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2008年2月 9日

街のあかり

▼Cinema08-006:静かに耐える、負け犬のかなしみ。

街のあかり街のあかり
ヤンネ・フーティアイネン.マリア・ヤンヴェンヘルミ.イルッカ・コイヴラ アキ・カウリスマキ


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たとえば、かなしいとき。大声で泣き喚くようなひとよりも、静かに黙って肩を震わせているようなひとに惹かれます。あるいはいつも静かに笑っているひとが号泣するような場面もいい。強がりが好きなんでしょうか。映画のなかに癒しを求めているのかもしれない。そんなわけで派手なアクション映画も好きだけれど、淡々と静かなシーンが続く単館ものの映画も好みだったりします。

「街のあかり」は、孤独で暗い警備員コイスティネンが主人公です。彼は友人からも飲みに誘ってもらえずに、けれどもひそかに実現することのない起業を考えて休日は学校に通っている。そんな彼が、ある日カフェで美しい女性から声をかけられるのだけれど、実は彼女は強盗の手先で・・・という物語。

台詞はほんとうに少なくて、静かに物語が流れていきます。さびしさがひりひりと伝わってくる。夜勤明けに彼が立ち寄るホットドック屋の女性アイラがひそかに彼に想いを寄せているのだけれど、それに気づかないコイスティネンがまたさびしい。

ふたりの間にも会話はひとことふたことしかなくて、さらに表情すら変わらないのだけれど、お互いの気持ちが伝わってきます。「今日は遅いのね」というアイラに対して、「デートしてきた」のような自慢をするコイスティネンに対して、「もう締めるから帰って」のような短く返すシーンに、さまざまな想いが錯綜していて、うまいなと思いました。

この映画のアキ・カウリスマキ監督は、フィンランドの監督です。ぼくが彼の作品を最初に観たのは「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」なのですが、変な間合いのある映画を撮るひとだな、のような印象があった気がしました。最近では「過去のない男」を観たことがあり、これもしんみりと心に染みるような作品でした。

この「街のあかり」に関していえば、鑑賞後にいまひとつすっきりとしないものも感じました(ストーリーが比較的想像しやすいというか、よくあるパターンだったので)。それでも、強くなれない男、運命からも能力からも見放されていて、強者の策略に翻弄されるコイスティネンの焼け付くような孤独とともに、そんな彼を慕うひとがいること、そして何よりもぼろぼろになりながらそれでも生きることをやめない彼の逞しさのようなものに打たれました。

物語よりも、うつろな登場人物の表情が強く印象に残る映画でもあります。全体を通してさびしい映画ではあるのですが、どこかあたたかさも感じられる作品です。2月9日鑑賞。

■公式サイト
http://www.machino-akari.com/

投稿者 birdwing : 2008年2月 9日 22:18

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