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2006年1月25日
リリカルについて。
そういえば昨日は岩井俊二監督の誕生日でした。岩井監督、お誕生日おめでとうございます。お祝いです(あ、つまらないシャレだ)。うちの息子(長男)は内気なのですが、どうやら映画が好きそうなので、岩井監督みたいになってくれるといいなあと思っています。映像方面に進ませたい。思っているだけでなく、実際にデジタルカメラを使ってクレイアニメのようなものを撮影させて遊ばせたりして、何気なく父としてそっち方面にプロデュースしちゃったりしているのですが、まだ9歳なので、今後どうなるかは未知数です。
岩井俊二監督といえば、「花とアリス」という映画に挿入されている弦を使った音楽がものすごく気に入っていて、これいいなあ、誰が作ったのかなあ、とクレジットをみたところ、岩井監督そのひとでのけぞったことがありました。確かに映像と音楽は近いところにあるような気がするのですが、神様はずるい。映像はもちろん、音楽まで創ってしまう岩井監督の才能にまいりました。「花とアリス」は、嘘という仮想を現実に変えてしまおうとうする花(鈴木杏さん)の涙ぐましいまでの努力と、その嘘が破綻したときのぼろぼろな感じがいい。学園祭で落語を演じるときのシーンには、なかなかせつないものがあります。友人である花の彼氏に惹かれていってしまうアリス(蒼井優さん)の親子関係の描き方もよかった。
実は映画や音楽だけでなくて、岩井俊二監督は小説も書いている。ぼくが岩井監督でいちばん好きな作品は「リリィ・シュシュのすべて」という映画ですが、残虐さを美しい映像のなかに閉じ込めたような作品で、痛々しいほどにリリカルです。小説のほうでは、インターネットの掲示板の書き込みをそのまま再現したようなスタイルになっている。インターネットの毒の部分もかなりリアルに再現されているので、読んでいて気分も悪くなるのですが、ある意味、凄い才能だなあと思いました。映画に関しては、ずーっと中古DVDを探していたのですが、先日ついに発見して思わず即決で購入してしまいました(実は購入してからはタカラモノのように置いてあって、まだ観ていないのですが)。
リリカルな映画を撮る監督としては、大林宣彦監督もいますね。学生時代には、ほとんど彼の作品しか観ていなかった状態だったのですが、ふつうは尾道三部作(「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」)、新尾道三部作(「ふたり」「あした」「あの、夏の日」。あ、最後の映画は観ていません。観なければ)が代表作だと思うのですが、個人的にぼくが傾倒したのは「日本殉情伝おかしなふたり/ものくるほしきひとびとの群」という映画でした。これはかつてビデオにダビングして、ほんとうに何度も観ました。しかしながら、きっと誰も代表作として挙げないと思います。どうやらお蔵入りするはずの映画だったらしく、映画としては破綻している。めちゃめちゃです。断片化された映像の集合体という印象でしょうか。よくいえばぼくは、映像詩、だと思うのですが、あんまりおすすめしません。ただ、ぼくのなかでは永遠の名作です。心のよりどころ、という感じ。
「日本殉情伝おかしなふたり/ものくるほしきひとびとの群」は、モーニングに連載されていたマンガが原作なのですが、やくざなふたり(三浦友和さん、永島敏行さん)とひとりの女性(南果歩さん)をめぐる三角関係の物語です。漱石的な世界ともいえる。そこに、旅人である竹内力さんも絡んでくる。この登場人物の描き方がすごくいいんだな。竹内力さんの演じる山倉は自称天才で、くだらないアイディアばかりを思いついては儲けようと思っているのですが、肺を病んでいる。冒頭では、それが少年時代に汽車をみているシーンに重ねられる。ぜいぜい咳き込む音と機関車の音がだぶるわけです。そんな細かなイメージの重ね方がいくつも出てくる(ゆびきりげんまんと約束をしたけれど、やくざになったので小指がない。だから約束が守れない、とか)。冒頭部分で音楽が流れただけで、ぼくは涙がどーっという感じでした。音楽はKANさんだったかと思うのですが、シンセのストリングスによるBGMもすごくいい。この映画のなかの南果歩さんも、ものすごく素敵です。
リリカルな映画には、音楽の役割も欠かせないものかもしれません。先日、ビデオレンタルショップに行ったところ、「アナライフ」が貸し出されていました。ネットで合田健二監督を知り、渋谷のちいさな映画館に出かけて観てきた映画です。現代的な心の病に冒されている三人がいろいろあって肛門科を訪れる、そこで意外なことが起こる、というストーリー。なかなかしんどい部分もあり賛否両論かもしれないのですが、ぼくはよかったと思います。この映画の音楽はレイ・ハラカミさんで、この映画からレイ・ハラカミさんを聴くようになりました。そんな出会いもあります。
強くなければやっていけない世のなかですが、ときにはリリカルになるのもいいものです。
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■アナライフ。ぼくは完成されているものよりも、ちょっと破綻している美しさに惹かれるのかもしれない。数々の断片的な映像と居心地の悪いエピソードは、すーっと風が吹き抜けるような最後のシーンのためにあったのではないかと思いました。
http://www.analife.com/top.html
■花とアリス。そもそも落語は言葉によって、そこにはないものをあたかも存在するかのようにみせる演芸ですよね。嘘も、しっかりとした存在感が生まれたなら、現実です。
花とアリス 特別版 岩井俊二 アミューズソフトエンタテインメント 2004-10-08 by G-Tools |
■リリィ・シュシュのすべて。断片的に突きつけられるインターネットの掲示板に書き込まれた言葉の切れ味が鋭かった。
リリイ・シュシュのすべて 通常版 岩井俊二 ビクターエンタテインメント 2002-06-28 by G-Tools |
■日本殉情伝おかしなふたり/ものくるほしきひとびとの群。実はDVD持っています。ビデオと違って、何度観ても擦り切れないので購入。
日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群 デラックス版 三浦友和, 竹内力, 永島敏行, 南果歩, 大林宣彦 パイオニアLDC 2001-08-24 by G-Tools |
投稿者 birdwing : 2006年1月25日 00:00
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