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2008年1月19日

コーヒー&シガレッツ

▼Cinema08-002:コーヒーとタバコのある、モノクロームの時間。

B000A2Q7YGコーヒー&シガレッツ [DVD]
アスミック 2005-09-09

by G-Tools


苦味のあるものって、どこかオトナっぽくないですか。ビールもそうなんだけど、コーヒーとかタバコとか、そんな嗜好品には苦味があり、オトナの匂いがする。

かつて予備校時代にはぼくはかなりのヘビースモーカーだったのですが(といっても、キャスターとかフィリップモーリスとか、軽いタバコばっかり吹かしていましたが)、いまはタバコはすっかりやめてしまいました。でも、先日コンビ二に行ったら葉巻が売っていて、なんとなく美味しそうと思った。ちょっと手が伸びそうになりました。一方で、コーヒーは毎日のように摂取しています。あまりこだわりがなくて、缶コーヒーとかで十分に満たされちゃうんですけどね。

「コーヒー・アンド・シガレッツ」は、コーヒーとタバコのある風景をモノクロで描いたジム・ジャームッシュ監督の映画です。12の短編ムービーのオムニバスで構成されています。なんでもない雑談風景ばかりなのですが、これがまたいい。何も起こらないのだけれど、会話に妙な緊張感が生まれたり、哀愁に包まれたり、ときにはくすりと笑わせるようなユーモアがあって楽しめます。ぼくは気に入りました。本年度第一のおすすめです。

ほんとにコーヒーとタバコで雑談するだけの映画なんですよ(笑)。ただ、別の短編で同じ話が繰り返されたりして、それもまたおかしい。そして、モノクロという画面のせいもあるかと思うんですが、ものすごくおしゃれです。白いカップのなかに注がれるコーヒーも素敵な色だし(というか色がないからこそ映えるものだし)、気まずい空気のなかにたゆたうタバコの煙もいいなあと思いました。

実は出演しているひとたちもちょっと豪華で、イギー・ポップとトム・ウェイツというミュージシャンふたりが喫茶店で話すような短編もあります。渋い顔でコーヒーを飲み、タバコを吸いながら「おまえの曲、あのジュークボックスに入っていなかったぞ」みたいな牽制をする。言われた方はクールにしていながら、実は内心動揺しまくっていたりする。

ところで、ぼくはタバコとコーヒーを飲む女性って、ちょっと好きなんですよね。もちろん自分の彼女でニンシンしてお腹に赤ちゃんがいれば控えるように言うと思いますが、嫌煙家にメイワクをかけないのであれば、自己責任のもとにタバコだってかまわないと思う。それがオトナってものでしょう。この映画のなかでは「RENEE」という作品に出てくる女性がめちゃめちゃ素敵です。美しい。

YouTubeで動画をみつけました。でもこの動画、バックの音楽を別のものに変えているのでがっかり。だいなしだ(泣)もとの映画では、流れているバックの音楽を含めて最高なんですけど。

■coffee and cigarettes - renee

何を読んでいるのかと思えばファッション雑誌ではなくて、銃のカタログらしきところもいい。

「RENEE」だけでなく、ほとんどの短編で雑談の映像とともにコーヒーに砂糖を入れるシーンを上から俯瞰して撮っているのですが、これがおしゃれです。さりげなく置かれた小物、テーブルクロスなどを含めてなんとなく映像に癒される。どこか待ってました的な映像です。まったりとした会話風景にこの映像が挿入されることで、なんとなく映像に締りができる。

飄々としてとぼけていながら笑えるシーンも多いのですが、「二コラ・テスラは、地球を1つの共鳴伝導体であると捉えた」というフレーズも2作品で繰り返されていて、これもなんだかわからないけどよかった(笑)大きなコイルのようなもの(テスラコイル)を持ち込んで、学生らしき男の子がガールフレンドにそれを実演してみせるシーンは面白かったです。

好奇心で調べてみたらテスラコイルってほんとうにあるんですね!以下のテスラコイルはでかい。迫力があります。

■BIGGG TESLA COIL OF OKLAHOMA

まあ、こんなものを喫茶店でばちばちやられたら店のひとは困惑ですが(苦笑)。

ビル・マーレイのへんてこな給仕役もよかった。これがいちばん笑いました。黒人ふたりを相手に、ほんとうに俳優のビル・マーレイとして登場する。ぼくはビル・マーレイが結構好きで、ソフィア・コッポラ監督なのですがトウキョーを舞台に年の差がある女性との淡い恋愛を描いた「ロスト・イン・トランスレーション」とか、ジャームッシュ監督の作品では、突然匿名の手紙で息子の存在を知らされて過去に付き合った女性に会いに行く「ブロークン・フラワーズ」なども楽しめました。

任侠ものの映画を観ると肩をいからせて歩きたくなるものですが、この映画を観たら、無性に喫茶店でコーヒーを飲みながらタバコを吸いたくなりました。日曜日、奥さんには内緒で喫茶店に行って吸ってこようかなー。不健全なものに過度に依存するのはよくないと思うのですが、たまにはいいよね。できればそこに談笑できる相手がいてくれるといいのだけれど。1月19日鑑賞。

■公式サイト
さすがにサイトもおしゃれです。全作品の紹介など充実しています。
http://coffee-c.com/
080119coffee_and_cigarets.JPG

投稿者 birdwing : 2008年1月19日 00:00

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2 Comments

かおるん 2008-01-21T12:04

トム・ウェイツも、ジム・ジャームッシュも大好き!あの、ネジ2本ぐらいはずれた感がいいですよね。“ストレンジャー・ザン・パラダイス”や“ダウン・バイ・ロー”は映画館で観た記憶があります。明治神宮を散歩していたら、来日していたジョン・ルーリーとすれ違ったことも。
確かに、この監督の世界は苦味が魅力ですよね。ヘビースモーカーの父を持っていたせいだろうけど、私はタバコにはわりかし寛容。あっちもこっちも禁煙禁煙っていう、そういう空気のほうがなんだか窮屈です。世の中が無害で苦味のないものばっかりになっていくみたいで。
“コーヒー&シガレッツ”、早速チェックしてみます。

BirdWing 2008-01-22T02:42

さすが、かおるんさん。渋いですね。

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」もいいですね。
ぼくはどちらかというとこの手の映画は苦手だったのですが
枯れた雰囲気が、ようやく楽しめるような年齢になった気がします。
ジャームッシュ監督だとジョニー・デップが出てた
「デッドマン」なんかも渋い。

「コーヒー&シガレッツ」では
どことなく、笑いを誘うような演出も好みでした。
反復が笑いを誘う、というか。
んー、ちょっとポスト構造主義っぽい?(笑)

難しいことはさておいて
また喫茶店かよ!(というか全編喫茶店)
また二コラ・テスラかよ!
アイスキャンデーの話またしてるよ!
という、これでもかー的な繰り返しにまいりました。

明治神宮で来日していたジョン・ルーリーにすれ違ったってのも
すごいですね!というかすみません、
ジョン・ルーリーって誰?って思っちゃいました(苦笑)
そんなわたくしがジャームッシュ語ってはいけませんか(泣)

うーむ、世の中が無害で苦味のないものばっかりになっていく
というのもわかります。過剰にそうしたものを
排除していく傾向にありますよね。
ノイズキャンセラーのヘッドホンとか。

ぼくが思うに、タバコよりも害があるのは
ストレスじゃないか、と。

健康のため、飲みすぎ&吸いすぎに注意しましょう。

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