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2010年1月24日

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[DTM作品] Fine after cloudy

はやいペースですが、先週に引きつづき趣味のDTMでまた新曲ができました。"なんちゃってジャズ"第2弾です(笑)。

柳の下に泥鰌を探しつづけることが自分流の切磋琢磨、なのでしょうか。よくわかりません。とはいえ、テクノやエレクトロニカのぴこぴこサウンドはお休みにして、もうすこし別の音楽スタイルを徹底的に追求してみようと考えました。ぼくの苦手な3連符系の音楽です。

今回はジャズっぽい雰囲気を大切にしながら、わずかばかりポップスの明るさを心がけてみました。構成は前回と同様、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオによる打ち込みです。

俳句に似ている気もしますが、五・七・五という枠のなかでことばの世界を構築するように、楽器の構成を決めてしまうと、あとは決められた枠内でどのように打ち込むかに集中できます。音色の選択やそれぞれのアレンジを考える必要がなくなるので、その分だけ負荷が減ります。

といっても俳句が個々のことばの研ぎ澄まし方が重要になるように、個々の楽器のきめ細かな音づくりが必要になります。さらに苦手な3連符のノリなので、いまひとつまだ修行が必要、なのですが。

タイトルは「曇りのち晴れ」。日本語でもいいかなとおもいつつ、英語で「Fine after cloudy」としてみました(合っているのでしょうか)。ブログで公開します。お聴きください。
 
 
■Fine after cloudy(3分28秒 4.76MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing
 
 
1月。寒い日がつづきますね。午前中は晴れたと油断していると午後からにわかに雲ってしまったり、曇り空の寒い日だなーと襟を閉ざしていると、急に晴れ間が広がったり。太陽が出ていても風は冷たい。耳たぶや鼻が痛くなります。童話にあるような、北風と太陽の根競べのような、曇天と晴天がめまぐるしく変わる天候を曲にしたいと考えました。

マイナーコードからはじまって、サビでメジャーに展開します。安易ですが、この展開によって「曇り(かなしい空模様)」から「晴れ(明るい青空)」を意識しました。けれどもサビの部分にもマイナーコードを残して、すっきりと晴れてしまわずに雲の合間からわずかに陽が差し込むような音をめざしました。快晴というわけではなくて、雲の多い晴天です。

なんとなくサビのコード進行は、小室哲哉さんっぽいかな、というのが気がかりです(苦笑)。仕方ないですね。80年代、デビュー前のTMNのPVを渋谷で観て、衝動的にJUNO-106というシンセサイザーを分割払いで購入したひとなので。誰も知らないとおもいますが、TMNの1枚目のアルバム「RAINBOEW RAINBOW」は、個人的にはニック・ヘイワード(ネオアコでは有名なヘアカット100のミュージシャン)テイストの雰囲気がある名盤だとおもいます。

B00005G4STRAINBOW RAINBOW
TM NETWORK
エピックレコードジャパン 2000-03-23

by G-Tools
B0000076E8風のミラクル [+9]
ニック・ヘイワード
BMGインターナショナル 2000-04-21

by G-Tools

曲を作っている最中、いやー楽しかった。ギターやピアノを弾いていると時間を忘れるというひとが多いけれど、正直なところ、ぼくもPCの画面に向かってマウスで音を置いていくと(ほんとうに!)時間の過ぎるのを忘れました。楽しくて仕方がない。

読み手のことを考えて書きなさい、聴き手のことを考えて曲を作りなさい、とよく言われます。しかし、過剰に受け手を考慮して創造すると、下手をすると受け手に媚びを売っているような文章や音楽になります。

創作に集中しているときは、ぼくにとっては、ほとんど自己満足の世界です。けれども、自分が読みたい文章や聴きたい曲を夢中で追い求めている。自分自身が第一の読み手/聴き手であり、まず自分という読み手/聴き手を満足させる必要があるのかもしれません。

