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2008年2月 9日

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Babamars / Surprising Twists

▼Music08-002:ときにはエレクトロで軽めのポップスを。

Surprising Twists!Surprising Twists!
ババマール


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01.Beautiful Sunday
02.Younger
03.We'got To Make It Tonight
04.Move On
05.Painkiller
06.Surfin Nagoya
07.Freeze
08.X-Change
09.B.A.B.A.M.A.R.S.
10.The Core
11.Polaroid
12.You've Got It All

+Move On (Music Video)

基本的にポップス大好きです。もちろんJAZZやロックもいいけど、なんとなくチープなポップスを聴きたくなるときがあります。たとえば、よく晴れた休日の午前中とか。

そんなときに想定する楽曲というと、個人的なイメージですが、ノーランズとかストロベリー・スイッチブレイドという感じでしょうか。くらくらするようなキャッチーなメロディとハーモニー、さりげなくシンセがノコギリ波や矩形波のまんまで入っているといい(サンプリングではなくて)。ついでにポルタメントとか効いていたりして。

同様に、アコギをじゃかじゃか掻き鳴らしたり、ファンク系のワウでしゃかぽこした音なんかもうれしい。フリッパーズ・ギターなども休日の午前系アーティストだと思うのですが(どーいうジャンルの括りでしょうか)、あんまり聴きつづけるとこっぱずかしくなるけれど、ときにはCDラックの片隅から引っ張り出して聴くと、青春を思い出させてくれる感じがしていい。

ババマールは、フランスのバンドです。店頭でサーフ・エレクトロ・ポップのようなコピーとともに、Tahiti80の好きなひとに、のようなおすすめが書かれていたので購入。試聴してみて、思わずにやりでした。サーフ・ロックというのはどうかと思うけれど、確かにギター・ポップにエレクトロニカ要素を加えたような感じで、Tahiti80の1枚目に似てますね。ネオアコ的な要素もある。ただ、迷ったなあ購入するのは。そんなに何度も聴きそうなアルバムではないんですよね。一発屋的なところがるので、なんとなく(苦笑)。

1stアルバムは一部の音楽業界およびフレンチ・オタクにヒットしたらしいのですが、これはそのアルバムに未発表音源を加えた日本の企画盤であり、日本の正式デビューとのこと。シンセとヴォーカル担当のGesa Hanseは名古屋に4ヶ月の滞在していた経験があるらしく、そんなわけで「Surfin Nagoya」という楽曲もあります。空耳でナゴヤって聴こえるなあ、と思ったら、ほんとうに名古屋だったので困惑(苦笑)。グループのグラフィック担当で、ジャケットやWebサイトのデザインも彼がやっているらしい。Yoshi Masudaというひとも日仏ハーフらしいので、とても日本向けな感じがします。

楽曲で面白いなーと思ったのは、やはり全体的に漂うチープなポップスの印象なのですが、ギターをサンプリングしているところも惹かれました。5曲目の「Painkiller」、10曲目「The Core」のイントロなど。宅録でDTMをやっている自分としては、ライナーノーツの以下の機材解説も興味深く読みました。以下、引用します。

録音にはバーチャルシンセを中心に使用しているが、ライブ・パフォーマンスではサンプラー、カオスパッド(エフェクター)、アナログ・シンセを使用しているという。ドラム・マシンとのドンカマ(リズム・ガイドに合わせて演奏する)というオールドスクールな手法も活用しているのも興味深い。

うーむ。カオスパッド使っているんだ。アナログなところがよいですね。

好みの曲としては、ネオアコテイストの1曲目、アコギのカッティングから入る2曲目などはいい感じ。5曲目の「Painkiller」のイントロでベースラインが降りていくところなどは、ポップス魂をくすぐります。6曲目「Surfin Nagoya」はもろにビーチボーイズ的であり、ストロベリー・スイッチブレイド的な懐かしいような切ないような、きらきら感もありました。どんったたんどん、というドラムの定番フィルもうれしい。そして、12曲目「You've Got It All」はブラスなどの音に癒されます。ゆったりと聴ける。

