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2006年7月 9日

円環で方向を束ねる。

2週間前から体調がすぐれずに、地球の重力に負けそうな日々がつづいているのですが、体調がすぐれないときには気分も低迷気味であって、気分が低迷気味だと文章にも切れがなくなります。そんなわけで2週間分のブログを見直すと、削除したいような日もあるのですが、あえて残しておくことにしましょう。上昇と下降を繰り返しながら、それでも最終的にはゼロかちょっと上向きあたりに着地すれば、よしとすることにします。

武満徹さんの「Visions in Time」という本を読んで、「時の円環(P.142)」の円環のイメージがずっとぼくのなかに残っています。それはいま読んでいる海原純子さんの「こころの格差社会」にもつながってきて、どうすればしあわせに日々を過ごせるか、というヒントにもなりそうな気がします。

4872951026武満徹―Visions in Time
エスクアイア マガジン ジャパン 2006-04-13

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どういうことかというと、ただ直線的に上昇していく社会においては、常に自分を(重力と逆らって)上へと向わせる力が必要になる。いま存在している自分の位置をゼロの座標だとすると、X,Y,Zの座標がそれぞれ3上昇したとすると、その(3,3,3)という位置が次の基準となる座標となる。と、書いていて数学的なことは苦手なので、ここでやめてしまうのですが(苦笑)、常に上を向いているとすれば、その到達する位置から考えると現在はマイナスの地点になるわけで、上に到達することを満足というとすると、現在の位置は「常に不満足」なわけです。

そこで直線ではなく円環という考え方で、ぼくらはある軌跡の上をぐるぐる回っている存在だとします。きれいな円というわけではなく、その円はぼこぼこと上がったり下がったりする。上がったり下がったりを繰り返しながら1周すると、もとの場所に辿りつくわけです。けれども辿りついた自分は、決して出発した自分ではない。「1周上がったり下がったりしながら廻ってきた自分」です。同じ位置にいたとしても、その廻ってきた経験というのは違う。

時計であっても方位磁石であってもいいし、太陽系をめぐる惑星というイメージもあるかと思うのですが、円環であるものの魅力をぼくは感じます。それが何か、というとうまく説明できないのですが、デジタルの時計よりもアナログの針がある時計のほうがなんとなく好ましい。それはつまり、加算されていくイメージがないからかもしれません。円(輪=和)のなかに閉ざされる安心感ともいえそうです。繰り返されることの安らぎ、のようなものがある。

ブログのなかで何度も同じことを書こうと思うし、上昇と下降を繰り返してもよいと思っています。けれども、直線的に上をめざしているのではなくて、大きな円を何度もなぞるような行為に似ているのではないか、と考えました。同じテーマで何度も書く。書いているうちに、その内容はどんどん深まっていくわけです。あまりテーマを広げなくてもかまわない。むしろ、ごりごりと深く掘り下げていきたい。

趣味のDTMも同様です。いま夏らしい曲を創っているのですが、別にアーティストを気取るつもりはないけれど、正直なところ自分の世界を壊すことができずに、ちょっと悩んでいます。なんとなく自分で自分のメロディが予測されるというか、ああやっぱりね、という感じになる。でも、それでいいのではないか。徹底的に自分がよいと思う世界をワンパターンで追いかけるのも、楽しいかもしれない。

とはいえ、まだ直線的な起承転結で構成された、いわゆるサビのある音楽しか創れないのですが、いずれは同じフレーズを延々と繰り返すような曲も創ってみたいものです。それこそ円環のような音楽を。

フレーズを延々と繰り返すような曲というのは、トム・ヨークのソロアルバムを聴いて、ベースで同じフレーズが繰り返されるのが、かっこいいな、と思ったからなのですが、彼の音楽は感情を不安定にする音楽というか、かなりざわざわと揺さぶられる曲もあります。2曲目の「analyse」という曲は好きなんですが、闇を感じさせますね。遠く旅をしてきたけれど結局のところあなたには答えを考えるために分析している時間はない、というミもフタもない歌詞です。どうしようもない暗さがあります。

B000FZEZPQジ・イレイザー
トム・ヨーク
ベガーズ・ジャパン 2006-07-05

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ぼくのブログもそんなものかもしれません。途方もない巡回があるだけで、どこかへ辿りつくためのものではない。辿りついてしまっても、その後に困ってしまうのですが。

それでも、季節がめぐるように、文章を書いていきたいと思っています。

投稿者 birdwing : 2006年7月 9日 00:00

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