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2006年7月12日

闇に聴こえる音。

プラネタリウムに行ってみたいと思いました。というのは、とても唐突なのですが、会社の帰りに自宅の近くにあるCDショップに立ち寄り、レイ・ハラカミ feat. 原田郁子の「暗やみの色」というCDを購入したからです。これは日本科学未来館のプラネタリウムのために、レイ・ハラカミさんが書き下ろした曲のようです。
暗やみの色
レイ・ハラカミ feat.原田郁子
暗やみの色
曲名リスト
1. intro
2. sequence_01
3. sequence_02
4. sequence_03
5. sequence_04
6. "yami wa hikari no haha"
7. outro

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透明なケースだけのCDなのですが、限定プレス盤ということで、16ページのガイドブックが付属しています*1。なんだか得した気分です。

このガイドブックには、「見える」ということはどういうことかについて、科学的な解説が書かれています。これから読むのですが、なんとなくわくわくします。そして何よりも、谷川俊太郎さんの詩「闇は光の母」が掲載されていて、さらにクラムボンの原田郁子さんとの対談があるのもうれしい。ちなみにCDのなかには、詩の朗読も入っています。

対談のなかで次のような言葉がよいと思いました。朗読についての対話です。


原田◆ナレーションを録るときに、天から降ってくるみたいな、ありがたい感じにはしたくないって話していて。耳元で喋りかけてるような方が、きっと入ってくると思ったんです。
谷川◇絶対そう。詩はすばらしいものだって思い込んで、普段の自分と全然違う声で読む人がいるけど、不思議なことに、そうすると詩は死ぬのね。祝詞みたいに、神様の前で読むんだったらそういうのもいいかもしれないけど、人間に聞かせているわけだから。現実生活のリアリティみたいなものがちゃんとないと、面白くないっていう気がしますね。

谷川俊太郎さん、やっぱり素敵です。

レイ・ハラカミさんの曲は、ものすごく映像的です。ぼくはぼーっとコーヒーなどを飲んだりするときに、レイ・ハラカミさん曲を聴きたくなります。集中して聴くのではなく、BGMでもなく、ちょっとメディテーションのような感じで自分の内側に広がる風景をぱらぱらめくりながら考えごとをするようなときに、ぴったりの曲です。逆に通勤電車のなかでiPodで聴いたときには、これは合わないと思った。閉鎖的な空間で(プラネタリウムもそうだけれど)、ゆったりとくつろぎながら瞑想するときに合う曲です。シンセサイザーなんだけれど妙にアコースティックで、ギターなのかピアノなのか分からないような音色のアルペジオがあって、ディレイによって広がった音の空間のなかに妙にリアルなドラムの音が聴こえたりする。独特の世界を追求していて、好きなアーティストのひとりです。

さて、「こころの格差社会」という本を読み終えました。格差社会というのは流行りなのか、いろいろなところで目にします。しかしながら、ただ煽るだけのキーワードにもなりつつあり、ほんとうに社会の問題を直視して、どう変えていけばよいのかということまで踏み込んだ議論は少ないような気もしています。

*1:いま気づいたのですが、今日発売だったんですね。このCD。

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■日本科学未来館のページ。プラネタリウムの館長さんはあの毛利さんでしたか。

http://www.miraikan.jst.go.jp/index.html

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▼Books051:自分らしさ、をあらためて考える。

こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人 (角川oneテーマ21)
海原 純子
こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人 (角川oneテーマ21)
曲名リスト
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「自分らしさ」という言葉を嫌い、その言葉にアレルギーを起こすようなひとがいることを海原さんは指摘します。そういうひとは男性社会的な思考にどっぷりと浸かっていて、過程よりも結果を重視し、内側よりも外側の評価を得ることにやっきになっていて、医学的にはタイプA(A型気質)というアグレッシブな傾向にあるひとが多いそうです。この背景には、「自己実現」という言葉ばかりが先行した、表層的な人材育成ブームによる洗脳(というかイメージづくり)の弊害があったからかもしれません。

しかしながら、ぼくがあらためて目からウロコだったのは、マズローの言っている自己実現には別の意味があって、自分の好きなことを集中してやっていると、それが他人のためにもなる、ということらしいのです。たとえば、料理が好きな女性がいるとします。別に旦那さんを喜ばせるわけでもなく、よい妻を演じるためでもなく、あるいは料理コンテストでいちばんを取るためにやっているわけでもないのですが、料理が好きで好きでたまらない。好きだからその道を究めるのですが、究めたところ家族も喜ぶ。ブログに書いたレシピが絶賛されたりする。利己的であることを追求すると、最終的には利己的ではなくなってひとのためになるわけです。それがマズローの自己実現の究極形らしい(さらにそこを超越するらしいのですが)。

音楽もそうかもしれないし、文章だってそうかもしれない。お金を儲けるためではなく、本を出して名声を得るわけでもなく、とにかく書くことが大好きで書きつづけていたら、なんとなく「きみの書いた文章を読みたい」というひとが増えてくる。重要なことは結果よりもプロセスなわけです。しかしながら、勝ち組社会が重視するのは結果だったりする。そこが大きな歪みとなっているのかもしれません。

海原さんはさらに孔子を引用して「欲する所にしたがって、矩を超えず」ではなく、自分のやりたいこと、好きなことに夢中になることで、それが社会のためになることが自分らしさであり、自己実現のためには他の社会的な欲求であるとか所属の欲求が満たされている必要があり、どうしても40歳以上になるのではないか、そんな長い道のりを必要とする「自分(らしさ)」探しを10代や20代などで求めても無理だ、という風に書いています。また、自己を醸成するためには、外側にばかり意識を向けるのではなく、内側に向けるひとりの時間が重要であると指摘されています。

考えさせられる部分がたくさんありすぎてまとまらないのですが、最後にメモとして、マズローの言う自己実現人間の特徴を抜粋しておきます(一部省略。P.176)



現実を有効に知覚し、それと快適な関係を保っている
A自己、他者、自然に対する受容的態度
B自発的な行動
C自己中心的でなく、問題中心的である
D孤独、プライバシーを好み、欠乏や不運に対して超然としている
E文化や環境からの自律性
F人生の基本的に必要なことを繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びをもって味わうことができる
G<神秘経験>(W・ジェームズ)や<至高体験>をしている
H共同社会感情
I深い対人関係
J民主的性格構造
K手段と目的の区別
L哲学的で悪意のないユーモアのセンス
M創造性
N文化に組み込まれることに対する抵抗
O確固とした価値体系
P対立性・二分性の解決、欲望と理性のすばらしい調和状態

「ハイコンセプト」という本に書かれていたキーワードとも合致するものがあり、格差社会を生き抜くためのヒントのようなものを感じます。いつも本を読んでいる途中には、さまざまなヒントに気づくのですが、読み終えると忘れてしまいます。読んだ本をじっくりと考察したり、研究する時間があってもいいんじゃないかと思いました。7月12日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(51/100冊+41/100本)

投稿者 birdwing : 2006年7月12日 00:00

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