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2006年5月28日

ストレイト・ストーリー

▽cinema06-034:ゆっくり生きましょう。

B0000A4HSJストレイト・ストーリー [DVD]
ポニーキャニオン 2005-03-02

by G-Tools

映画は旅のようなものかもしれないし、また人生かもしれません。すぐれた映画を観終わると、すばらしい人生を経験したような気持ちになります。この映画は、73歳のアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)が兄が脳卒中で倒れたという知らせを聞き、500キロ離れた兄のところへ行くというそれだけの物語です。しかもどうやって行くかというと、おんぼろのトラクターに乗っていく。

ちょうど老いや死について考えていた時期でもあり、脳梗塞で倒れて亡くなった父のことを思い出してブログに書いたりしていたので、この設定だけで泣けました。さらに何に泣けたかというと、トラクターに乗ってごとごと走るアルヴィンにオーヴァーラップするような麦畑など、ぜんぜんストーリーには関係ない映像です。旅の途中でさまざまなひとと出会い、自らの過去を振り返ったりもするのですが、このささやかなエピソードが心に染みます。あたたかい気持ちになれる。家族は束ねた木の枝のようなものだ、とか、年老いて最悪なのは若い頃を覚えていることだ、とか、兄ライルとはうぬぼれや怒りから10年も仲違いしていたのですが、兄弟は兄弟、とか、台詞だけでもぐっとくるものがありました。

老人のロードムービーともいえます。監督はデヴィッド・リンチ監督であり、しかしながら難解なあちら側の世界的なものはひとつもありません。タイトルの通り、ストレートに心に響く映画です。とはいえ、最初に旅に出たときに、おんぼろのトラクターがエンストして小型トラックに積まれてすぐに帰ってきてしまうのですが、黙って猟銃を持ってきたかと思うと、どかんと撃っておんぼろトラクターを爆破してしまうユーモアには、デヴィッド・リンチ監督らしいものを感じました。

子供の頃のように兄とふたりで星空を眺めたい、というそれだけで、ごとごとトラクターを運転する。途中で、クルマで送ってやろうか、半日あれば行ける、という親切なひともいるのですが、初志貫徹で断ってそれから何日もかけて兄のところへ行くわけです。でも、急ぐ必要なないし、時間もたっぷりある。忙しすぎる生活のなかで、こんな風にゆっくり生きてみることもよいものです。5月28日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(38/100冊+34/100本)

投稿者 birdwing : 2006年5月28日 00:00

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