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2006年5月27日

ハイ・コンセプト、ハイ・タッチ。

ワールドカップでドイツ入りした選手たちは、かっこいいですね。やはり、やるぞ!という気迫が顔にあらわれているのでしょう。選ばれた使命感もあるかもしれない。プレッシャーも大きいと思いますが、緊張が選手たちをさらに大きくするような気もします。ところで、ぼくはといえば、土曜日も仕事でした。やるぞ!というほどの元気はなく、さてやりますか・・・ぐらいの脱力感ですが、もうちょっと気迫を持ったほうがいいかもしれません。

GOLDEN.minと同様に会社に置いてきてしまったのですが、R25の石田衣良さんのコラムで、日本人は残業が多すぎる、ということが書いてありました。イタリアなどでは、仕事が終わってからの自分の時間を大切にするようで、平日であっても、一度家に帰ってから夜の街に繰り出す。そんな元気はぼくにはとてもありません。けれども、人生を楽しむということは、もしかするとそういうことなのかもしれないな、と思ったりします。

とはいえ仕事がつまらないかというとそんなことはなく、はっきり言って楽しいです。今日はiPodでNew Orderをがんがん聴きながら企画書を書いていたのですが、あっという間に時間が過ぎました。クルマのCMにも使われていたかと思うのだけど、Kraftyという曲を聴くと元気が出ます。日本語バージョンもあって、これはなかなか苦笑ものではあるのですが、歌詞自体はいい。YAMAHAのプレイヤーズ王国では、オリジナルだけでなくコピーも公開できるので、時間があればKraftyをコピーしてみたいものだと思ったりしています。

そんな風に音楽にのって仕事を仕上げて、雨降りのなかを家に帰ったのですが、コンビニでビールを買って外に出たところビニール袋をつかみ損ねて、ごろごろと缶ビールを雨降りの夜のアスファルトに転がしてしまった。そのまま、どこかの穴に缶ビールが落ちて、缶ビールころころすっとんとん、という感じでネズミの国にでも行けたらファンタジーな気持ちにもなれたのですが、そんなことはなく、家に帰ってびくびくしながらプルリングを引いたところそれほど泡が暴れまくるわけでもないわけで、現実というものは期待してもたいしたことは起きないものだ、と再確認しただけでした。なんとなく保坂和志さん的な言説になったのはどうしてでしょう。わかりません。

仕事に追われながら、これからぼくらはどうなるのだろう、と思考をめぐらせるのですが、非常に示唆に富む本に出会ってしまいました。大前研一さんが翻訳しているダニエル・ピンクさんの「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」です。

4837956661ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
大前 研一
三笠書房 2006-05-08

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実は木曜日に丸善で「グーグル 既存のビジネスを破壊する」を購入したとき、どうしても気になっていた本で、次の日にこの本と村上龍さんと伊藤穣一さんの対談である「「個」を見つめるダイアローグ」をそこで購入してしまいました(ついでに書いておくと、長男に恐竜の百科事典と次男に「はじめてのひらがな」も購入してしまい、あまりの重さと小遣いの浪費に凹みました。)。この3冊は、当たりという気がしています。すべて面白い。

この「ハイ・コンセプト」という本ですが、おこがましいのですが、ぼくがこのブログで書いてきたようなことが書かれていて、ものすごくテンションが上がりました。いままで感じ取っていたことは個人的な雑感ではなく、時代の空気のようなものだったのかもしれません。この本は、右脳と左脳の考察から入ります。そして、いままで重要とされていた能力が効果がなくなる時代が訪れるという洞察とともに、次世代に必要な能力とは何か、ということが書かれています。大前研一さんは冒頭で「第四の波」が訪れていること、「カンニングOK」の教育があること、「モーツァルト型の脳へ」ということを指摘されていました。これもとても興味深い見解です。

「はじめに」の部分でこの本の要点をかいつまんで説明されているので、そこから抜粋してみます。まずこれから必要な「六つのセンス(感性)」として、「デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい」を挙げ、物質やテクノロジーで豊かになった時代に動かしていく能力として次のようなことが指摘されています(P.28 )。

私たちはいま、新たな時代を迎えようとしているのだ。
その新しい時代を動かしていく力は、これまでとは違った新しい思考やアプローチであり、そこで重要になるのが「ハイ・コンセプト」「ハイ・タッチ」である。

このうち「ハイ・コンセプト」については次のように定義されます(P.29)。

「ハイ・コンセプト」とは、パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力、などだ。

感情に訴えること、パターン認識などのキーワードに、ちょっとぼくはどきどきしました。「ハイ・タッチ」については次のように定義されています。

「ハイ・タッチ」とは、他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてその目的や意義を追求する能力などである。

これも他人との共感や日常に意義を見出す、などのキーワードがまるで答え合わせのように、ぼくがブログで何度も書いてきたことと重なり、間違っていなかったんだな、という安心を得ました。そして次のような言葉があります(P.29)。

個人、家族、組織を問わず、仕事の成功においてもプライベートの充足においても、まったく「新しい全体思考」が必要とされているのだ。

この全体思考を生み出すのが右脳であり、左脳と右脳の機能についてはまた面白いことが書かれているのですが、そこからぼくもインスピレーションを得たものがあり、長くなりそうなのでまた書くことにします。いま93ページを読みすすめているところですが、あっという間に読めてしまうかもしれません。

読書がたまらなく楽しくなってきました。あまり小説を読まなくなってしまったのが心配ですが。

+++++

■本日のBGM。精神的に(肉体的にも?)まあるくなってしまったぼくには、これぐらいのPOPさが心地よいです。ちょっと甘すぎるかもしれないですけど。個人的にはアルバムのなかの、Phones Reality Remixが好きです。もとの曲とは別物ですね、これは。リミックスは評論と似ているところがあり、解釈の光を別の方向から当てる創作的な試みだと思います。光の当て方で曲もまったく変わる。その光の当て方に、クリエイターの個性が感じられるとき、わくわくします。

B00094ASQIKrafty
New Order
Warner Bros / Wea 2005-05-03

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B0007INYFSウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール
ニュー・オーダー
ワーナーミュージック・ジャパン 2005-03-24

by G-Tools

投稿者 birdwing : 2006年5月27日 00:00

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