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2006年7月 2日

ランド・オブ・プレンティ

▽cinema06-039:正しさがいくつもある社会がどこへ向うか。

B000EPFPBUランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション [DVD]
ヴィム・ヴェンダース
アスミック 2006-05-12

by G-Tools

静かな、よい映画でした。久し振りに泣けた。9・11から2年後のアメリカ、ベトナム戦争の後遺症を抱えているポールはひとりでテロを発見し、アメリカを守ろうとしています。そこに、姪であるラナが10年ぶりにもう他界してしまった母(ポールにとっては妹)の手紙を届けようとやってくる。ポールは戦争の余韻とテロに対する憎しみから、世界のすべてをテロ的な視点から眺めているのだけど、ラナとの交流のなかで閉ざされていた心が開いていく。もちろん開いていく過程には、混乱して泥酔してぼろぼろになったりもするのだけど。

憎しみというフィルターで世界を眺めると、どんなに平和な光景もテロのための何かに見えてくる。洗剤のダンボールに執拗にこだわり、それがテロのための化学兵器を作るための準備だと妄想を広げて、ものすごい装備で偵察をするポールは滑稽ですらあるのですが、ひとつの感情でしか世界をとらえられなくなったとき、心にはブラインドが落ちてポールのようになりかねないと思いました。

映像的にもすばらしい。夕焼けの色など感動的です。それでいて美しいだけではない。アメリカの貧困であるとか、病んでいる部分も映し出している。9・11のときにイスラエルでは喝采があがった、どうしようもないけれどそれが普通のひとたちだ、というエピソードも語られるのですが、戦争というのも正しさがいくつもあるから生じるわけで、ある国家の正義は別の国家の悪でもある。けれどもそういう社会においても、人間であることの優しさであるとか、救われる方法というのはきっとあるような気がしました。

ヴィム・ヴェンダース監督の解説では、この映画が批判的であることを認めながらも、家族の物語を描くことでアメリカの正しさとは何かを問いただそうとしたこと、そして批判は愛情がなければできない、というようなことを語られていて共感しました。7月2日鑑賞。

公式サイト
http://landofplenty.jp/

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(46/100冊+39/100本)

投稿者 birdwing : 2006年7月 2日 00:00

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