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2006年2月24日

脳と外部ブレイン。

本屋に行って「書きたがる脳」を買ってきました。いま49ページを読書中ですが、読ませる文章です。というのも著者は神経科医なのですが、文章を書くのが大好きなんですね。書くことが好きなひとの文章は読んでいてすぐにわかります。書くよろこびのようなものが滲み出しているので。

章の最初には、ロラン・バルトやカフカなどの文章が掲載されています。茂木健一郎さんをはじめとして、脳科学のトレンドなのかもしれませんが、基本的には理系でありながら分野を横断して文学的な教養もある方というのは、素晴らしいと思います。文系のぼくはもっと技術を理解したいものです。

先日書いたこととも重なるのですが(というか、最近は読むもの書くもの観るものすべてが重なりつつあって怖いのですが)、著者のアリスは、書きつづける動機、そして研究しつづける動機にきちんと「私」を据えています。そこが共感できます。もともと学生の頃からハイパーグラフィア的な「書かずにはいられない」傾向があったそうですが、結婚後に双子の子供を亡くしたときにハイパーグラフィアになった。頭のなかにアイディアが膨らんで、書かずにはいられなくなった。という自分の経験を語りつつ、客観的に科学的な考察を加えるアリスの文章は、こころに刺さって痛いものがあります。

一方、ぼくがなぜ脳にこだわるのか、ということを冷静に考えてみると、父親を脳梗塞で亡くしたことが要因じゃないかと思いました。父親が倒れたちょうどそのとき、ぼくはものすごくリアルな夢をみた。頭の左半分が、ごぼごぼごぼと水のなかに沈んでいく夢です。目が覚めてからも、ぬるりとしたなま温かい水の感触と水のなかに沈んでいく音を覚えていた。いやな夢をみちゃったな、と思いました。その直後に電話があり、父が倒れたことを知りました。ちょうど夢とシンクロしているのですが、トイレをごぼごぼと流したあとに倒れて、左脳の血管が破裂して脳のなかが血液でいっぱいになってしまったらしい。まさに、虫の知らせ、です。

病院で脳のレントゲン図を何度もみせてもらい、シャントという脳にたまった血液を排除する管を入れること、言葉はしゃべれなくなって半身は動かなくなるけれどリハビリでなんとかなること(結局のところ急変してなんともならなかった)などを医師から説明いただいたのですが、その当時、ぼくはレントゲンの写真を見ながら実は何も見えていなかったような気がします。医師の言葉に頷いていたけれども、言葉さえ聞いていなかった。すぅっと通り過ぎていた。ぼくは意識のなくなった父という現実を直視できませんでした。しばらくは脳の図をみるだけでも、なんとなく気分が悪くなった。

やっと最近になって、落ち着いて脳のことを考えられるようになりました。そして、考えはじめると、とことん考えたくなってきたというわけです。なんとなく脳ブームなので流行にあやかっているんじゃないか、ということもありますが、ぼくの個人的な脳に対する思いは、父を亡くしたことにつながっている。つまり実はかなり重い話題です。

個人的なナマナマしいお話を書いてしまいましたが、インターネットの世界では、脳はひとつじゃありません。それぞれのひとの脳が外部ブレインとして集合してひとつの頭脳を形成していくような感じです。協働というか、お互いに考えをぶつけながら考え方を練っていくというスタイルができつつあります。

そんな状況を踏まえつつ、はてなの近藤社長の「ウェブサービスの模型を作ろう」という日記に注目しました。

多くのプロフェッショナルなクリエイターの仕事には、模型、プロトタイプ、デッサンをする行程が存在します。建築物を作るのだったら模型を作って実際のイメージを確かめますし、工業製品を作るにもデッサンをしたり模型を作ったりします。作家は何度も推敲しながら文章を作り上げますし、画家もデッサンを繰り返します。

よくわかります。この推敲の時間というのが、実は楽しい。小説家には推敲の段階で書いたものの半分を削除するひともいるようです。文章作法の本に書かれていたのですが、アマチュアのひとは書いたものにこだわって消すことができない。ところが小説家は、全体を俯瞰して不要だと思った部分は潔く削除する。どれだけ削除しても書けるのがプロだそうです。

次の部分も同感です。

「ぱっ」と一瞬で作り上げた作品が、すぐさま改良の余地が無い程に100%の完成度である、と主張する人がいれば、多くの場合、それは怠慢によるものであると僕は判断すると思います。

というわけで、外部ブレインとして、いくつかのひとの手や知識を借りながらプロトタイプを完成に近づけていこうとするのが「はてラボ」のようです。なかなか面白いです。SNSのインターフェースになるところなど、同じブログも入り口を変えるとこんなに変わるのか、と当たり前だけどちょっと感動でした。

しかしながら、「新規実装・機能変更のお知らせ」で、新しい機能を○×で投票するという機能は、あっという間に消えてしまいました。イエイリさんのブックマークをお気に入りに入れていたところ、イエイリさんが非常に腹を立てられていたので、無知なぼくは、なんでかな?と思っていたのですが、オオヒダタカシさんの作った「コトノハ○×」にそっくりなんですね。「色までそのまま同じだったのが腹が立った理由です」と、イエイリさんのブックマークにコメントが書かれていました。ただ、ぼくはとりあえず走り出しちゃってから考える姿勢はいいと思います。問題をきちんと指摘してくれる方もいるわけだし。

マッシュアップが注目されていますが、アイディアだけいただき的なことに関しては、モラルも含めて今後もいろいろと議論が起きそうな気がします。オープンソースが主流になりつつある感じはあるのですが、問題も多そうです。

ところで、そのマッシュアップで思い出したのですが、カリフォルニアで行われたMashupCampでは、スケジュールがまったく決められていなくて、プレゼンテーションしたいひとが30秒間だけ壇上でプレゼンできたらしい。しかも、次から次へとプレゼンがつづいたとのこと。CNETjapanの「マッシュアップ・カンファレンスは異例ずくめ--「MashupCamp」レポート」を読んで唸りました。うーむ、斬新すぎるというか、無計画というか。日本だと難しいかもしれません。しかしながら、これぐらい騒がしいと脳内も活性化するでしょう。

投稿者 birdwing : 2006年2月24日 00:00

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