で、いったいぼくの音楽はどこへ向かおうかな?と考えました。

クラシックを聴きながら、ジャズ的な曲を作ったかとおもうと、エレクトロニカを聴いていたりする。アコギによるフォークソングも好きです。

できれば柔軟にあらゆる音楽を吸収していきたいのですが、それでは曖昧なので、憧れをひとつひとつ検証した上で、ロジャー・二コルスのようなソングライティングをしたい、という目標を立ててみました。いま制作している音楽とはぜんぜん違っていて、どこが?という感じもあるけれど、それがぼくの趣味の曲づくりにおける究極の目標です。

ロジャー・二コルスはカーペンターズに曲を提供したことでも有名ですが、The Small Circle of Friendsというユニットで数枚アルバムを出しています。40年ぶりの新譜には、ドラムスは打ち込みでありながら、時代を感じさせないあったかさがあって感動しました。「懐かしさと新しさと。」というエントリーや「Full Circle」というアルバムの紹介をブログに書きました。

Fineつながりでとても好きな曲「Love So Fine」と「The Drifter」をYouTubeから引用します。

B001E2N5LYFull Circle
Roger Nichols & the Small Circle of Friends
NOW SOUNDS 2008-10-28

by G-Tools

■Love So Fine - Roger Nichols & The Small Circle of Friends

■"The Drifter" - Roger Nichols & The Small Circle Of Friends (1969)

こんな感じのポップスを作ることができれば、しあわせですね。あらためてロジャー・二コルスの音楽を聴き直して刺激を受けました。刺激といえば、先日観た「Little DJ」という映画にも、音楽に対する想いという意味でインスパイアを受けています。

素晴らしい音楽を作るために、たくさん映画を観る、たくさん本を読む・・・という方法論もあります。しかし、ぼくはまず「・・・のために・・・する」という姿勢に、どこか作為的で同感できない何かを感じてしまう。場合によっては「たくさん」のほうが目的になって「こんなにたくさんの本を読んだぜ(音楽を聴いたぜ)」という量自慢になりかねない。

大切なことは、他人にはどうであっても自分が夢中になれる何かを探すこと、ではないでしょうか。どんなに知識を増やしても到達できない場所があります。難しい知識はなかったとしても、自分の素直な感情に向かい合うと、すっと自然にできあがる作品もある。

自分さえ夢中になっていれば、社会が晴れていても曇っていても、それなりにしあわせなのではないだろうか、などと考えています。

投稿者: birdwing 日時: 09:50 | | トラックバック (0)

2010年1月17日

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[DTM作品] Sophisticated Fiction

趣味のDTMで作った新曲は、"なんちゃってジャズ"です(苦笑)。

クラブジャズという音楽が一時期、流行っていました。CDショップの店頭にコーナーがあったことを覚えています。いまはどうなっているのでしょう。そんなクラブジャズ風の軽く踊ることのできそうなジャジーな曲を作ってみたいとおもいました。ジャズには詳しくないので、いい加減な解説ですみません。

タイトルはS.F.つまり「Sophisticated Fiction」。洗練された小説、ぐらいの意味でしょうか。完成したばかりの曲をブログで公開します。


■Sophisticated Fiction(2分39秒 3.62MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


インスパイアされたのは、まずジャズとは関係ないのですが、先日ブログにも感想を書いた「4分間のピアニスト」という映画でした。女囚であるジェニー・フォン・レーヴェン(ハンナー・ヘルシュプルング)の弾く低音を使ったバッキングが、かっこよかった。ピアノの打楽器的な奏法に惹かれました。

B0015XEZ2U4分間のピアニスト [DVD]
ギャガ・コミュニケーションズ 2008-06-06

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ピアノのバッキングを聴いて思い出したのが、北欧ジャズのラーシュ・ヤンソン・トリオによる「Witnessing」というアルバムです。インディペンデントレーベルのせいなのか、amazonでジャケットが表示されないため、デジカメで撮影したものを掲載します。

091017_lars.jpg

全体的には、メロディアスで透明なやさしい音がラーシュ・ヤンソンのピアノのよさだと思うのですが、1曲目「Success-Failure」のラスト5分ぐらいのところで、ベースと呼応するように低音の鍵盤を、がが、がが、のように弾くところがあります。ノイズともいえる音なのだけれど、セッションの最後にお遊び的に付け加えられたパーカッシヴな演奏がみょうに印象に残りました。