洗練さとアヤシサが同居する感じで、やはり親日派のアーティストであるせいか、どこか聴いていて馴染みやすい。今後にちょっと期待。

+++++

モノクロの映像による「The Core」 。あやしい。でも、なんだか甘酸っぱい。

■Babamars - The Core (Surprising Twists)

なんちゅうかっこうで歌ってるんだ、と思ったら最後には上半身脱いでしまう映像。ちょっと素敵(照)。このセクシーな感じがフランス的という気がしました。チアリーダーの方が・・・Yoshi Masudaさん? えーと、メンバーですかね。

■Babamars en el festival pura vida 22sept07

■my space
http://www.myspace.com/babamarssurprisingtwists

投稿者: birdwing 日時: 11:20 | | トラックバック (0)

2008年1月18日

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Lars Jansson Trio / hope

▼Music08-001:希望を感じさせる流麗な音、なめらかな旋律。

HopeHope
ラーシュ・ヤンソン・トリオ


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01. How deep is the ocean
02. The tree
03. Hope
04. Live, be where you are
05. Why was I left under the sky
06. Living under the road to paradise
07. Summer rain
08. A little blues for you
09. A blissful smile
10. In peaceful sleep

手のひらが描かれたあたたかみのあるジャケット。そして残響音のなかで響くやわらかいピアノの旋律。ラーシュ・ヤンソン・トリオの「HOPE」を聴いたところ、なんだか懐かしい気持ちになりました。

ぼくはジャズにあまり詳しくありません。はじめて買ったジャズのアルバムは?といえば大学生のとき、渋谷のレコード屋で友人から勧められたビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビイ」だったと記憶しています。輸入版であり、しかもLPレコードだったかな。鎌倉に住んでいて、いっしょにサークルでミニコミを作っていた非常に知的な友人からおすすめされました。いまは彼も一児の父となって仕事に子育てに奮闘しているとのこと。

「ワルツ・フォー・デビイ」に関しては「きみに合ってるよ、これ聴きなよ」と買わされた感があったのですが、騙されて買ってみたところ、ほんとに自分にぴったりだったのでびっくりしました。何よりピアノトリオのゆるい空気感がいい。グラスの音や談笑する声などが入っているライブ演奏にも想像が膨らんで、しばらくは毎日このレコードに浸っていましたものです。朝に聴いて和み書店のバイトから帰ってきてまた聴いて癒される・・・そんなワルツ・フォー・デビイな日々が、かつてありましたっけ(遠い目)。

去年の11月、久し振りに購入したジャズのアルバムがラーシュ・ヤンソン・トリオの「HOPE」。ネットで親しい方からおすすめされたピアノトリオです。厳密にいうと、おすすめされたというよりも「聴いている」ということを知って、勝手にアンテナをぴこんと立ててしまった感じがある。

一度はCD売り場に行ったところ、アーティストの名前を失念してしまって断念。次にはメモって買いに行ったのですが、探していた「Witnessing」は見つからず、これでいいやという感じで試聴もせずに買ったのが「HOPE」でした。ただ、買ってよかったと思っています。とてもやさしくて、ちょっとだけ豊かな気持ちにもなれる。

ラーシュ・ヤンソンは北欧スウェーデンのピアニストで、このアルバムは通算9枚目、1993年の録音とのこと。「HOPE」というタイトルはギリシア神話のパンドラの箱が出典だそうで、「パンドラが箱を開けた途端、あらゆる災いが飛び出したけど、希望だけは残された。大切なのは心をリフレッシュして、望みを持つことさ」というヤンソンの言葉が記されています。

確かにアルバム全体を通して、希望に溢れているといえる。ピアノの響きものびのびとしていて、滑らかな印象です。アルバムタイトル曲である「HOPE」は馴染みやすいメロディで、すっと心に入ってきます。途中ベース(ラーシュ・ダニエルソン)のハーモニクスもきれい。続く4曲目「Live,be where you are」も軽快に弾んだリズムが楽しい。一瞬翳りのあるコード進行も好みで、このアルバムのなかでは好きな曲のひとつ。そして、ちょっとだけテンポがゆっくりめの「Why was I left under the sky」も好きな曲です。

