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2009年2月11日

アメリカン・ギャングスター

▼cinema09-05:ビジネス感覚のギャング、信念を貫くふたり。

B0019R0XICアメリカン・ギャングスター [DVD]
デンゼル・ワシントン, ラッセル・クロウ, キウェテル・イジョフォー, キューバ・グッディングJr, リドリー・スコット
ジェネオン エンタテインメント 2008-08-27

by G-Tools

ときどきギャングあるいはマフィアの映画を観たくなります。ゴッド・ファーザーがいちばん有名かもしれないのですが、セピア色の風景、イタリア製のスーツで身を包んで帽子を目深に被った様相、蒸気の噴出している冬の路上、倉庫のなかの薄暗い光景など、そんなシーンに憧憬がある。掟をやぶった人間や使えない部下を冷淡に処理する非情なギャングに触れたくなることがあります。

「アメリカン・ギャングスター」は、1970年代のアメリカ、パンピーという名のボスのもとで働いていたフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)が、彼の死後、パンピー流のギャング哲学で麻薬をさばいて成り上がっていく過程と、その悪に立ち向かうリッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)との対決を描いた物語です。フランク・ルーカスは実在した人物だとか。

まず思ったのは、麻薬という商材だから違法だけれど、フランク・ルーカスはビジネスとしての才能に優れているということでした。水で薄められて純度の低い麻薬を扱うのではなく、仲介者を通さずに直接ベトナムの農場と交渉して、純度100%の麻薬を密輸する契約を結びます。商社マンとしての才能がある。さらにそれを現地にいる兵士に管理させ、軍の飛行機でアメリカに運ぶ。そうして、ブルーマジックというブランドのもとに、純度の低い麻薬の半値で売りさばきます。

仕入れから流通まで、そしてブランディングから価格戦略まで、見事にマーケティングがされている。違法の商材ではなければ、ビジネスで成功していたはずです。しかしながら、ベトナム戦争下の混乱という社会の文脈があったからこそ、成立したビジネスかもしれません。

彼はきちんと日曜日には教会に通い、田舎からファミリーを召集していっしょに暮らします。ギャングとしての規律と、決して奢らない生活を、黒人でありながら実現していくわけです。そうして、警官さえも巻き込んだ大きな流れを作り出す。警官に賄賂を贈るのは当然だとして、張り込みをしている警察官に高価なシャンパンを贈ったりする。悪人とはいえども、かっこいい。

一方で、リッチー・ロバーツは操作中に麻薬に関する100万ドルを発見するのだけれど、それを着服せずに持ち帰る。汚職にまみれたポリスのなかでは、彼の行動は浮いてしまい、鼻つまみものとなります。けれども仕事がなくなった彼に、自分でチームを編成していいから麻薬撲滅に努めてくれという話を引き受ける。正義感に揺らぎがありません。こちらもかっこいい。

善悪という二項対立の図式でみることは容易いのですが、実は信念を守るという意味でフランク・ルーカスもリッチー・ロバーツも類似する。結末に向けての流れがよかった。

信念や信条のある人間はやはり強い。そうして守る場所や領域は違ったとしても、寡黙でありながら結果を出すひとたちの生き様に打たれました。監督はリドリー・スコット。派手さはありませんが、しっくりと落ち着いた映像がよかった(2月8日観賞)。

■YouTubeからトレイラー(日本版)

投稿者 birdwing : 2009年2月11日 18:42

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