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2006年12月 2日
シャイン
▽cinema06-075:繊細なピアニストと、父子の物語。
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泣けた。ピアニストを主人公とした映画には残酷で切ない物語が多いのですが、この映画もやりきれない感情を抱いてしまう作品でした。デヴィッド・ヘルフゴットという天才ピアニストの実話をもとにした作品で、それが現実の物語であることがさらに痛切です。
デヴィッドは、厳しい父親から虐待まがいの英才教育を受けます。なぜ父親がそんなにスパルタなのかというと、幼い頃にお金を貯めて購入したバイオリンを父に壊されたトラウマがあり、音楽に対する屈折した感情を息子にぶつけている。コンテストで優勝すること、おまえは運がいい、という言葉を何度も息子に繰り返し言わせる。その教育のおかげで彼は才能を発揮しはじめるのですが、世間から注目されて奨学金など上級の教育を受けることができるチャンスが得られるようになると、今度は父親は息子を束縛して圧力をかけて潰そうとする。父のエゴに押し潰されそうになりながら、彼は音楽的な才能を磨き上げていくのですが、その精神的な歪みから精神病を発症してしまう。子供を破壊する親のエゴに憤りを感じるとともに、子供もやはりひとつの人格である、ということをあらためて考えました。
ロンドンの王立音楽学校で学ぶときに、楽譜を解釈して感情をのせなさい、という指導を受けて、でも楽譜に感情は書かれていないですよね、という風に応えたデヴィッドが印象的でした。彼は父親の権力下におかれていたので、自分の感情を表現することさえおどおどと頼りない。結局のところ、その気持ちがオーヴァーヒートして精神を蝕んでしまうのですが、精神病で饒舌になった彼の方がむしろ純粋に生き生きとしていて、演奏はもちろん人間的にも親しまれる感じです。
恥ずかしながらクラシック音楽はほとんど無知で、ラフマニノフなんて聴いたことがなかったのですが、この映画でピアノ協奏曲第3番を聴いて泣けました。演奏中に、あまりに集中するあまりに頭が空白になる映像は迫力があります。ピアノの演奏がすべて素晴らしい。と思ったら、ヘルフゴット自身の演奏とのこと。純粋であることは弱さも露呈するものですが、そんな弱さにも心に滲みるものがあります。強くなれなくても、いいと思う。12月2日鑑賞。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(86/100冊+75/100本)
投稿者 birdwing : 2006年12月 2日 00:00
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