなと漢字の配分といい、まいりました。昔の作品をいま読み直してみると、別の発見があるかもしれません。

引越しにともなって本を整理したのですが、村上春樹さんの小説が(ほとんどハードカバーで)ほぼ全作品出てきたのでびっくりしました。彼の作品だけピックアップして本の山を作ってみたのだけれど、他の誰よりも高くなりました。こんなに読んでいたのか。

とはいえ、80年代に学生だった世代にとっては、村上作品を読むことはひとつのステイタスだったような気がします。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」も物語が終わってしまうのを残念に思いながら、一気にひと晩で読み終えたっけなあ。

「羊をめぐる冒険」のように作り込んだ完璧な羊男になるのは手間がかかりますが、インスタントな羊男になってみたい方は、韓国風の「羊の頭」をぜひお試しください。

投稿者 birdwing : 2009年1月11日 14:56

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4 Comments

かおるん 2009-01-15T14:42

あまりのシンクロぶりにびっくりしました。ちょうど今、『羊をめぐる冒険』を実に何十年かぶりに読み返していた、まさにその最中だったからです。「文庫にはこんな羊のイラストなどなかったぞ!」と思いつつ、パラパラ後ろのページをめくったら、ありましたありました、羊の絵。

今年は村上春樹の長編を読み返そうと、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』と読み進めてきましたが、この『羊をめぐる冒険』のまったく色あせない面白さ、三部作のしめくくりにふさわしいものだと思います。もちろん書かれた時代としては抜群に新しくおしゃれな(ファッションにもなる)小説でしたが、村上春樹の小説はむしろ人間にとって普遍的なテーマを扱っていて、だからお父さまも薦めてくれたのではないでしょうか。ところでそれ、何歳のときでしたか?私は息子に読ませるかどうしようか迷っていますが、15歳ではちょっと早すぎるかしら。

羊の頭の作り方も楽しくかわいいですね。さっそく真似してみよう。

BirdWing 2009-01-15T21:24

おお、そうでしたか!かおるんさんも、ちょうど村上春樹さんの作品を読み直していたところだったんですね。『風の歌を聴け』は、カート・ヴォネガット調という印象もあり、いまとなっては文体のスカスカ感が若干照れくさい印象もあります。でも、当時はとてもスタイリッシュでした。初期の作品って、イラスト入りが多いですよね。たしか『風の歌を聴け』にもイラストが挿入されていたような。『1973年のピンボール』は好きな作品でした。

親父がぼくに薦めてくれたのは、高校3年生のときか浪人時代だったか、その辺りだったと思います。なのでティーンエイジャーの終わりあたりでしょうか。15歳はまだ早いような気がするけれど、背伸びして村上春樹さんなど読むと、かっこいいと思います。というか、かおるんさんの息子さんはもう15歳なのですか。うーむ。受験とか、いろいろと大変ですね。うちの息子は勉強嫌いだから、どうなることやら。あまり考えたくないなあ。

ネットで検索してみたところによると、羊の頭は、양머리だそうです(読めない。苦笑)。見た目はかわいいのですが、実は風呂上りにこれをやっていると髪の毛がぺちゃんこになるのでご注意ください。ええと、やってみたぼくの感想です。

K-POPluv 2011-03-16T22:13

韓国の番組でよくこの巻き方していて、ずーっとやりたかったんです><!
作り方覚えさせていただきました。
ありがとうございます :)

通りすがりすいません。
失礼しました。

BirdWing 2011-03-20T08:22

コメントありがとうございました。お返事が遅くなってしまってごめんなさい。

偶然観た韓国語講座ですが、韓国語の勉強はさておき、このてぬぐいの巻き方にすっかり嵌ってしまいました。かわいいですよね。

タオルの巻き方ひとつとっても国によって違うのだな、と考えると楽しくなります。ぜひ、お風呂上りは羊の頭で韓国風に過ごしてくださいね!

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