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2008年7月23日

音の愉しみ。

フィールドレコーディングに興味があります。ひとむかし前の言葉でいうと生録(ナマロク)ですね。ソニーにデンスケという名機があったのですが、少年のぼくはその録音機材が欲しくてたまりませんでした。しかしながら、入門機であっても確か5万円~10万円ぐらいしたデンスケは、少年のぼくには手が届かない憧れの機械であり、カタログをぼろぼろになるまで読んで想像を膨らませて愉しむしか方法はなかったことを切なく覚えています。ちなみに、メディアは何かというとカセットテープです。当然アナログの録音になります。

「珈琲時光」という映画で、浅野忠信さんが電車の音を録音することが趣味の青年を演じていました。映画自体は小津安二郎へのオマージュということで淡々としていて、あまり面白いものではありませんでした。けれども、黙々と電車の音を録りつづける姿が印象に残っています。YouTubeからその映像を。

■珈琲時光

かつてぼくは趣味でバンドをやっていたこともありましたが、楽器を弾くのが下手なので、いまはすっかり楽器を弾くことをやめて部屋に引き篭もってパソコンで曲を作っています。その制作方法が気に入っているのですが、いずれは外で録音した音を切り貼りして作品を制作するような、そんなスタイルに変えていきたいと思っています。

オンガクをはじめたきっかけや続けるモチベーションは、ひとそれぞれだと思いますが、憧れのアーティストのフレーズをコピーして弾くとか、楽器で目立って女の子にもてたいとか、そんな衝動がメインではないでしょうか。否定しないのですが、むしろぼくは作品ができればよかった。表現の手段として音楽があり、文章で代替されるのであれば小説や詩を書くことでもよかったわけです。

だから、ビートルズがライブ主体からレコーディング主体に変わっていき、その過程で逆回転や多重録音にはまっていった経緯はものすごくわかるし、そんな彼等の活動に興奮しました。音のコラージュ的な要素が強いホワイトアルバムは、ぼくにとっては衝撃的な存在でした。まあ少年のぼくには、正直なところよくわかりませんでしたが。

音といえば、面白いニュースをみました。7月31日まで、表参道ヒルズに期間限定でオトキノコというショップが開かれているとのこと。「「オトキノコ」が表参道に期間限定店」という産経ニュースでも読むことができますが、PRONWEB Watchでは店内の楽しい写真もみることができます。

■ウゴウゴルーガの世界が表参道ヒルズに突如出現!?
http://www.pronweb.tv/newsdigest/080711_otokinoko.html

藤原和通さんによるお店のようですね。以下、引用。

そのショップの名前は「オトキノコ」。1992年にフジテレビ系で放映され、サブカルチャーの情報発信源となった伝説的子供番組『ウゴウゴルーガ』にて「おとのはくぶつかん」を担当した藤原和通さんが店長を務める、音に触れられるショップなのだ。

音に触れられる、体感できるポータブル・ハンドフォン・プレーヤーもあるようです。ヒーリングの施設などでボディソニックのような振動で音を感じられる機械がありますが、そんな機能でしょうか。「ダヨン」というらしい。

ダヨンは微かな音から大きな音、低い音から高い音まで身の回りに溢れる様々な音を触ることができる“音のコミュニケーター”とのこと。当たり前のように聞いている音も、直接指で触れることで立体感を楽しむ事ができる…… のだが、こればっかりは実際に体験しないと面白さは分からない。

いろいろな音も売られているようです。なかにはムシの交尾音もあるらしい(笑)なんだろう、それ。

“キノコが胞子をまく瞬間の音”や“虫が必死で交尾をする音”などもあり、恐らく他では手に入らないであろうラインナップが魅力だ。
読者の中には「虫の交尾の音なんて興味が無い」と思われるかもしれないが、これが虫の必死加減がリアルに伝わってくるもので、そんなに必死にならなくてもと思わず笑ってしまいそうになる。一度聞いたら病み付きになってしまうが、残念ながらこれも実際に体験しないと分からない面白さなのだ。

わはは。ムシが、あはん、うふん、交尾している音なのでしょうか。ムシにとってはお恥ずかしいことかもしれないけれど好奇心がそそられます。そんな音を録音するのもどうかと思いますけれどね(苦笑)。ちょっと思い出したのが、大江健三郎さんの「取り替え子(チェンジリング)」です。ひとが愛を営む音を記録した膨大なカセットテープを主人公が電車のなかで聴くシーンがあったかと思います。

どんな音だろうと気になっていたのですが、検索してサイトを発見。サンプルを聴くことができました。マメコガネの交尾の音が聴けます(照)。なんか、ドリルで、がががががと穿っているような音ですね。まあ実際に穿っているのだろうと思いますが、確かに必死だ。シロサイのおならとか、ジャングルの早朝の音などもある。臨場感があって、楽しい。以下のサイトになります。

■オトキノコ
http://www.otokinoko.com/

080723_otokinoko.jpg

ダヨンの機械もみることができます。「音の40%は振動で聞いてる」らしい。知らなかった。

オンガクは音を楽しむと書きますが、曲を聴くことはもちろん、まだまだぼくの知らない音の愉しみ方がありそうです。

投稿者 birdwing : 2008年7月23日 23:50

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