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2006年3月 5日
笑の大学
▽cinema06-021:人間の深い描き方、しなやかな戦い方。
笑の大学 スペシャル・エディション [DVD] 三谷幸喜 東宝 2005-05-27 by G-Tools |
戦時下の日本、喜劇作家の椿(稲垣吾郎さん)と検閲官向坂(役所広司さん)による対決の物語です。検閲官としては、戦争に向けて国民の意識を高揚させない脚本はボツにしようと考えるため、「お国のために」という言葉を入れてくれ、この部分は削れとか無理難題を言う。しかしながら、「笑の大学」という劇団のために脚本を書いている椿としては、早く脚本を完成させたい。最初のうちは、その構図が単純なかたちでみえているのでわかりやすいのだけれど、実はこう思っている、という心情の告白が出てくるあたりから、どんでん返し風に人間の心の深みに入っていくので面白い。感動しました。物語のなかで、「その場面で、警察官はそういう台詞を言うだろうか」のような感じで、検閲官である向坂は台詞の背後にある人間性まで考えようとするのですが、たとえ作られたものであっても、作品と誠実に向い合うということは、そうじゃなきゃと考えさせられました。
いままで笑ったことがない検閲官を最終的には80回以上も笑わせる脚本を書き上げるのだけれど、このふたりは検閲官と劇作家という関係を超えて、もはやコラボレーターのような関係になっている。つまり、共同して作品を創り上げているわけです。これは編集者と作家というような関係かもしれない。批判は何も生み出さないかもしれないけれど、批評としてほんとうに作品に向き合ったとき、ひとりの作者の力量を超えたものを生み出す可能性があります。
権力に真っ向から戦うような戦い方もあるかもしれないのですが、権力を受け入れつつ、ほんとうに面白い笑いを生み出そうとすることに集中する作家・椿の姿に共感しました。三谷幸喜さんのことは詳しく知らないのですが、もとは舞台で上演されていたものらしい。映画というよりは舞台的なのですが、人間の描き方という点では、三谷さんはやっぱりすごいな、と思いました。3月5日鑑賞。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(20/100冊+21/100本)
投稿者 birdwing : 2006年3月 5日 00:00
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