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2005年12月21日

宇宙人かもしれない。

このブログを再スタートしてから1ヶ月ほど経ちましたが、いちばん最初の日に谷川俊太郎さんの「コカコーラ・レッスン」を取り上げました。実は高校時代に彼の「二十億光年の孤独」にショックを受けて、それまで詩なんて暗くてつまらなくし自己満足の世界にすぎないだろう、と考えていたのですが一気に世界観が変わって関心を持ちました。そうして当時は同人誌をこつこつ作っていた新風舎の松崎義行氏とも知り合ったわけですが、ぼくの人生で世界観が変わった第1の岐路だったような気がします。第2の岐路というのは企画とマーケティングに出会った時期、そしていま第3の岐路としてブログがあるのですが。

ほっと!ぐらふの七井さんも以前ブログで「買い戻しキャンペーン。」として、過去に好きだったものをまた買い直しているということを書いていました。新しいものを追いかけるのも楽しいのですが、自分の好きだったものをもう一度振り返る、ということは大事ではないかと思っています。何度も繰り返し聴くことができるもの、年をとってもこれが好きだといえるものをみつけることによって、そのときの気持ちを再生することもできるし、自分とは何か、ということもわかる。ぼくにとっては谷川俊太郎さんの作品は、そんな原点にも位置するものです。

さて、谷川俊太郎さんがずっとぼくの心の師匠だったわけですが、実際にお会いしたのは御茶ノ水の丸善で「にじいろのさかな」のサイン会をやっていたときでした。偶然通りがかって、あっ谷川俊太郎さんだ、これは並ぶしかないでしょう、と本を購入してサインをしてもらったのですが、とにかく彼の周囲5メートルがまるで別の雰囲気に包まれているような、そんな印象がありました。それがつまり「詩人」というものなのでしょう。サインをいただきながら、ぼくはずっとあなたのファンでした、ということを言おうと思っていたんだけど、そんな言葉さえ失ってしまった。谷川さんは圧倒的に詩人でした。そして、もしかしたら神様かもしれない。いやひょっとすると宇宙人ではないか?と思いました。

「二十億光年の孤独」は17歳のときから書き溜めていた詩を21歳のときに発表した、という経緯があったかと思うのですが、その詩はすべて末尾に書かれた年月日が記してある。したがって、日付順に並べることができる。

という意味で、この詩集はブログ的である、ともいえます。だいたい散文詩というジャンルを無視した場合、文章を改行するとなんとなく詩っぽくなる。ぼくのようにベタで文章を書いていると、これはもう散文的なんですが、改行が多いブログはなんとなく詩の雰囲気を醸し出しているものです。

さて、「二十億光年の孤独」は、孤独といいながらも四畳半の孤独ではなくて、広い宇宙のなかにぽつんと置き忘れられたような孤独です。自分はどうしてここにぽつんといるんだろう、誰かがぼくを置き忘れちゃったんじゃないだろうか、いや、ほんとうにぼくがいる場所はここではないどこかではないだろうか、もしかしたら火星かも、のような惑星レベルのさびしさが表現されています。「かなしみ」という短い詩も、まさにそんな透明感のある孤独を書いていますが、どこか哲学的なのは、谷川さんの父親が哲学者だったから、ということもあるかもしれません。

「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」という詩集もあり、ぼくはかなり気に入っているのですが、その巻頭にある「芝生」という詩も宇宙人感覚にあふれています。ものすごく短い詩です。引用はしませんが、いつからかどこからか来て私は芝生に立っていた、というような言葉ではじまる。いったいあなたはなにものですか?という感覚がある。そして、やるべきことは細胞が記憶していた、だから幸せについても語ることができた、のように続く。細胞の記憶、というと遺伝子情報なのかもしれませんが、ふつうのひとは細胞の記憶から幸せについて語ったりしない。やはり、あなたはいったい?という印象です。

いつからかどこからか来て、と書いていて思い出す映画といえば、ケビン・スペイシーが出演している「K-PAX 光の旅人」です。異星人だと主張する彼は、精神病院に入れられてしまうのですが、科学者たちがずっとわからなかった星の位置を正確に計算したり、特別な能力をみせつつ病院のなかに生きる力をもたらして明るく変えていく。一方、ぼくはいったい何者だろう、という問いで思い出す映画といえば、有名なのでありきたりですが「ブレードランナー」でしょうか。最後にヴァンゲリスの音楽が流れるあたりで、そんな言葉がぐるぐると頭のなかを回り出します。

人間社会に生きていると悩みが多い。アンドロイドレベルであると、まだ人間と人造人間のあいだで悩むこともありますが、突き抜けて宇宙人になってしまえば悩みもないかもしれない。宇宙人になりたいものです。あっ、地球人も宇宙人か。

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■「二十億光年の孤独」は愛蔵版が出ているようです。ほしい。

4820540769二十億光年の孤独 (愛蔵版詩集シリーズ)
谷川 俊太郎
日本図書センター 2000-03-25

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B0002ADHVCK-PAX 光の旅人 [DVD]
日本ヘラルド映画(PCH) 2004-07-14

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投稿者 birdwing : 2005年12月21日 00:00

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