ラーシュ・ヤンソン・トリオの公式ページは以下になります。

■日本語オフィシャルサイト
http://www.lars.jp/
100117_lars_hp.png

そんな背景をもとに今回、楽曲的には、クラップ(手拍子)以外は、すべて打ち込みで作っています。そして、打ち込みでぼくがいちばん苦手とするのが、シャッフル(スウィング)の曲なのです。

3連符のノリが苦手。どうもうまくいかない。ちーちきちーちきとハイハットを刻んでいるけれど、何かが違う。悩みました。ピアノの音を細かく調整しても、どこかがズレている。変だ。今回だけは、絶対に生で弾いた音楽にかなわないなと投げ出したくなりました。ドラムのスネアの入れ方も、何度もジャズのアルバムを聴いても法則性がわからない。

また、3ピース(トリオ)編成の3トラックだけの打ち込みのため、気が抜けません。細かい手抜きがくっきりと聴こえてしまう。ついつい、3ピースのバンドをやっていた頃の緊張感を思い出しました。ベースは、アンプシミュレーターを通して強烈にコンプレッサーをかけています。

社会人バンドをやっていた頃、ばりばりのジャズギタリストのお兄さんに、ウォーキングベースの理論を教えてもらったことがあったっけ。のみ込みの悪い生徒なので、きちんと覚えられなかったのですが、「次のコード展開を予測してラインを作る」という知的な法則に打たれました。通常はルート(基本となる音。Cならド)を弾くのがベースなのだけれど、加えて次の和音に橋渡しをするように音をつないでベースを「歩かせる」。そんな話だったように記憶しています(合っているかどうかは不明)。

ソフィスティケイテッド(洗練された)とタイトルに付けたのだけれど、完成度としては、まだまだ。洗練された打ち込みニストをめざしたいものです。

さてさて。いつものように余談です(笑。実はこれが自分としては楽しみ)。

タイトルはSFにしようと最初に決めました。で、さて何の略にしようか、と。単純にScience Fictionでは面白くない。ニューウェーブ的には、Speculative fiction(思弁小説)という呼び名もあるようです。しかし、もうひとつ。藤子・F・不二雄さんは「すこし・ふしぎ=Sukoshi-Fushigi」という造語をSFと呼んでいるらしい。ラーシュ・ヤンソン・トリオの「Success-Failure」もSFですね。サンフランシスコも略すとSF。ちょっとお恥ずかしいところでは、sex friendもSFだったりして(Wikipediaの「SF」を参考)。

SFという略ではいろいろなことを思い出したのだけれど、ショート・フィルムなども考えられます。ブロードバンドが普及して、短編どころではない長い尺の映画も配信できるようになりました。

映画でSFといえば、ミュージックビデオでは著名な中野裕之監督の「SF サムライ・フィクション」も印象的な作品でした。モノクロの映像に布袋寅泰さんの音楽が渋い。着物姿の緒川たまきさんがかわいらしかったりして、おもわず中古DVDを購入してしまいました。

B000063C4YSF サムライフィクション+ノンフィクション ~Collecter's Edition~ [DVD]
ポニーキャニオン 2002-04-24

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■「サムライ・フィクション」予告編

サムライはどうかとして、モノクロ映画、コーヒー、タバコの煙、酒のようなものがジャズに似合う。ちょっと大人の雰囲気を醸し出してくれます。

SFではありませんが「Sophisticated」つながりとして、ホンモノのジャズでは、デューク・エリントンに「Sophisticated Lady」という曲があります。

■Sophisticated Lady - Duke Ellington and his orchestra

ううむ・・・(無言)。

すばらしいですね。感動。しかし、志は高くもっていたい。趣味とはいえ、打ち込みでどこまで生の音楽に匹敵するような感動を作り出せるか、こつこつと切磋琢磨していきたいものです。え?これが打ち込みなの?というような、"洗練された"音源を完成できるようになりたいです。頑張りましょう。

