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2008年2月17日

こわれゆく世界の中で

▼Cinema08-006:メロドラマなんだけど、泣けた。

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いきなりエンディングロールの話なのですが、グロッケンというかビブラフォンのような音にファルセットの繊細なボイスがl聴こえてきて、思わず身を乗り出しました。これシガー・ロスではないですか。「Takk...」に収録されている「Sé lest」という楽曲とのこと。ぼんやりとフォーカスの合わないブルーの映像をバックに流れていて、じーんとしました。こんなところでシガー・ロスを聴けるとは思わなかった。映画のなかの映像ではないのですがYouTubeから。この曲です。

■Sigur Ros - Se Lest

物語のなかでも、ウィルと共に暮らしているリヴはスウェーデンの出身という設定で、アバ(懐かしい)の話などが出てきます。ちなみに映画全体としては、ガブリエル・ヤレドとアンダーワールドによるコラボレーションの音楽というのもいい。

シンプルに言ってしまうと、不倫の物語でしょうか。えーと実は涙腺弱めの自分は久し振りに映画で泣けてしまったのですが、冷静に落ち着いて考えると、これってよくあるメロドラマだよね、という印象もありました。しかし通俗的なストーリーを超えて、家族とは何か、人種とは何か、仕事とは、というような問いが浮かんでくるような気がします。

建築家のウィル(ジュード・ロウ)は都市再開発のようなプロジェクトに関わっていて、共同経営者のサンディとロンドンのキングス・クロスというところにオフィスを構えます。これがまた酷いところで、引っ越してすぐにパソコンなどを盗まれてしまう。悪いやつらがまだ10代の少年たちを使って盗ませているのだけれど、その少年を追いかけているうちに、ウィルは彼の母親であるアミラと愛し合うようになってしまう。彼女はボスニアの戦火から逃れてイギリスで生きていて、ずっと孤独だった・・・。

一方で、ウィルのパートナーであるリヴは鬱病で"人口太陽"で治療していて、バツイチでひとりの娘がいます。この娘は不眠症で自閉的で夜中の3時にバレエをやっていたり、家中の電池を集めたりしている。お互いに傷付いているのだけれど、近くにいるのに寄り添えない。無意識のうちに拒んでしまう。強がって距離が埋まらない切なさが痛い。

窃盗、不倫、裏切り、精神の病など、それこそ荒れ果てた暗いトーンで物語は進行していくのだけれど、さまざまなものを失ったあとでちょっとしあわせになれる。本音で傷付けあったりするけれど、最後には重なり合う気持ちがあり、それがなんとなくあたたかい。全部壊してしまったあとで、最初から作り直すことができそうな希望を感じさせます。映像の技巧はわからないのですが、ピントを外してぼかした映像も温もりの感じられる心象風景にしっくり馴染む印象を受けました。

すべてを曝け出せること、壊してしまうことは、信頼がなければできないことかもしれません。2月17日鑑賞。

公式サイト
http://www.movies.co.jp/breakingandentering/

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2月18日追記

シガー・ロスの「Sé lest」ですが、「こわれゆく世界の中で」と「シガー・ロス」で検索したどこかのサイトに「()」に収録されているということがあったのでそのまま記載していたのですが、実はぼくはまだ「()」を聴いたことがなかったのでした(恥)。しかしながら、本日、唯一持っている「Takk...」を電車のなかでiPodで聴いていたら、この曲が!あれ?という感じで調べてみると、確かにこちらのアルバムに収録されている。なんだかなー。どこかで聴いたことがある、と思ったのですが、どうりで聴いたことがあるわけだ。最近、誤字・脱字も以前よりもずいぶん多いのですが、確認しないで掲載するのもダメですね。反省。修正いたしました。

投稿者 birdwing : 2008年2月17日 23:43

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