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2007年6月28日
恋愛睡眠のすすめ
▼Cinema07-019:現実と妄想の映像美、懐かしいけど若すぎる痛い恋愛。
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徹夜明けなどのとき。眠くてモーローとしていて、現実なのか夢なのかわからなくなることがありませんか。ぼくはあったな。ふわふわして足元が頼りない感じ。帰宅するユウレイのような浮遊感。
実体のある現実だけが現実かというとそうでもなく、脳内で考えた仮想も思い込めば現実と同等、もしくは現実以上にリアルな重みを持つものかもしれません。考えてみると世界が像を結ぶのは網膜ではなく脳内であって、世界は脳内にあると言えないこともない。子供たちは、ウルトラマンの映画を現実のように楽しんだり怖がったりするのですが、若い頃は妄想と現実が分離していないですね。だからひとりよがりにもなるし、他人を傷つけたりもする。きちんと現実を妄想から分けて考えられるようになることが、大人の思考なのかもしれません。
「恋愛睡眠のすすめ」は、妄想癖があって夢と現実の区別がつかないステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)が、隣りに引っ越してきたステファニー(シャルロット・ゲンズブール)に恋をする。その夢なのか現実なのかわからないドタバタが、ほんとうにボーダーレスな映像で展開されていきます。
夢のなかではステファンはときに男らしく、ステファニーとうまくいっているのだけれど、現実では、大丈夫か?こいつ・・・というアブナイ人間だったりする。その無軌道ぶりにはらはらしながら、ちょっとわかるなー(苦笑)と思ったりする。誰かを本気で好きになったりすると、正気ではいられなくなるものです。
ミシェル・ゴンドリー監督といえば、数々の音楽系のプロモーションビデオ制作で有名ですが、ダンボールで作った自動車とか、ぱたぱた倒れたり起き上がったりする街並みとか、アニメーションがかわいらしい。これがほんとうに現実と夢の境界なしに展開されるので、面食らったりもするのですが、そのボーダーレスな奇妙な映像は、ほぉーっという感じでした。とはいえ、なんとなく映画全体がプロモーションビデオっぽい、という食傷感もあるのですが。
率直なところ映画として観たときには、ストーリーはないし、そもそもコメディ映画って、うまくはまらないとなかなか居心地が悪いものがあります。子供っぽくて危なっかしいステファンの言葉や行動に、なんとなく引いてしまう感じもなきにしもあらず。しかしながら、笑いのなかにほろりとした感情があっていい。
妄想が暴走したステファンは、ステファニーが大好きであるにも関わらず余計な詮索をして傷つけてしまうとか、落ち着いて会えばいいのに気持ちばかりが高ぶって自滅(自爆?)してしまうところとか、非常に痛い(苦笑)。痛いのだけれど、過去の自分に通じるものがあって涙腺が緩みました。とはいえ冷静に観ているところが、自分もまあ大人になっちゃったことであるな、と感じましたが。
さまざまな造語やアイテムが登場するのですが、個人的には1秒タイムマシンがよかった。時間を逆行するときに会話が逆回転になったりして、趣味のDTMで音声ファイルをリバースかけまくって作っているぼくとしては、こういう小細工に妙に受けてしまう(苦笑)。あと、ピアノの音がうまく響くと、綿で作った雲が部屋に浮かぶシーンもよかったですね。ステファンの脳内のスタジオにドラムセットとかオルガンが置いてあって、彼がひとりでマルチプレイヤーになって演奏する場面も好みです。まあ、ひとり遊びなんだけど。ぼくの趣味のDTMもそういうところがある気がする(苦笑)。
あとP・S・R(並行同時発生的無原則)がよかった。これは通りですれ違うときに、あっ相手が右によけるな、と思って右に身体を動かすと、相手もそちらの方向に身体を動かして、永遠に右・左・右・左と身体を動かして通り抜けられないような状態です(笑)。あるある。
映画を観ると必ずパンフレットを買ってしまうのですが、女性ウケする映画だからか、パンフレットはレポートのように縦型でミシンで綴じてありました。開いてみると蛍光色のページがあったりして、目がちかちかする。映画の内容もそうなのですが、パンフレットにもなんとなく気恥ずかしいものを感じてしまいました。たまにはいいか(よくないか)。
■公式サイト
http://renaisuimin.com/
*年間映画50本プロジェクト(19/50本)
投稿者 birdwing : 2007年6月28日 00:00
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