いろいろな音楽があってよいと思うのですが、音楽はときに元気を与えてくれる。最近では、クラブジャズのような踊れるジャズも出てきているようだけれど、別にアップテンポではなくても高揚させてくれる曲もあります。辛さがあるからこそ一筋の光のような希望が輝いてみえるわけで、心に希望を抱いていたいものだなあ、と思わせる一枚でした。その後、すぐに「Witnessing」を購入。こちらも気に入っています。

■日本語オフィシャルサイト
http://www.lars.jp/

■こちらで「HOPE」の試聴ができます(Real Player)
http://www.lars.jp/cd-hope.html

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2007年10月23日

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the guitar plus me / zoo

▼music07-045:ひそやかなギターの調べとユーモラスな歌詞。バロック風でもある。

ZOO
the guitar plus me
ZOO
曲名リスト
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01.moonlight
02.circus
03.penguin
04.jellyfish
05.echo
06.zookeeper's waltz
07.pacman + piranhas
08.bills hills breakdown
09.evollution
10.(inside or outside of) cage

タマス・ウェルズのコンサートに行ったときに、彼の前に演奏していたのがthe guitar plus meことシオザワヨウイチさんでした。

ひとりぼっちのギター弾き語りでしたが、スキャット風に口真似で「ちきしゃかつくしゃか...」のようなシンセを表現していたところが面白いと思ったのですが、アルバムを聴いてみたらきちんと打ち込みのシンセが入っていた(笑)。なんとなくライブで口シンセをやってしまう純朴さが彼のよさのように感じました。誠実で、ほんわかあったかくて、ユーモラス。すべての曲が英語の歌詞です。かなり好みのストライクゾーンです。

雰囲気的には、勝手な印象ですがリトル・クリーチャーズをもっと軽くした感じでしょうか。彼等はどちらかというとソウルとかグルーヴのある感じですが、キラキラ感のあるかわいらしいフォーク調のギターにした印象。そのあたりが若干物足りなくもあるのだけれども、しかしながらthe guitar plus meの個性のようにも思いました。

なんとなくぼくの心に響くタイトルの曲が多かったのですが、あらためて歌詞を見直してもいいなあと頷けます。たとえば、アルバムの1曲目は「moonlight(月光)」で、月の光を冒頭に置くことから既にぼくの好み!なのですが、次のような歌詞からはじまります。iが小文字なのは、歌詞カードのまま。

i missed a rapid train but i don't care at all
i'm listening to the song again so i wanna go slow

快速電車に乗り損ねた、でも全然構わないさ
僕はその曲をまた聴いている、だからゆっくり行きたいのさ

この、ゆるゆる感(笑)。けれどもそこはかとなく漂う切なさ。いいですねえ(しみじみ)。ライブでも演奏されていた、3曲目「penguine(ペンギン)」は次のような歌詞です。

i'm penguine
i have wings
i can't fly
i hate the sky
i blame it on this rain
i blame it on weather

僕はペンギン、翼がある
僕はペンギン、空は嫌い
僕はこの雨のせいにする、天気のせいにする

ペンギン的なひとっていますよね。翼はあるのだけれど飛べない。そして飛べないことを何かのせいにする。この歌詞の最後のほうでは、「特攻野郎Aチームの助けが必要なんだ」とか「BAバラカス(通称コング)の食べ物には、睡眠薬が含まれている/そして、君らは僕を飛ばせてくれる!」などという、なんだかあやしい話になっていきますが、こんな比喩的な表現も楽しい。楽曲的にはマイナーコードとメジャーコードがくるくると入れ替わる曲の展開も、もろに好みでした。シンプルなソロと、何気ないハーモニクスも凝ってます。

ぴこぴこしたシンセの音からはじまる「jellyfish(ジェリーフィッシュ)」もいい。ペンギンときて、くらげ(jellyfish)では水族館かなと思いますが、この詩の冒頭もおとぼけでよいです。

sister tooth built my apartment
it's made of trampoline & transparent

sister tooth が、僕のアパートを建築した
それはトランポリンで作られていて、透明なのである

透明なトランポリンのアパート、どんなんでしょ(笑)。でも語の響きとして、trampolineとtransparentが利いている。こういう洋楽的なアプローチが好きです。サビでマイナーコードになるところもよい。かなり古いのですが(2005年7月25日)、bounce.comのインタビューを読んで、なるほどと思いました。以下、引用します。

