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2008年5月26日
教養のあるひとになりたい、Part‐1。
つづけざまに本を読了しつつあるのですが、日曜日にこれ。
思考するカンパニー―欲望の大量生産から利他的モデルへ 熊野 英介 幻冬舎メディアコンサルティング 2008-02 by G-Tools |
そして月曜日にこれを読了。
知識だけあるバカになるな! 仲正 昌樹 大和書房 2008-02-09 by G-Tools |
どちらも非常に幅広い分野について触れている本であり、視野を広げてくれる感じがしました。
まず、「思考するカンパニー」ですが、これは環境コンサルティングなどの事業を展開しているアミタ株式会社の代表取締役である熊野英介さんが書かれた本です。非常に共感しました。しかしながら、うーむ、と考えてしまうところもあった、と正直に記しておきます。どこか宗教的な気もする。
歴史から生物学から哲学まで、さまざまな文化を横断する論点は確かにスリリングな感じもするのだけれど、どこかもう少し知識を深めてから判断したい気持ちもあります。批判的ではないのですが、よい/悪いという判断で語れない内容といえます。
メディア論のようなものも考えたいので、あえて裏側的なことを語ってしまうと、たぶんこの本は幻冬舎のカスタム出版ではないかと思います。
これは何かと言うと、企業が制作費用を出して主として企業のイメージアップや製品の啓蒙のために作る、いわゆる企業の自費出版のようなものです。つまり、一般的に書籍の企画を立てたとしても、出版社としては売れなければその企画は通りません。しかし、お金を出すなら別です。そうして企業が制作費を出して、まるでパンフレットのようにPRのために本を作る。この本もそういう作られ方をしたのではないか、と推測しています。
しかしですね、その内容が優れていれば、若者を引き寄せるリクルートツールにもなれば、社会的な価値を生み、取引を拡大するための営業ツールにもなると思う。ぼくは、お金にものを言わせて本を作ることが悪いとは思わないし、結局のところ、しょうもない本は読者に見破られるだけのことであり、自然に淘汰されていく。サイトで問い合わせをくれたひとに無料配布するとか、セミナーに来てくれたひとにノベルティといっしょに配るとか、そんな使い方もあるわけで、それは企業の姿勢によるものだと考えます。
という周辺を踏まえた上で、ぼくは熊野さんの利他的モデル、性弱説という考え方に共感しました。競争社会のなかで強いものだけが生き残る、いわゆる西洋的な強者/弱者の勝ち負けを基準とした考え方ではなく、弱いものだからこそ進化できるという発想に魅力を感じます。また、現代において孤独が病となっていることに着目して、自分のためではなく誰かのために何かをすること、利他的な思考を個人だけでなく企業レベルで追及していく、ということには、なんとなくあたたかいものを感じました。
ただ・・・やはりそれが企業になったときどうなのか、ということがぼくには何とも言えない。農業と工業の次に来ると書かれている「心産業」、「フィロカルチャー(Philoculture)」あるいは「マインダストリー(Mindustry)」というコンセプトも興味深いのだけれど、この本のなかから具体的な施策がみえてくるかというと、ぼくにはいまひとつみえませんでした。
といっても気になるので、環境ビジネス関連は今後も継続してウォッチしていきたいと考えています。グリーンITなども注目されていますが、企業の環境への取り組みは、これからより活発になってくるような気もするので。
それにしても、この本のなかに熊野さんが詰め込んださまざまな知識や日本をみつめるまなざしには、思わず唸るものがありました。教養があるというのは、こういうことなのかもしれないな、という印象を受けました。しかしながら、ほんとうの教養とは何か、ということを深く考えさせられたのは、次の「知識だけあるバカになるな!」かもしれません。この内容についてはまたいつか。
投稿者 birdwing : 2008年5月26日 23:14
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