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2007年10月29日

ブラック・ダリア

▼ファイア&アイス、そして女性をめぐるセピア色の3つ巴の物語。

B000J6HYLSブラック・ダリア コレクターズ・エディション 2枚組
ジェイムズ・エルロイ
東宝 2007-05-18

by G-Tools

耳まで口が切り裂かれ、内蔵は抜かれ、腰で切断された全裸の女性。そんな猟奇的な殺人者をめぐって、ふたりのボクサー出身の刑事、ファイアことリー・ブランチャード(アーロン・エッカート)とアイスことバッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット )、そしてファイアの妻であるケイ・レイク(スカーレット・ヨハンソン)をめぐる疑惑と真実の物語です。

監督はブライアン・デ・パルマ。といえば思い出したのが「アンタッチャブル」なのですが、セピア色を基調とした風景のなかで淡々と展開される物語、そして1940年代のジェントルマン的な映像は、映画らしい映画を観たなあという気分にさせてくれました。まあ、若干ありきたりと言ってしまえばそうなのですが、スタンダードな映画という気がします。

そもそも現実に起こったブラック・ダリア事件をもとに、ジェイムズ・エルロイの小説を映画化したもののようです。猟奇的な殺人が起こるシーンが若干ぼくにはわかりにくく、雑然としていた印象はありますが、一度ボクシングで手合わせしたエリートであるファイアと、ファイアの妻であるケイに惹かれているアイスの夏目漱石でいう「それから」的な関係に何か甘酸っぱいものも感じます。

この三人の関係は、事件や賄賂などを背景に、複雑に絡み合っている。作られた関係なのか、真実の愛情なのか、ミステリーでありながらそんな人間的なドラマをきちんと描いているところに好感が持てました。この部分がおざなりになってしまうと、ミステリーとはいえ単なる謎解きになっちゃいますよね。もちろんミステリーファンであれば、そんな直線的な推理の筋を楽しむのかもしれませんが、そうではないぼくはやはり、禁じられた恋に対する苦悩であるとか、正義と偽善の板ばさみによる平衡感覚であるとか、そんな部分に惹かれる。

映画内映画というか、ハリウッド女優を夢見ていたエリザベス・ショート(ミア・カーシュナー)のテスト撮影の映像も非常にせつないものがありました。彼女は黒い服を好んで着ていたので「ブラック・ダリア」と呼ばれていたのだけれど、結局、最後に出演できたのはポルノ映画であり、その映画を最後に殺されてしまう。テーマとなった女性ではあるのだけれど、ストーリー的には添えられた感じの存在で、けれどもそこには彼女なりの人生がある。夢をかなえようとしてハリウッドに出てきて、才能に恵まれずに男たちとの関係に溺れて、結局のところ、ぼろくずのように引き裂かれて死んでいく。かなしい(涙)。

ところで、どーでもいいことですが、スカーレット・ヨハンソンかわいいですね。ふっくらとした唇がおいしそう(笑)。映画のなかの彼女が素敵だと思ったのは、「ロスト・イン・トランスレーション」だったのですが。とはいえ、個人的な趣味を述べると、すーっと薄い唇も好みなんですけど。ああ、ハードボイルドの映画の感想の最後に、ほんとうにどうでもいいことを書いちゃった気がする(苦笑)。10月28日鑑賞。

■The Black Dahlia movie trailer

投稿者 birdwing : 2007年10月29日 00:00

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