その歌詞の世界は、彼が敬愛するスティーリー・ダン(しかも70~80年代ではなく、近年の作品)の近未来的世界観や予測不可能な展開に通じるものがあり、過激なシニシズムとグローバリズム批判が混在する。

なるほどね。ドナルド・フェイゲン的なちょっとSFちっくな世界観を追い求めているんですね。いいかも。

リリカルなギターのアルペジオが透明感に溢れていて素敵なのですが、後半ではハープシコード的な音も加わってなんとなくバロック風になります。あまりにはまりすぎると、ぎゅわーんというハードな楽曲を聴きたくなってしまう少年魂が発動してしまうのですが(苦笑)、晴れた日曜日の午前中には、こんなしんみりと静かなギターの音を聴いていたい。

アルバムの流れとしては、ひそやかな1曲目「moonlight」から一転して打ち込みのバスドラムが利いた2曲目「circus」につながる感じが気持ちよかった。逆回転のシンバルの音や動物園的な効果音からはじまる「zookeeper's waltz」はワルツなだけに3拍子のインスト曲なのですが、ハープシコード風の鍵盤も入ってバロック風です。9曲目の「evollution」もハープシコード入りです。この曲はライブでちょっと大変そうでした。たぶん運指とかコード進行が凝っているので、難しい曲なのではないでしょうか。

こんな風にアコギが弾けるといいんだけどなあ。とりわけ凄いわけではないのだけれど、ほんわかと心を軽くしてくれる一枚です。

■オフィシャルブログ
http://blog.livedoor.jp/tgpm/

■my space jellyfishが試聴できます。
http://www.myspace.com/theguitarplusme

■PV
http://www.sound-tv.net/artists/theguitarplusme/

*年間音楽50枚プロジェクト(45/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:36 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年9月13日

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Amiina / Kurr

▼music07-044:はじまりも終わりもない御伽話のような北欧の響き。

KurrKurr
Amiina


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01. Sogg
02. Rugla
03. Glamur
04. Seoul
05. Lupina
06. Hilli
07. Sexfaldur
08. Kolapot
09. Saga
10. Lori
11. Blafeldur
12. Boga

オーガニックという形容詞が最近よく使われますが、北欧の音楽に最もふさわしい言葉であるような気がします。生音だけでなくシンセサイザーのようなエレクトロニカであっても、どういうわけか北欧のミュージシャンが作り出す音楽には自然な響きがある。

ジャケットの表紙で編み物をしている姿が印象的なアミーナは、シガー・ロスのストリングス・アレンジを担当していたとのこと。エッダ・ルーン・オウラブスドッティル、ヒルドゥル・アウサイルス・ドッティル、マリア・フルズ・マルカン・シグフースドッティル、ソウルン・スマルリダドッティル(はぁはぁ、北欧の人名ってどうなってるんでしょうか)という4人の女性編成です。北方の女性はなんとなく色白でふくよかで家庭的な感じがいいですね(ぽっ)。

同封されている解説によると、アイスランドには人口30万人にして音楽学校が90校以上も存在するらしい。どんな国なのでしょう。そんな音楽学校で出会った4人のようです。まずは弦楽四重奏として活動をスタートさせたようです。

最初に聴いたときは、たま(知っているひと少ないのでは。イカ天出身の変わったバンド)か?と思ってなんとなく戸惑いも感じたのですが、グロッケンやアコーディオン、弦楽器などが使われた御伽話のような音の響きが心地よく、彼女たちの歌声やハーモニーも透明感がある。聴いているうちに馴染んできました。なんとノコギリも楽器として使用していて、癒し系の音楽でありながら試みていることはかなり実験的です。

シガー・ロスの音楽自体がアルバム全体でつながっていたりして、はじまりもなく終わりもないような永遠の時間を感じさせる音楽なのですが、このアミーナの音も同じように時間という枠組みを超えている印象があります。同じフレーズを繰り返しながら変奏していくスタイルで、曲自体が終わってもアタマのなかで鳴り続けていたりする。

