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2009年1月 4日
マイ・ブルーベリー・ナイツ
▼cinema09-01:遠まわりの恋、色彩美の味わい。
マイ・ブルーベリー・ナイツ スペシャル・エディション [DVD] ノラ・ジョーンズ, ジュード・ロウ, デヴィッド・ストラザーン, レイチェル・ワイズ, ウォン・カーウァイ 角川エンタテインメント 2008-09-12 by G-Tools |
ウォン・カーウァイ監督の映画といえば、色彩美という印象があります。それも淡い色彩ではなく、どちらかというと赤と黒、蛍光色のグリーンのような、けばけばしい淫靡で官能的ないろあいです。雨の夜のネオンという感じ。そのイメージで思い出したのは、スティーリー・ダンの「Aja」というアルバムのジャケットでした。山口小夜子さんがまとっている布の彩りのような印象でしょうか。
ぼくがいままでウォン・カーウァイ監督の作品で観た作品は、金城武さんが出演している「恋する惑星」、「花様年華」、「2046」(木村拓哉さんが出ていた)といったところですが、「花様年華」の暗くしっとりとした大人の映像にやられました。トニー・レオンかっこよすぎる。抑制された大人の愛を描いた映画ですが、夜のしじまにタバコの煙とかくゆらせてみたくなりますね、あの映画を観ると。
という意味では色彩を含めて、大人(そして大人の愛)を描くのがうまい監督といえるかもしれません。この「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は、監督初の英語による映画とのこと。アジアの俳優ではないと、どこか湿り気がなくなって乾いた感じになるのは否めませんが、それでも色彩美は健在でした。とはいえ、スローモーションの多用と、ブルーベリーパイにアイスが溶けていくアップの映像はどうかな、と思いましたが。
そもそもこの映画に注目したのは、エリザベス(ノラ・ジョーンズ)とジェレミー(ジュード・ロウ)が、くちびるを触れるか触れないか接近させたまま眠っているようにみえるサントラ盤のジャケットでした。CDショップをうろうろしながら、フリーペーパーの表紙に掲載されていたのをみつけて、この映画のことを知ったのだった。
このショット自体がくらくらするほど官能的です。もちろん映画のなかにも出てくるのですが、ぼくは静止画のほうがよかったかな。まるで中国の陰陽マークのようだと感じたのですが、そういう意味ではアジア的な構図かもしれません。監督が意図したかどうかはともかく。
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」の物語は、付き合っていた彼氏に新しい女性ができて失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)がジェレミー(ジュード・ロウ)の喫茶店に現れるところからはじまります。鍵にちなんだ名前のその店では、何人ものお客が鍵を預かってもらっている。そして、エリザベスも恋人の部屋の合鍵をジェレミーに預かってもらう。
失恋の痛みに行き場所をなくした彼女に、ジェレミーは何も言わずにつきあってあげて、残り物のブルーベリーパイを食べさせます。やがてエリザベスは何度か店を訪れるようになり、ふたりは親しくなるのですが、ある日、彼女はふいに姿を消す。そして、遠い場所で昼夜ふたつのバイトをしてクルマを買うために働きはじめます。けれどもジェレミーとは手紙をやりとりして、いろいろな話をします。付き合っていた彼のことを忘れるためには、失恋の痛手を癒すためには、遠い場所で働く「遠まわり」が必要だった。
その遠まわりの旅で、エリザベスはさまざまなひとと出会うのですが、妻に浮気されて、それでも愛しつづけていてぼろぼろな警察官の話は辛かった。愛情が強すぎるあまりに妻を縛りつけてしまい、妻から愛想を付かされてしまう。束縛しようとする彼から逃げ出そうとしたわけです。しかし、お互いに辛い状態になりつつも、それでも別れられない。愛しているはずなのに傷つけあうことしかできない。その関係の対極として、エンレン(遠距離恋愛)とでもいうべき、エリザベスとジェレミーの関係があるような印象を受けました。
ギャンブル好きな女性と出会うところからは、どこかロードムービー風になっていくのですが、アメリカのひとたちはこういう物語が好きですね。広大な土地のせいかもしれないけれど、誰かと出会ってクルマをかっとばす、あるいはドライブしながら自分の人生についてみつめる(「エリザベスタウン」という映画もそんな感じ)という展開が好まれる。ちょっとステレオタイプな気もするけれど、型にはまった気持ちよさがあります。
しっかし、ジュード・ロウもまたいい男だ。どこかおバカタレントとして名をあげた「羞恥心」のメンバーっぽい雰囲気も感じたりしたのですが、きっと逆でしょうね。日本のタレントが彼等の真似をしたんではないだろうか。
何がいい男かというと、もちろん見た目もあるけれど、この映画のなかでは、失恋して心を痛めているエリザベスに何もいわないこと、甘いものを食べさせてあげること。ぼくは我慢ができずに、つい何か言ってしまいそうな気がします(苦笑)。余計な慰めとか、解決方法の提案とか、女性はそんなものを聞きたいわけではないですよね。黙ってそばにいてほしいのだと思う。辛いときには。
ジェレミー(ジュード・ロウ)みたいになりたいと思いました。反省。いや、ここは反省するところではないか・・・。音楽好きとしては、この映画に挿入されたノラ・ジョーンズの歌声も素敵です(1月6日鑑賞)。
■YouTubeからトレイラー
■公式サイト
http://blueberry-movie.com/
投稿者 birdwing : 2009年1月 4日 23:59
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