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2006年5月10日

エンターテイメントの進化。

任天堂の次世代ゲーム機「レボリューション(開発コード)」の正式名称は「Wii(ウィー)」だそうです。既に多くのブログなどで取り上げられていますが、以前、「怪獣の名前はなぜガギグゲゴなのか」という黒川伊保子さんの本を取り上げ、音のクオリアからネーミングについて考えたこともあったので、このネーミングについてまず考えてみることにします。

wii_main_img.jpg

まず単純にみなさんが感じていることだと思うのですが、ファミリーコンピュータから始まりゲームボーイアドバンス、ゲームキューブという流れのなかで「ウィー」というのはどうなのかという疑問があります。「うぃ〜」と音だけを聴くと、ネガティブなイメージとしては「うぃ〜。ひっく」という酔っ払い的な印象とか、「うぃ〜っす」という、いかりや長介さんの挨拶的な語感がある(古いか)。「任天堂ゲーム機の新名称「Wii」、ファンの反応は複雑」というCNET Japanの記事が面白かったのですが、たしかに微妙な感じがします。海外のブログには、以下のような書き込みもあったようです。

「本当にひどい名前だ。任天堂は新しいゲーム機の名前を独りよがりで決めたというのが一般的な意見だ。この愛称は、フランス語の『ウィ』とか、(英語の)幼児語でおしっこを意味する言葉とも聞こえる。任天堂が期待しているような連想はできないが、皆が興奮している理由はそこなのだろうか?」

おしっこ(Pee)という印象があるのは、若干困ったものかもしれません。ゲーム機らしくない、という感触もあるのですが、「革命」というコードネームを売りにしていただけに、斬新なネーミングを意図したのでしょう。前向きに考えると、そもそも「家庭の誰もが楽しめる」というコンセプトを表す「We」であったこと、Wish(願い)やWillなども連想することから、なかなかよい印象もあります。

任天堂ではWiiのロゴをモーションさせたイメージビデオも公開しているのですが、そのムービーをみていると、ふたつの「i」がひとのようにみえるとともに、Wという空に手を広げたような文字のイメージは悪くないな、という気がしました。最初は、えー??と思ったのですが、なんとなく落ち着いてみると、いい感じかもしれません。やっぱりねと納得できるネーミングより、ちょっと違和感があるぐらいがよいのかもしれない。あまり斬新過ぎるとついていけないのですが、Wiiぐらいであれば斬新でありながら許容範囲です。

ちょうどE3 2006というゲームのイベントを契機として、次世代ゲーム機に対する注目が高まっているのですが、ライバルとなるPLAYSTAITION3は、発売日、スペック、価格(5万9800円)を明確に打ち出しています。国内における情報はCNET Japanの速報で知りました。

ネーミング的な観点からみると、このプレイステーションは、「プレイ」の「レイ」の部分が綴りは違いますが「Ray(光線)」的な鋭利な印象があり、洗練された印象を受けます。さらに、PS2まではPlayStationだったのが、すべて大文字になっている。この意図については、1年ぐらい前の記事ですが、「後藤弘茂のWeekly海外ニュース」のSCEI 久夛良木社長インタビューにその理由が書かれていて、あらためて読み直して興味深いものがありました。

なぜかというと、要するに、PCも全部煮詰まったから、これはPCですかゲーム機ですかといっても始まらない。次のPlaystationは何なんですかという時代に入ったと思っている。だからPLAYSTATIONは"The playstation"。ちょっと気負いもこめてそうしている。

つまりゲーム機ではなくてPLAYSTATIONである、ゲーム機というカテゴリーで比較されては困る、そういう気負いが大文字に込められています。さらにそこで目指そうとしていたのは、家庭用の夢のワークステーションのようです。

今回の3で、プレイステーションって単語は、初めて全部大文字の"PLAYSTATION"にした。Workstationが僕らの夢のコンピュータだったから、最初にPlayStationってつけた。PlayStationは商品名で、PとSで始まっているから「PS」ってロゴをつけたわけ。でも、今回は大文字のPLAYSTATION。

東芝・IBMと共同してCellというプロセッサも開発したのもワークステーション的な発想があったからであり、ハードディスクにはLinuxをOSとして採用するという話もありました。もともと開発のコンセプトから、ゲーム機を目指したわけではなくて、エンターテイメントを目的としたコンピュータだったわけです。

その戦略の違いが、現在に至ってWiiというネーミングとイメージ作りにこだわった任天堂と、スペックと価格という機能的な側面にこだわったSCEという違いに表れたような気もします。しかしながら、そもそも任天堂はファミコン(ファミリーコンピュータ)というコンセプトでゲーム機を普及させたわけであり、コンピュータ的な方向にも進むことができたように思います。けれども、SCEのようにゲームを核とした家庭用ワークステーションのような広がりは求めていない。

久夛良木社長インタビューの2回目では、その辺りの苛立ちがはっきりと語られていて、いまさらながら興味深いと思いました。

僕がおかしいと思うのは、僕らはコンピュータだとずっと言ってるのに、同じ業界の中で任天堂さんが外に向かって玩具だ玩具だと言い切っている。だから、こちらはスーパーコンピュータ並みで輸出入管理が必要なモノを作っているのに、役所とかには玩具だと思われてしまう。

こうした動きについては、アップルコンピュータなども警戒しているように思われます。PowerPCからIntelのプロセッサの採用に移行しはじめたアップルでは、競合として考えているのはWindowsのPCではなく、Linuxを採用するような次世代のゲーム機なのかもしれません。

しかしながら、うちの息子をみていて思うのは、ハードウェアの進化に熱くなるのは、どちらかというとPC好きな父親だけです。子供にとっては面白いアプリケーションが動けば、WiiだろうがPLAYSTATIONだろうが関係はない。

コントローラの進化も注目されていますが、WiiにしてもPLAYSTATION3にしても、無線のコントローラを振り回すことによっていろんなアクションができるようになるようです。うちの息子は、ゲームキューブにしてもPS2にしても、ゲームをやっているときには熱くなってぴょんぴょん飛び跳ねる。ゲームなのに、汗びっしょりになっていることもあります。まだコントローラが本体と線でつながっているので過激な動きは抑制されているのですが、無線のコントローラになったときにどうなることやら心配です。

ところで、いま家にはゲームキューブ、ゲームボーイアドバンス、ゲームボーイアドバンスSP、PS2、PS ONEとゲーム機があるのですが(DSとPSPは持っていません)、ぼくはというとゲームを一切やりません。やったとしても息子には必ず負けるので(しかもハンディをつけてもらってやる)、やらないようにしています。やらないのに新しい機械モノが発表されると気になってしまう。ついでに欲しくなる。困ったものです。

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■Wiiの公式ページ。スティック型のリモコンは、どうしてもテレビのリモコンを思い出してしまい、きっとテレビのリモコンを振り回す子供が出てくるような気がします。逆にテレビのリモコンに、数年後には振ると画面が変わるような機能が追加されたりして。コンセプトビデオがなかなか楽しいです。
http://www.nintendo.co.jp/n10/e3_2006/index.html

■PLAYSTATION3のリリース。以前は、コンセプト紹介的なページがあったような気がするのですが、みつからなくなってしまいました。
http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20060509_ps3.html

投稿者 birdwing : 2006年5月10日 00:00

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