投稿者: birdwing 日時: 11:37 | | トラックバック (0)

2009年12月30日

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[DTM作品] Winter World

「雪の女王」というアンデルセン童話があるそうです。読んだことがなかったのですが、Wikipediaから「あらすじ」を調べて要約しつつ引用すると、登場人物はカイ(Kay)という少年とゲルダ(Gerda)という少女。ふたりは仲良しでした。ある日、悪魔の作った鏡の欠片がカイの眼と心臓に刺さります。すると彼の性格は一変する。そんな変わってしまったカイを雪の女王が魅入って、その場から連れ去ります。連れ去られたカイを取り戻すために、春になるとゲルダは旅に出る・・・というストーリーです。

「悪魔の作った鏡の欠片がカイの眼と心臓に刺さり、彼の性格は一変してしまう」という部分が象徴的だと感じました。

「眼」を傷めることによって世界の見え方が変わり、「心臓」に刺さることでこころが傷付けられる。だからカイは変わってしまう。性格の変わったカイによって、仲良しのゲルダとの関係も壊れてしまったのでしょう。だから、ふたりで遊ぶのではなく、ひとりきりで橇遊びをしているときに雪の女王に連れ去られる。雪の女王の宮殿のなかに幽閉されます。

雪の女王の宮殿と聞いただけで、何かきーんとするような冷たさと、真っ白で何もない風景、尖ったつららが光を反射して表情さえ凍りつきそうな震えるほどの寒さを感じますね。吹雪に守られていて誰も近付けないような宮殿。そこにひとりぼっちで閉じこめられているカイ。とても孤独な場所です。

ところで寒い場所といえば、急に話は変わるのですが、先日、「スタートレック」のDVDを観賞しました(宇宙大作戦!懐かしい)。ジェームズ・カークがスポックに反抗して、罰としてどこかの氷の星にカプセルのようなロケットで船外追放される場面がありました。

B001P3PP0Gスター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2009-11-06

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その星は雪で覆われていて、得たいの知れない怪物に追いかけられてカークは逃げ惑うのですが、雪原を転げまわるシーンをみて、これはさみー・・・とおもった。東京は雪があまり積もらないのだけれど、積もるときにはどさっと積もることもあります。数年前、電車が止まって雪のなかを歩いて帰宅する途中、滑って転んで方角を見失い、あやうく遭難しかけたことを思い出しました。

と、雪であるとか冬であるとか、そんなことを書き散らしましたが、クリスマスも終わり街は一気に年末、お正月を迎えます。

冬といっても東京では雪も降りません。それでも寒い。そんな冬の世界を表現したいと考え、趣味のDTMで曲を作ったのでブログで公開します。「Winter World」というタイトルにしました。


■Winter World(2分54秒 3.97MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


再生時間は3分に満たない短い曲です。というのも、パソコン(VAIO)のパワーが限界で、音がDropout(再生できなくなり止ってしまう)しまくりでした。

今回はTTS-1のほかにもソフトウェアシンセサイザーを使い、ワウ、フェイザー、ディレイ、リバーブなど空間系エフェクトを多用したことと、打ち込みのフレーズを音声ファイルにミックスダウンして、その音をリバース(逆回転)させたり切り貼りなど編集したため、余計にPCに負荷がかかってしまったようです。作り方に問題があるのかなあ。

こんかんこんかん・・・というマリンバのシークエンス、高音のギターなどはつららや氷をイメージしています。シンセのリードとギターには、アンプシミュレータをかませて、やや歪ませてみました。何気なくサラウンドのエフェクトも使っているのですが、あまり効果はなかったようです。

前回公開した「We Wish...」は、打ち込みで完結しているのですが、今回は音声ファイルを(すこしだけ)いじってみたところが異なります。すべて音源の切り貼りのため、ギターも弾いていません。が、これぐらいのカッティングであれば、弾いてしまったほうがリアリティが出るかもしれません。