どの曲が好きだ、ということはなかなか言えないのですが、2曲目「Rugla」のギターの調べ、ストリングスのアレンジはかなり好み。6曲目「Hilli」のシガー・ロスっぽいハーモニー、同様にワルツなのですが7曲目「Sexfaldur」などはしんみりと聴けます。

気が付かないで購入したのですが、タイトルの「Kurr」はアイスランド語で鳥のさえずりを表現する言葉らしい。なんとなく鳥というハンドルを使っているぼくには偶然とはいえ、親近感の持てるものでした。

+++++

YouTubeから、アルバムにも入っている「Seoul」。テルミンかと思うのですが、ほんとうにノコギリを演奏していると、へぇーっと思いますね。それにしてもツアーなどで持ち歩くときに大変だなあ、とは思いますが。ノコギリをケースに入れて持ち歩いているんですかね(笑)

途中からベルをふたりで演奏している姿にも感動。なんだか楽しそうです。

■amiina - seoul

■公式サイト
http://www.everrecords.com/amiina/

■myspace
http://www.myspace.com/amiina

*年間音楽50枚プロジェクト(44/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:11 | | トラックバック (0)

2007年9月12日

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Tamas Wells / A Mark on the Pane

▼music07-043:神様が降りてくる少し前、静かな朝を待つ光の音色。

A Mark on the Pane
タマス・ウェルズ
A Mark on the Pane
曲名リスト
1. When We Do Fail Abigail
2. Broken By the Rise
3. Chandliers
4. Redueced to Clear
5. Petit Mal At a Grand Occasion
6. Even in the Crowds
7. Annalee Argyle
8. Segue in Gym
9. If You Bring Me Aubergines
10. A Dark Horse Will Either Run First or Last
11. Cigarettes, A Tie And A Free Magazine
12. Where The Koran Seems To Rhyme
13. The Necessary Ones
14. Reduced To Clear (EP version)
15. 41 Union Drive, Caroline Springs 3023
16. Even Through
17. Beauty Cream
18. Stitch In Time
19. Instrumental

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11-13 from 1st EP "cigarettes a tie and a free magazine"
14-19 from 2nd EP "stitch in time"


すばらしい作品に出会うと、奇跡のような表現があたかもふいにそこに現れたような驚きがあります。けれども創り手であるアーティストは、手品のように空中から作品を取り出したわけではありません。奇跡に出会うまで、こつこつと自分の信じているものを作りつづけた日々があり、陽が当たらなかったとしても培ってきた背景がある。決して脈絡もなくその世界が生まれたわけではない。

「A mark on the pane('04)」は再発されたTamas Wellsの1stです。2ndの誠実でひたむきな世界に打たれたぼくは、彼のコンサートの前日に慌ててこのアルバムの存在を知り、購入したのですが、ゆっくり聴く時間がありませんでした。そして、なんとなく2ndの「A Plea En Vendredi」ほどの研ぎ澄まされ方はないな、音も安定していてつまらないかも、などと思っていたのですが。

いやいや、そんなことはありませんでした。やっぱり、いい。
タマちゃん、最高(笑)。

静謐な、という言葉が似合いすぎる音は、1stではアコースティックギターだけでなくエレキギターにリバーブをかけたような音も使われていて、逆回転なども多用されています。実はそんな細かなアレンジは、「A Plea En Vendredi」の生音志向の音づくりよりもエレクトロニカ好きなぼくの好みだったりします。さりげないので、すーっと聴き逃してしまいそうですが、メロディも完璧なぐらいに美しい。

要するにですね、文章もそうなのですが美しく完成されすぎたものは、すーっと身体に入り込んでくるのではないか。ただ、ここがまたアートの面白いところですが、完成されすぎないもののほうが琴線に触れることがある。2ndを聴くと、かなりリズムに揺らぎがあるし、ちょっと雑なところもあるんですよね。でも、そこがじーんと心に染みたりする。1stの方が格段と丁寧に、計算されて作られているのですが、この作り方ではタマちゃんらしさが出ないのではないでしょうか。

