ノウイング
▽cinema10-03:人類滅亡の視点からみれば。
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自分の人生はあらかじめ決められているものなのか。それとも偶然の重なりで変わっていくものなのか。
10代の頃に、友達と議論したような気がします。その頃のぼくは運命は決定されていると考えていたように記憶しています。諦観ではなく、歴史を俯瞰すれば過去が年表として記述されるように、未来も決められているはず。現在から先の歴史のロールは、「いまここ」の時点に生きるぼくらにはみえない知りえないだけだ、と考えていました。いまはどちらかというと、ランダムな理論(偶然の重なりで変わっていく説)を支持するかもしれません。
「ノウイング」では、宇宙物理学者のジョン(ニコラス・ケイジ)が、マサチューセッツ工科大学の講義でそんな問いを学生たちに投げかけるシーンがあります。
彼は、運命は偶然の重なりだと考えている。というのも、ホテルの火災で愛する妻を失ったのですが、事前にわかっていたのであれば、彼女を救えたはずだと考えたからです。自分の妻が煙に巻かれて死んでいくとき、ジョンは庭の手入れをしていた。第六感などというものもなかった。だから彼は、運命決定論に否定的な態度をとります。
しかし、小学生の息子ケイレブ(チャンドラー・カンタベリー)が持ち帰った一枚の紙が彼とそして息子の運命を変えていきます。
その紙は、50年後に開封することを目的に小学校に埋めた金属製の入れ物"タイムマシン"に入っていたものでした。他の子供たちが未来の風景、ロケットなどの絵を描いて残していたのに、その手紙だけは、びっしりと数字で埋め尽くされていました。異様な手紙です。
最初は子供のラクガキにしか思わなかったジョンですが、その数字が過去50年間の大惨事の日付けと犠牲者を羅列したものだと気付きます。そして、数字が予告した日に飛行機が墜落し、彼はその場に立ち会ってしまう。死者も紙に記された通りです。数字はでたらめではない、預言だ、とジョンは確信します。そして、手紙を書いた女の子の消息を探り、数字の意味を解明していくのですが、最後には人類にとって恐るべき事態の預言が・・・。
飛行機の墜落シーン、VFXだとわかりながら実写のように凄かった。操縦不能になったジャンボジェット機が高圧電線をぶちきりながら、渋滞の道路に向けて、翼を地面に擦りながら墜落。爆発して、あとかたもなくばらばらになる。事故の現場には、パニックになったひとや火だるまになって転がり悶えるひとがいる。実際の飛行機事故の凄惨さを再現するような、迫力のある映像でした。
わずかに「シックス・センス」や「サイン」のM・ナイト・シャマラン監督風の雰囲気を感じたのですが、監督は「アイ,ロボット」のアレックス・プロヤス監督です。人類滅亡の危機がテーマの映画というと、キアヌ・リーヴスが主演の「地球が静止する日」を思い出したのだけれど、率直なところ、あの映画よりはよかった(苦笑)。しかし、似ている設定もなきにしもあらずです。暗号解読による謎とき、ニコラス・ケイジ扮するジョンと家族との確執、ありがちとはいえ難聴のケイレブと手話で「二人はいつも一緒だよ」と対話するシーンなど、人物描写に(「地球が静止する日」と比較すると、まだ)深みがありました。
とはいえ、ニコラス・ケイジは、なんだか悩みすぎ。人類滅亡の危機を一身に背負って救おうとするのはわかるのですが、もうすこし複雑で繊細な心理描写がほしいところ。息子に、宿題終わったか、というようなことばかり言う、ぴりぴりした父親を演じていて居心地が悪い(が、それがリアリティなのかもしれません)。出演者でいうと、華奢なローズ・バーンが、子供たちを救おうとして涙でぼろぼろになりながら必死でクルマを走らせるシーンにはじーんときました。
さて、もし今日人類が滅亡するとしたら、いったいどうするでしょう。
救われるものと切り捨てられるもの。そんな勝ち組と負け組みの選別があると嫌だなあ、とおもいます。加えて選別の基準が決められていなければ不条理です。しかし種を保存する意味では、すぐれた遺伝子を残す必要があるかもしれない。もし、救済されるものとして選ばれずに滅亡していく星に残されたとしたら、できることなら平常心でふだんと変わらぬ日をすごしたいものです。でも、きっとこころは穏やかではないでしょうね。パニックにならない強靭さを持っているかと自問すると、疑問を感じます。1月8日観賞。
■トレイラー
■公式サイト
http://www.eigafan.com/dvd/dvd.php?id_dvd=84
投稿者: birdwing 日時: 10:30 | パーマリンク | コメント (2) | トラックバック (0)