ところで、「Winter World」を作ってみようという動機になったのは、久し振りに聴いてみた2枚のアルバムでした。

B000MGBTSYCatch/Spring Summer Autumn Winter
I Am Robot and Proud
Darla 2007-03-13

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I Am Robot and Proud は、ペンギンの絵が書かれたアルバムも大好きでしたが、こちらもいい。ぴこぴこした電子音のサウンドで、意外にかわいい音づくりです。このアルバムの1曲目「the catch」をYouTubeから。

■I am robot and proud - the catch

もう一枚は、Kettelの「my dogan」です。全体的に303系のぶっといベースがびよびよした音で心地よい。アンビエントな曲もあるのだけれど、リズムがハードな一曲をYouTubeから引用します。画像はアルバムのジャケットの写真です。

■Kettel - The second 2006

クラシックばかり聴いていたかとおもうと一般的な打ち込みでクリスマス向けの曲を作り、今度はエレクトロニカと、ほんとうに節操がありません(苦笑)。自分でも半ばあきれ気味ですが、ジャズも含めて雑多にいろんなCDをかけていると、それぞれのジャンルから刺激を受けます。

懐古的なものも多分にあって、びょーんというシンセの音を聴いていると、ああ、この音懐かしい!とおもわず引き寄せられてしまいます。しゅわしゅわしたフランジャーのエフェクトにも弱い。そんなわけで、実は雪や冬をテーマというのは後付けのところもあり、ホンネを白状すると、何気なく聴いていた曲(というよりも音)に触発された感じです。

というわけで冬の曲づくり試行錯誤しながら(いつものように言い訳を長文で述べながら、そして師走の慌しさのなかで落ち着かずに)、、、

2010年も素敵な年になりますように!

投稿者: birdwing 日時: 12:32 | | トラックバック (0)

2009年12月12日

a001204

[DTM作品] We wish...

「We wish...」につづくことばは、「you a Merry Christmas.」です。

いつの間にか世間はそんな季節になってしまいました。今年は身体的にも精神的にもまいってしまって、自分的には夏から時間が止まっています。悪戦苦闘した夏を引き摺ったまま秋と冬を迎えました。とはいえ、ぼくの事情はさておき、うちにもクリスマスのデコレーションが飾られるようになりました。安物のクリスタルのツリーとか、サンタの人形とか、あるいは太陽光の充電式による玄関のイルミネーションとか(夜になると点滅する)。賑やかです。

玄関にはリース。

091212_genkan_re.jpg

雑貨屋で買ったチープな置物だけれど、色鉛筆の箱に乗せると、ちょっとした雰囲気があります。

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家の近くのショッピングモールには、大きなツリーが飾られていました。

091212_tree_re.jpg

ブログの更新は滞り、DTMをする余裕すらなかったのだけれど、ようやくある日、夢のなかで音楽が降ってきました。そこで久し振りにDAWソフトを立ち上げました。が、使い方を忘れてしまって困惑。不調な状態ですこしずつ組み立てていき、SONAR付属のソフトウェアシンセサイザー(TTS-1)の打ち込みだけで作っています。ほとんど同一コード進行の繰り返しを変奏した単純な曲です。

一般的に受け入れられる曲調を意識してしまったため、ありふれた感じになってしまったのが残念ですが、ブログで久し振りの新曲を公開してみます。


■We wish...(4分00秒 5.49MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


作品を聴いていただけば語ることは何もない、のかもしれません。とはいえ、何度もブログで書いている通り、曲を作りながら、ぼくは表現とは何かについてさまざまなことを考えます。考えたことを書いてみたいとおもいます。メイキング、あるいはネタばらし的なので、せっかく読んでいただいても幻滅するかもしれないのですが、参考までに。

まず最初の動機として、エレピ+16ビートの無機的なドラムスで雰囲気のある曲を作りたいとおもいました。このときイメージする定番といえば、フィル・コリンズの「One More Night」でしょう。80年代の名曲です。

■Phil Collins - One More Night

あるいは、邦楽でいうと、かなり古いのですがKANさんの「東京ライフ」。

■KAN/東京ライフ

「東京ライフ」を聴いたのは、めちゃめちゃぼくが若い頃ですが、「ツルモク独身寮」というマンガがありました。そのなかで歌詞が引用されていて、なんかよさそうな曲だなあと感じてCDを借りてきました。この曲、結構泣けたっけ。

