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2006年11月 2日
自分を更新する。
懐かしいタイトルだなと思って、先日書店で「薬指の標本」といっしょに購入したのが、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリ、宇野邦一さん訳による「アンチ・オイディプス」でした。
アンチ・オイディプス(上)資本主義と分裂症 (河出文庫) 宇野 邦一 河出書房新社 2006-10-05 by G-Tools |
上下巻に分かれているといえ、何しろ文庫です。文庫でこれが読めるとは思わなかった。確か学生時代にはテキスト(教科書という意味です)として、分厚い本を買わされたような気がしました。本棚のどこかにまだあるかもしれません。読み始めたときに変な文章だなあと思ったことを覚えていて、やっぱり読み始めると変な文章なのであって、こちらも懐かしかった。というわけで上巻から少しずつ読み始めています。
ところが自分で自分にびっくりしたのが、読める、ということです。学生時代にはさっぱりわからなくて、何だこりゃ、どうでもいいか的な気分になって、すぐに放り出してしまった気がします。けれどもいまは読み進めることができる。決して、わかるとは言えないのですが、言葉がイメージすることがぼんやりとはいえすっと入ってくるし、これは?とセンサーに引っかかってくることもある。そしてそれはいまぼくが関心を持っていることに近いような気もする。
何がどのように関連するのかということはうまく言えないので、漠然と引っかかってきたワードを羅列してみると、器官なき身体、パラノイア、生産、生成、強度〔内包〕量、器用仕事(ブリコラージュ)などなど。
最後の器用仕事(ブリコラージュ)については、アンリ・ミショーによる分裂症患者の机についての描写を引用しています。こちらを引用してみます(P.23)。
驚くべきことに、この机は単純ではないが、かといってそれほど複雑でもなかった。つまり始めから複雑だったり、意図的に、あるいは計画的に複雑であったりしたわけではない。むしろ、加工されるにつれて、この机は単純でなくなってきたのだ・・・・・・。この机はそれ自身としては、いくつもの付加物がある机だった。ちょうど、分裂症者の描くデッサンが詰め込み過ぎと言われるように。この机が完成するとすれば、それはもう何もつけ加えるてだてがなくなったときである。
いままさにぼくはDTMの創作においても、昨日の「薬指の標本」のレビューにしても、この机を複雑化していく状態にありました。分裂症的であるともいえる。といってしまうことに居心地の悪さも感じるのだけど、いまインターネットの世界においても、ここで書かれている机を複雑化するような傾向が進展していて、そもそもリアルとバーチャルが混在する世界自体が分裂症的です。まさに複雑化、多様化の行き着く先は「何もつけ加えるてだてがなくなったとき」なのかもしれない、と感じました。
器用仕事(ブリコラージュ:本文中ではルビ)自体が書かれているのは、次のような部分です。
レヴィ=ストロースは器用仕事(ブリコラージュ)を規定するとき、緊密に結びついた諸特性の総体としてそれを提案している。すなわち、多数のちぐはぐな、限られたストックやコードを具えていること、もろもろの断片を、たえず新しい断片化に導く能力をもつこと。したがって生産する働きと生産物は区別されず、用いる道具の全体と、実現すべき仕事の全体も区別されない。
きちんと理解しているわけではないのですが、ここで言いたいことが伝わってくる気がしています。何かを生産したときに、それが別の何かを生産するためのものとなる。この途方もない接続を「機械」としてとらえているわけで、そのあとにはカフカの「流刑地にて」も出てきます。
といってもぼくがブリコラージュという言葉にセンサーを働かせてしまうのは、以下のCDのせいかもしれないのですが。
Bricolages 坂本龍一 ワーナーミュージック・ジャパン 2006-05-24 by G-Tools |
表面的であっても、実は本質に関わることであっても、まずはさまざまな読書などから自分に触れたものを探してみる。その結果として、この場で何かを書いてみて、自分の考えを更新していく。自分2.0なんてことも書いたりしましたが、いまのところ2.1βぐらいの感じでしょうか。
今年も残すところあと2ヶ月。本100冊+映画100本という目標の達成度は現在70%というところで、なかなか厳しいものがあるのですが、できるところまで自分を更新していきたいと思っています。
投稿者 birdwing : 2006年11月 2日 00:00
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