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2008年8月17日
広告とカリスマと感情と。
残暑がどこまでつづくのか途方に暮れていたのですが、東京はいきなり涼しくなりました。雨も降ってクーラーが要らないほど涼しい。過ごしやすくなったので夏の読書として、新書を同時進行で3冊読み進めています。
まず、佐藤尚之さんの「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」。現在、P.108を読書中。
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) (アスキー新書 45) 佐藤 尚之 アスキー 2008-01-10 by G-Tools |
佐藤尚之さんは、ネットの可能性をいちはやくキャッチして自分でサイトを立ち上げ、コミュニケーション・デザインの領域で仕事を展開された方です。ネットによって変わっていくメディアや広告の在り方について、非常にわかりやすく解説されています。
書かれていることの多くは、ぼくにはあまり目新しいものはなかったのだけれど、入門書として学生などの読者も想定しているからだと思います。その意味では、広告業界をめざす就活の学生さんは読んでおいてもよい一冊ではないでしょうか。たとえば、広告をラブレターに喩え、送り手の気持ちだけではなく受け手である消費者の気持ちを理解することが大事であること、しかもブログなどの登場によって現在ではラブレター(=広告)が届きにくくなっている時代であるという指摘などは非常にうまい。専門用語で簡単なことを難しく語るよりも、ストレートに理解できます。
佐藤さんの文章を読みながら感じたのは、これはブログの文体だな、ということでした。完全な書き言葉ではなくて、ところどころ口語のような表現になっています。ついでに、文末に「(苦笑)」なども挿入されている。それが受け入れられるかどうか、というのは実際のところ書き手にもよるのですが(肌が合わないブロガー系の作者もいます)、ぼくはこの表現が佐藤さんの文章には合っていると感じました。ブログ文化による日本語の乱れだ、などと眉をひそめるおじさんもいそうですが、いいんじゃないでしょうか。若々しいイメージもあり好感がもてました。
つづいて、iPhone3Gによってセンセーションを起こしていますが、カリスマCEOについてまとめた「スティーブ・ジョブズ 神の交渉力」。現在、P.31を読書中。
スティーブ・ジョブズ神の交渉力―この「やり口」には逆らえない! (リュウ・ブックスアステ新書 48) 竹内 一正 経済界 2008-05 by G-Tools |
相当に嫌われ者だったようですね。この本に関しては演出過剰な印象もあるのですが、読み物としては面白いと思いました(全面的にこの内容を信じるのはどうかとも思いますが)。iPodにしてもiPhone3Gにしても、画期的なプロダクトであることはもちろん、製品を生み出した企業の文化であるとか、カリスマ的な経営者の存在も無視できません。経営者個人が広告以上に広告になる場合もあり、何が人を惹きつけるのか、リーダーシップとは何なのか、ということを堅苦しく考えずに読める本だと思います。
そして最後は、和田秀樹さんの「感情暴走社会 -「心のムラ」と上手につきあう」です。現在、P.98を読書中。
感情暴走社会-「心のムラ」と上手につきあう (祥伝社新書120) (祥伝社新書 120) 和田 秀樹 祥伝社 2008-07-25 by G-Tools |
いかにも売れるために付けられた感情を煽るタイトルに若干引きました(苦笑)。書かれている内容についても慎重に吟味が必要だとは思うのですが、なるほど、と思うことも多くあります。秋葉原の殺傷事件を筆頭にして感情をコントロールすることが重要な時代であることを指摘し、精神医学や心理学から、その制御方法のヒントを解説されています。
実は一冊目の佐藤尚之さんの本と重なるのですが、現代では顧客至上主義あるいは消費者に購買の主導権が移ってきています。2006年の「TIME」誌のパーソン・オブ・ジ・イヤーでは「YOU」つまり消費者である「あなた」が選ばれたということが書かれていました。そして、製品開発のなかにも顧客の意見が組み込まれることが多い。顧客好みのプロダクトやサービスが重要であるとされています。
顧客至上主義は重要なことですが、社会全体として進展すると、サービス業などでは過剰にお客様の顔色をうかがうような対応も生まれます。行き届いたサービスが普通であると認識され、少しでも落ち度があると、なんだこのサービスは!とクレーム化する。企業の顧客対応のセクションは、ぴりぴりと緊迫した状態に置かれるわけです。
最近、公務員や教員の不正事件も多いのですが、サービス業化して、お客さま(教師の場合は、生徒や父兄)の顔色をうかがう必要性が高まったところに、問題があるのではないかとも考えられます。
企業として顧客対応でストレスを抱える社員も、会社から離れたらひとりの消費者です。そして、今度は立場が変わり、サービス提供側から顧客になります。業務で抱えたストレスを顧客として別の場所で発散する。そんな顧客至上主義の社会が悪循環を生んでいるという解釈を読んで、なるほどなあと思いました。
ところで、感情コントロールの方法ですが、感情そのものは制御できないのですが、行動で制御する、ということが(当たり前のようですが)とても実践的です。
不安について思考内で解決しようとしても考えつづけている限り感情は解消されないので、行動によって感情への集中化を避けるということです。たとえば、机の上を片付けてしまうとか、そんなことが実は感情のコントロールには効くらしい。でもまあ・・・あえて読まなくても、わかっていたことではありますけどね。
しかし、その感情的であるという欠点を戦略的に活用してカリスマになったのがスティーブ・ジョブズであり、マスコミ嫌いのため、取材で一問の質問に答えただけで腹を立てて立ち去ったこともあったとか。薬物中毒のロック歌手の方がまし・・・と語る記者もいたようです。感情も使い方によっては、最上の武器となる。
と、無理やりいま読んでいる3冊をつなげた印象もありますが、つまみ読みをしていると横断的に重なってくる内容があって、それが思考をスクランブルしてくれます。とても楽しい。1冊をじっくり読むのも大事ですが、全然関係のない本が関わりあってみえる偶然にわくわくします。
しばらく思考系のブログから遠ざかっていました。けれども社会現象を含めて、さまざまなことを考察していきたいと考えています。夏から秋に向けて。
投稿者 birdwing : 2008年8月17日 22:29
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