4091816517ツルモク独身寮 (1) (ビッグコミックス)
小学館 1988-09

by G-Tools

さて。個人的な創作、表現に関する考えを述べてみますね。

文章にしても音楽にしても、まったくオリジナルなもの、独創的なものはあり得ないと考えます。もし、そんなものがあるとすれば、宇宙人にすら理解されない。この世界にはまったくない表現になり、他者の共感どころか理解を生むことさえできません。

どこかで古い文章や音楽の文脈(コンテクスト)を引き摺っているからこそ、ぼくらはその音楽や文章に、ああ、これわかるよ、いいね、という共感を抱くことができる。フィル・コリンズやKANさんの音楽を挙げたのもそのためです。真似といってしまうと陳腐になりますが、真似ではない。憧れといったらいいでしょうか。だから創作の動機になっていても、まったく同じものにはなりません。というか、能力的に未熟な部分も多分にあるため、ぜったいに同じにはなれないわけです。もちろん、伝統的な作品の引力から離れて、どれだけ自作の曲を差異化するか、ということも重要なポイントになります。

継承する表現の何を選ぶか。つまり、どういうコンテクスト(文脈)のなかで文章を書き、音楽を作るかによって、その作者の個性が生まれる。

しかし、個人的な趣向をいえば、ぼくはポップスを作りたいと考えています。ポップスのよいところはJAZZ的なエッセンスも、クラシカルなフレーズも何でも取り込むことができる。雑多に、貪欲に、さまざまなものを取り込めるのがポップスのよさです。

正統派のJAZZのひとや、クラシックのひとからみれば「そんなものはホンモノじゃない」といわれるかもしれないのですが、あらゆる音楽から拝借できるところがポップスの柔軟性、よいところだとおもいます。だから、ブリティッシュロックならブリティッシュロック、ミニマルテクノならミニマルテクノというように、ピンポイントで制作する音楽を限定したくない。垂直的な志向性にあるのではなく、水平的な志向にあるといえるかもしれません。

先日、エントリで紹介した宮本笑里さんも、ヴァイオリニストとしてクラシックからポップスまでさまざまな活動をされています。しかし、あらゆる曲に宮本笑里的な表現が際立っている。ジャンルを横断しつつ、ご自身の世界を確立するのは簡単なことではありませんが、そんな凛とした姿勢に惹かれます。

ブログに関しても同様のことを考えていて、ハイブロウな文章も書けるようになりたいし、家族の日々を取り上げたアットホームな文章も書きたい。全方向型というと節操がなくなりますが、ぼくが関心のある分野を受け止める、しなやかな思考をもっていたい。

ところで、広く浅く志向性を定めると、擬似的な世界、悪くいえば似非になる可能性もあります。

たとえば音楽制作でいえば、ぼくはステップ入力という方法で曲を作るため、鍵盤を弾いていません。PCの画面上で、一音一音、棒のような音を方眼紙のような升目に置いていく。空き瓶のなかにマッチ棒で帆船を組み立てるような作業で(ポール・オースターの「最後の物たちの国で」という小説に、そんな登場人物がいました)「We wish...」も作っています。

ソフトウェアの画面は、こんな感じです。以下は、SONARというソフトの入力画面を2つ並べてみました。最初のエレピの部分です。

dec01_re.jpg

左側のウィンドウのような楽譜表示も可能ですが、ぼくは右側のウィンドウのような、マウスで棒(=音)を置いていくピアノロールという画面で曲を組み立てていきます。オルゴールのピンを刺すような感覚です。慣れるとだいたいの位置感覚を空間的につかめるようになる。とはいえ、楽器を弾けるひとにとっては、何その音楽の作り方?ばーんと弾いて録音すれば一発で終わるじゃん、という、みょうにちまちました作り方かもしれません。

