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2008年3月 6日
自由なケイタイ。
インターフェース(interface:2つのものの間のやりとりを仲介するもの)に関心があります。といっても技術者ではないので、SFのような近未来の技術にわくわくしているだけの傍観者なのですが、「コントローラーという楽器。」というエントリー では、音楽のMIDIインターフェースをいろいろと調べてみました。
ふつう楽器といえば鍵盤、弦、あるいはサキソフォンなどのように息を吹き込んで穴を押さえるインターフェース(?)が一般的ですが、そうではない楽器も出てきています。テルミンのような電子楽器は昔からあったのですが、身体全体で音を出すようなものもありました。電子楽器のインターフェースはまだまだいろんな形態が出てきそうです。「新しい音楽のために。」で取り上げましたが、YAMAHAの新しいガジェットであるTENORI-ONにも興味があります。
一方で、パソコンの進化としてマルチタッチスクリーンも面白いなあと思っていて、「指で触れる、操る。」というエントリーを書いてみました。わかりやすいのがiPod Touchだと思うのですが、人差し指と親指などのアクションを組み合わせることでさまざまなショートカットを実現できたり、操作方法も進化しています。やがては映画「マイノリティ・リポート」のように、奥行きのある仮想的な3D空間を指で操ることでファイルなどの操作ができるようになるのでしょうか。
となると、現在はデスクトップ上に広がっているアイコンが、デスクトップの「手前」はもちろん「奥」にも広がってしまうわけで、ますます検索の技術が重要になってくるような気もしています。ファイルをかきわけて探す、などというようなインターフェースになったら大変そうだ。それこそ容量が増えたりインターネットに接続されたら、漆黒の宇宙空間を手探りするような感覚になりそうです。情報技術が進化しているのか、アナログなのかわからなくなりますね。
そんなインターフェースの進化について妄想をしていたところ、CNET Japanのフォトレポートにあるノキアの新携帯端末「Morph」の情報を発見。少し古くて2月の記事ですが、引用してみます
■フォトレポート:伸びて縮んで向こうが見える--新携帯端末「Morph」
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20368154,00.htm
Nokia Research Center(NRC)とケンブリッジ大学によって共同開発された携帯端末のコンセプトモデル「Morph」。同技術は、モバイルデバイスを伸縮可能で柔軟にし、透明度を持たせながら簡単にきれいさを保つため、ナノテクノロジがどのように使われるかを実証することを目的としている。Morphは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が5月12日まで開催の「Design and the Elastic Mind」展と連動したオンライン展示で見ることができる。
ちなみに、MoMAの「Design and the Elastic Mind」展のオンライン展示もナノテクノロジーで羽ばたく虫のようなロボットとか折り紙とか、なかなか面白いのですが、脇道にそれてしまうので機会があればまた取り上げることにして、リンクだけ記載しておきます。
■MoMA「Design and the Elastic Mind」展 オンライン展示
http://www.moma.org/exhibitions/2008/elasticmind/
まず写真で「Morph」のデザインを確認。グリーンのジェルのような印象です。この色合いと様相は日本+北欧系の別のメーカーを想像させるのですが(苦笑)、それはさておき。
ナノテクノロジーの活用によって、ケイタイ(携帯)のケイタイ(形態)がさまざまに変わります。トランスフォーマーではないですが、いくつかのカタチに変身します。これがなかなか少年ごころをくすぐります。
オープンモード。これはミュージックプレイヤーにも使えるような感じ。
フォンモード。上のほうに見える星座のマークのようなものは何でしょう。
そして、驚くべきなのがリストモード。2つ折どころじゃなくてジャバラに折り畳むこともできるのですが、驚いたことに丸めてブレスレットにもできます。素材自体が透けているのでおしゃれです。スケルトンとかシースルーという感じ。
ソフトウェアキーボードのような画面を表示すれば、かなりパソコンに近いこともできそうです。
写真よりも動画で見たほうがわかりやすいと思います。なのでYouTubeからコンセプト映像を。
■Nokia Morph Concept (long)
携帯電話は肌身離さず持ち歩くメディアである、というようなことが言われたことがありますが、丸めて腕に巻きつけられるのであれば密着型のツールになります。さらにすごいのは、勝手にお掃除してくれたり、太陽光から充電してくれるらしい。電池が切れてひやひやすることがよくあるのですが、そんな心配も不要です。至れり尽くせりの携帯電話ですね。
楽器やパソコンもこんな感じになるといいなあと思いました。そういえばキーボードには、くるくる丸めることができるハンドロールピアノもありました。
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ちなみに「morph」というネーミングの語源は「モーフィング(morphing)」ではないかと思います。Wikipediaから解説を引用します。
モーフィング(morphing)は映画やアニメーションの中で使用されるSFXのひとつで、コンピュータ・グラフィックスの手法のひとつ。ある物体から別の物体へと自然に変形する映像をみせる。これはオーバーラップを使った映像のすり替えとは異なり、変形していく間の映像をコンピュータによって補完して作成する。変身・変化を意味する単語「メタモルフォルシス(metamorphosis)」の中間部分から命名されたという説と、move(移動)+morphology(形態) の合成語であるとする説がある。
というわけで、YouTubeで探したモーフィングの映像を。映画女優のモーフィングです。アンジェリーナ・ジョリーの顔がいろいろと変化していきます。キーラ・ナイトレイは「シルク」にも出ていますがいいですね。
■Famous Faces Morphing
ちょっと気持ち悪いような気もします(苦笑)。一方でWikipediaの解説で興味深かったのが、最後の次の解説です。
音響面でも援用され、その場合はクロスシンセシスと呼ばれる技術が用いられる。ある楽器の特徴を持つ音色から別の音色へ、音響スペクトルの滑らかな推移を伴う連続した音響をコンピュータによって合成する。このような音響技術の研究機関のひとつとしてIRCAMが有名。
実際の音をテクスチャーとして音から音へのモーフィングができるということでしょうか。たとえば、アタックはバイオリンだけど次第に減衰していくとピアノの音になっていくとか?うーむ。検索してみたのですが非常に難しい技術的なトピックが多くて理解できません(涙)。音声ファイルをクロスフェードすれば同じようなことができそうですが、それじゃダメなんでしょうね。周波数などが滑らかに変わっていかないとモーフィングとはいえないのかも。
考えてみると、ガジェットも多機能化するようになって、きっちりとした機能の境界がなくなっているような気がしました。携帯電話でありながら音楽プレイヤー・・・のように、機能にグラデーションがかかっている、というかモーフィングによってどちらにもなるような小物が増えています。機械らしい機械というかボリュームがごてごて付いているものも嫌いではないのですが(というか好きだったりするのだけれど。オーディオ系は特に)、機能の切り替えに弾力性があり滑らかになると、より人間的に使いやすくなるのではないかと思いました。
人間もそうかもしれないですね。がちがちのアタマの固さではなく、さらに柔軟すぎるお調子者でもなく、ときには真面目また別のときには軽めと、TPOに合わせてモーフィングして自分自身の形態(というかキャラクター)を変えることができれば社会にフィットできるような気がします。
まあ、大人になるということは、そんな風に妥協したりご都合主義で長いものに巻かれたりすることもあるのですが。
投稿者 birdwing : 2008年3月 6日 00:00
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