ということを考えていて、彼のコンサートの風景が頭をよぎりました。そう、彼は500円ぐらいのおんぼろのギターを抱えてステージに現われたのでした。音もしっかり出ないようなギターだったんだけれど、彼が歌い始めると世界が変わったかのように思えたことを、はっきりと覚えています。楽器ではない。技巧でもない。そこには確かに音楽があった。

だから、彼の音楽が好きなのかもしれないと思いました。音楽に対するひたむきな想いがあるからこそ、Tamas Wellsの歌を聴いていてぼくは自然に涙も出た。結局のところ、ぼくは音楽ファンやリスナーとしては失格かもしれなくて、音楽を聴きたいのではなく、曲の背後にある薀蓄や知識を語りたいわけでもない。アーティストという人間に出会いたい、ひたむきな"想い"を聴きたいのかもしれません。そして彼の音楽にはそれがある。

あっ。アルバムについて何も書いていなかった(苦笑)。

1曲目、「When We Do Fail Abigail」は2ndに近い歌い方、楽曲です。そして逆回転とオルガン+ピアノではじまる「When We Do Fail Abigail」は、なんとなくベルセバ(ベル・アンド・セバスチャン)っぽい。でも、このメロディいいです。つづく3曲目の「Chandliers」のギターと歌は、まさに天国から光が降りてくるような雰囲気。さらに6曲目の「Even in the Crowds」のようなちょっと3連っぽいノリの曲は、タマちゃんらしいのでは。コーラスを聴いて背筋になにか走りました。このあたりの曲、聴き込めば聴き込むだけ好きになってきます。もともと彼はピアノを弾いていたらしく、インストの「A Dark Horse Will Either Run First or Last」のピアノも切なくていい。

さらにBONUS TRACKSとして、EPの曲が追加されていてうれしい限りなのですが、最初の「Cigarettes, A Tie And A Free Magazine」はライブで聴いたっけなあ(しみじみ)。バイオリンの音が入ってくるあたり、やられました。「Where The Koran Seems To Rhyme」はちょっとタマちゃんらしくない感じ。ですが、キャメロン・クロウ監督の映画あたりで使うと効果的っぽい気がする(笑)。15曲目、「41 Union Drive, Caroline Springs 3023」 も、オーランド・ブルームがクルマを運転しているイメージが浮かんだりして。勝手なイメージを付加してすみません。17曲目「Beauty Cream」は、ブラシのドラムの乾いたショットも気持ちいい。そして最後のインスト曲は、うーむ、打ち込みっぽいドラムも聴こえてきたり。いろんな側面があって楽しいじゃないですか。

というわけで、やっぱりタマちゃんいい、というのが結論です(笑)。

+++++

■Liricoのページから「A MARK ON THE PANE」
http://www.inpartmaint.com/lirico/lirico_title/LIIP-1502.html

おっ、インタビューも掲載されているじゃないですか。

■TAMAS WELLS INTERVIEW
http://www.inpartmaint.com/lirico/lirico_feature/interview_tamas.html

次の言葉に、にやり。まずは、アルバムか「Plea en Vendredi」について。

『Plea en Vendredi』というタイトルは英語とフランス語をミックスしたものなんだ。「Vendredi」はフランス語で「金曜日」という意味で、アルバムのなかの1曲のタイトルでもある。コンセプトは、意識の流れと入念な計画(それは「Valder Fields」の意味でもある)のミックスなんだよ。・・・僕らの意識は、完全に意図的なものでも、行き当たりばったりなものでもない・・・ばかばかしいほど漠然として聞こえるけど、許して!

そして、これからの予定。

いま、いくつかの曲を作っている最中だよ。今年の後半にアルバムができればいいんだけど。あと、ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』(Heart of Darkness)とルソーの『社会契約論』を読むことを計画しているよ。あと、フーコーの本もいくつか読みたいんだけど、とても難しそうなんだよね。

そういうひとでしたか(笑)。だから好きなわけだ、ぼくは。

*年間音楽50枚プロジェクト(43/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:33 | | トラックバック (0)