したがって、ほんとうにピアノが弾けるひとにとっては、「この音はあり得ない」という音になっているかもしれません。指が十三本なければ弾けないとか、親指と小指の距離がものすごく離れたでっかい手のキーボーディスとではなければ弾けないとか。

その非現実的なシミュレーションを、どこまでほんとうの演奏に近づけていくか、ということが課題でもあり、逆に、ほんとうの演奏とは切り離して音を作っていくこともひとつの方法論になります。どちらかを選択するわけではなく、どちらも楽しい。たとえば楽器の音域や、かっこよく聴こえるフレーズを研究して、データに反映する。どうしたら、サックスのかすれたような音が再現できるか考える。そんな時間は、自分を忘れて夢中になれる至福のときです。

ぼくはあえて目標を定めませんが、作りつづけていくなかで変わっていけばよい。行動しつつ考える、というスタイルです。考えるけれど行動しないのはダメ。評論家にはなりたくありません。どんなに稚拙な作品であっても、プロトタイプであっても、作品を提示する、ブログをデザイン・構築してみる、文章を書いてみる・・・という実践のなかで、どこかへ到達したい。

と、そんなことを考えながら、日々、ブログを書いたり趣味で音楽を制作したりしています。いちばん大事なことは、時間を忘れて没頭しつつ楽しむ、ということでしょうか。仕事も、ひととの関係もそうでありたいものです。

では、みなさんも素敵なクリスマス、楽しい年末をお過ごしください!

風邪も流行っています(息子のクラスも学級閉鎖になりました)。体調にも十分気をつけてくださいね。

投稿者: birdwing 日時: 16:58 | | トラックバック (0)

2009年3月15日

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[DTM作品]グラデュエーション。

季節はめぐり、春がやってきます。春は卒業の季節です。さまざまな希望や不安を抱きながら、学び舎を巣立っていくひとたちも多いのではないでしょうか。慣れ親しんだ環境を離れて、新しい世界に飛び込むのは怖いものです。けれども、その恐怖に打ち克つことで大きな成長もあります。頑張ってくださいね。

社会人になると卒業や入学という節目が希薄になり、特にぼくの勤め先では新入社員を定期的に採用しないので、ますますそんな節目から遠ざかるのですが、それでも春は静かにいろいろなこころのなかを整理する季節であります。逆に情緒不安定になることも多いのだけれど、その危うさもまたよいものです。というのは、ぼくが春に生まれたからかもしれません。

とにかく眠くて、だるくて、頭さえ痛くなってしまったのですが、そんな春の卒業にちなんだ曲を作りたいと思いました。土曜日の深夜から日曜日にかけて、久し振りにPCに向かって制作活動に没頭しました。ゆっくりとした叙情的なバラードではなく、すこしテンポのいい、けれどもなんとなく暗さの漂うような、そんな曲にしたいと考えていました。

いまひとつ荒削りで完成度が低いのですが、公開します。タイトルは、いろいろと悩んだのですが「グラデュエーション(卒業)」としました。映画のエンドロールに流れるような曲にしたかった。


■グラデュエーション。(2分19秒 3.18MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


ぼくが作る曲のジャンルについて考えるのですが、ミニマル・ミュージックのようかもしれないと思うことがあります。といっても、そのジャンルを想定して作っているわけではなく、分野に関する知識もないので確信がありません。久石譲さんの次の本を読んでいるとき、この言葉に出会い、ああ、ぼくが作りたいものもこれかもしれない、と思いました。


4047100617感動をつくれますか? (角川oneテーマ21)
久石 譲
角川書店 2006-08

by G-Tools

Wilkipediaの解説から次の解説を引用します。

ミニマル・ミュージック(Minimal Music)は、音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。1960年代から盛んになった。単にミニマルと呼ばれることもある。

あくまで単純な反復のリズムがメインであり、曲として成り立つ最低限度に近いほど、展開も少ない。しかしそれらの中での微細な変化を聞き取るのが目的であり、全体的な視点から見れば決して無駄な反復ではなく、音楽は徐々に展開していると言える。 音楽にそれほど詳しくない者でも、「ゴジラのテーマ」といえばおおよその想像は付くであろう。

次の部分も引用しておきます。スティーヴ・ライヒはいつか聴きたいと思っていながら、まだ聴いていません。ミニマル・ミュージックの発生がテープによるリピート再生というところも面白い。

ミニマル・ミュージックにつながる最初のきっかけは、スティーヴ・ライヒがテープ音楽によるパフォーマンスを試みたことに始まる。彼の最初期の作品「カム・アウト」(1966年)「イッツ・ゴンナ・レイン」(1965年)は、コピーされた2つの同じテープループを2つの再生装置で同時に再生するが、そのわずかのテープの長さの違い、あるいは再生装置の回転数の微妙なずれにより、最初はほぼ同期していた2つのテープの音声(2つとも曲名にある単語をしゃべって録音したもの)がだんだんずれていく。このずれによるモアレ効果に着目し、単純な反復を繰り返すうちにずれが生じる=徐々に微細な変化を遂げる作風を器楽作品にも当てはめた。ライヒの初期の作品「ドラミング」や「ピアノ・フェイズ」がこれにあたる。

今回作った曲も、途中に展開部分は入りますが、ほぼ同じメロディ、フレーズの繰り返しです。手抜きだ、と思われるかもしれないのですが、まあ、確かにそうかも(苦笑)。ただ、バンドではなくDTMでラップトップミュージックをはじめてから、ひとつのモチーフを繰り返しながら変奏していくパターンに惹かれています。このスタイルで曲を作るとすれば、その音楽がいちばん適していると思うので。

今回も全面的に打ち込みで、凝った技術は何も使いませんでした。最近、制作手法がどんどんシンプルになっていきます。リズムとしては、ボサノヴァではないかと思います。といっても、プロの方からみれば首を傾げるようなボサノヴァのような気がしますが。

さて、音楽とは関係のないお話ですが。

情けないので書くのはどうかと思っていたのですが、過去に思いを馳せて暇を持て余すうちにふと、学生時代に付き合っていた彼女の名前を検索エンジンでググってしまいました。ええと、いい訳なのですが、そういうことってありませんか? ぼくだけでしょうか。

すると、検索の結果から大学教授として働いている彼女がみつかって驚いた。同姓同名もあるかもしれないけれど、これは彼女だ、と確信しました。専攻している分野が大学時代のままだったんですよね。ドイツ文学を学んでいた彼女はミヒャエル・エンデが好きでした(ぼくはエンデより映画のリマールの音楽のほうが好きだったけれど)。たしかお父さんも大学の教授であり、大学院に進学したということをなんとなく知っていたのだけれど、教授になったとは。


■Never Ending Story ( Limahl )


卒業して、いろいろな人生を歩み、疎遠になってしまったひとたちもたくさんいます。いま教授として働いている彼女とは二度と会うことはないでしょう(しあわせなのだろうか、しあわせだといいのだけれど)。しかし、頑張っているなあ、とPCのモニターを眺めながら考えて、ちょっと微笑んでしまった。修復不可能な酷い喧嘩をして別れたのですが、こうして消息を知ることができてよかった。

のめり込むと盲目的に激しい感情をもって付き合うような場合、別れてもお友達で、という大人の関係にはなりにくいものです。とはいえ、心底惚れたひとであれば、関係がなくなったとしても、相手を嘲ったり恨んだり後悔したり関係をなかったことにはせずに、大切にしたい。しあわせであることを遠くから願いたい。けっしてストーカー的に追うのではなくて。

学生の頃のような恋愛をすることはなくなりました。必要のない恋は無駄だと思うし、仕事であるとか、追及したい世界であるとか、ぼくらにはたくさんのやるべきことがあります。しかし、抑制のとれた気持ちのなかで、それでも恋に落ちることはあるかもしれません。予測もつかない何かに翻弄されることもある。それが人生です。

学生を卒業しても、人生を学ぶことからは卒業できない。むしろ、卒業したあとのほうが人生を学ぶ機会がたくさんあります。

投稿者: birdwing 日時: 19:30 | | トラックバック (0)