03.cinemaカテゴリーに投稿されたすべての記事です。

2006年5月23日

a001174

私の頭の中の消しゴム

▽cinema06-033:それでも残ると信じていたい。

B0026O1JGC私の頭の中の消しゴム [DVD]
ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08

by G-Tools

家がすべて消えてしまうのと、頭のなかの記憶がすべて消えてしまうのと、どちらが辛いのでしょうか。引越しのときに荷物がなくなってがらんとした部屋はさびしいものがあるのですが、どんなにモノがあふれていても、いままで過ごした日々が消えてしまうほうが辛いかもしれない。写真もちょっとした置物も、そこに記憶という価値が付加されるから、貴重なものになる。この「私の頭の中の消しゴム」はずいぶん前に話題になっていた作品で、いま観ているのは遅すぎる感じもしますが、27歳にしてアルツハイマーにかかった妻と建築家の夫の物語です。記憶に関して言うと小川洋子さんの「博士の愛した数式」もわずかの間しか記憶を維持できない数学者のお話で、映画化もされていた気がしました。一方、家というテーマに関しては、チョン・ジヒョンの出演している「イル・マーレ」という韓国映画も、家と建築家が出てきて、この映画とオーヴァーラップしました。とにかくストーリーは予測できるんだけど、やっぱり泣けた。なぜ言葉があるのか、記憶があるのかというと、なくなってしまうからあるのでしょう。なぜ、ハードな仕事でくたくたにくたびれつつもこんなに文章を書いているのかというと、いま書いておかなければ忘れてしまう、あるいは感動は消えてしまうからです。それでも、過ごした時間は残るものです。そう信じていたい*1。5月23日鑑賞。

*1:それにしてもチョン・ウソンとソン・イェジンは素敵でした。どうでもいいことですが、韓国系の女性にぼくはものすごく弱いかもしれません。とはいえ、この映画に関しては、ぼくはチョン・ウソンがかっこいいと思いました。ああ、こんなこと書いていないで寝なくては。というかレンタル延滞なんですけど。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(37/100冊+33/100本)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2006年5月21日

a001173

TAKESHIS'

▽cinema06-032:映像詩としての範列的な構成。

B000C5PNU0TAKESHIS' [DVD]
北野武
バンダイビジュアル 2006-04-07

by G-Tools

よくわからない映画です。しかし、わからないけれどもぐいぐい映像に引き込まれてしまう。それが北野監督のすごさかもしれません。役者として成功を収めている「ビートたけし」と、役者をめざしてオーディションを受けながらコンビニで働いている北野のふたりの物語が錯綜するかたちで進行し、どこまでが現実で、どこまでが妄想なのかわからなくなる。というよりも、そもそも映画というフィクションなので、すべてが想像の世界ともいえる。だとすると何が起きてもいいわけで、その脈絡のなさを徹底的に追求した映画なのかもしれません。ご自身の映画のパロディとも思えるような試みがあったり、銃を発砲する気持ちよさだけを追求した映像もあり、突然エッチなシーンが挿入されたり、笑えるのか笑えないのか困惑するような場面があったり、奇想天外です。

映像の展開としては、「叩く」という言葉で「コンビニで眠っていると客がレジ台を叩く」と「ポルシェのドアを叩く」というイメージを結び付けていく。つまり物語的な筋の連結ではなく、言葉のイメージで映像をつないでいくような範列的な手法がとられています。ばらばらの映像をそんな風にコラージュして、けれども何度か繰り返されることで、ああそういえばこのシーンあったけ、という記憶を再生しながら観ていく。「花束」もそんなイメージを連結する道具として使われています。

ぼくは北野監督の映画をあまり観ていないのですが、確か「あの夏、いちばん静かな海。」にも、そんなイメージの連鎖があったような気がしました(違ったかもしれません)。いちばん好きな映画は「Dolls」だったりします。コメディアンでありながら(というかだからこそなのかもしれませんが)とても静かに染みわたるようなさびしさや、悲しみを描くのがうまい監督だと思います。実験的なものもよいのですが、そんな切ない映画を撮ってほしいと思いました。それにしても北野武さんの顔つきは、年をとってさらに凄みが増したというか、かっこよすぎる。特に寡黙なときの顔はすごい。5月21日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(37/100冊+32/100本)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2006年5月17日

a001171

アイランド

▽cinema06-031:クローンは必要なのか、という疑問。

B002BS0266アイランド 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-07-08

by G-Tools

2019年を想定した近未来の物語だったかと思うのですが、アイテムやSFXの映像にまず目が奪われました。朝起きると健康状態がスキャンされて電光掲示板に示されたり、机の上全体がパソコンの画面になっていたり、自動車のデザインもかっこいい。そういえば、全身でコントロールするゲーム機はXboxのロゴが入っていたり、情報ボックス(電話ボックスのようなかたちで情報を入手する)にはMSNのロゴがありました。きっとマイクロソフトがスポンサーだったのでしょう。ただ、そんな設定も楽しめました。

臓器売買を目的に増殖されるクローンのうちのひとりが、自分の目的とは何だろう、ということを考えはじめる。実は世界は汚染されてしまったと洗脳されていて、隔離された施設のなかで暮らしているわけですが、リンカーン(ユアン・マクレガー)とジョーダン(スカーレット・ヨハンソン)は脱出を試みる。このふたりはアダムとイブ的な印象がありました。

クローンは人間なのか人間ではないのか、ということを考えさせられます。それは、人間とは何かという問題でもあります。ブレードランナーのエンディングでバンゲリスの曲が流れるようなイメージのシーンからはじまるのですが、それも深遠な考察へのイントロという感じもします。派手なアクション映画でありながら(ほんとうにカーチェイスのシーンなどはすごい)、そんなテツガク的なことも考えさせてしまうところが、よい映画だと思います。

しかしクローンはほんとうに必要なのでしょうか。同様にアンドロイドは、生まれてきて幸せなのでしょうか。と同時に、ぼくらの息子たちはクローンのようなものだけれど、生まれてきちゃってよかったんでしょうか、とちょっと思いました。やがて大きくなった子供たちは、そんなことに悩む日も来るかもしれないのですが、生まれてきた意味をきちんと説明できるようにしておきたいものです。5月13日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(36/100冊+31/100本)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2006年5月 7日

a001168

Mr.&Mrs.スミス

▽cinema06-030:夫婦生活はエンターテイメント。

B000AOTWLEMr.&Mrs.スミス プレミアム・エディション [DVD]
サイモン・キンバーグ
ジェネオン エンタテインメント 2006-04-05

by G-Tools

夫婦であったとしても、ちいさな嘘というのはあります。それは相手を思いやった上での嘘だったりもするものです(言い訳かもしれないのですが)。しかしながら、さすがに職業を偽ることはありません。詐欺にもなりかねないからです。けれども、殺し屋のような極秘の仕事をしていたら、言いたくても言えないかもしれない。Mr.& Mrs.スミスは、お互いに敵対する殺し屋の組織に所属する夫婦の物語です。

そもそも、ブラッド・ピット(ジョン)とアンジェリーナ・ジョリー(ジェーン)という夫婦の配役がすごいと思うのですが、ある人物を殺害する案件でお互いに鉢合わせしてしまい、それまで秘密にしていた殺し屋という職業がばれてしまう。48時間以内に夫は妻を、妻は夫を殺さないと組織から抹殺されるという、抜きさしならない状態に置かれるわけです。けれども、はじめて告白されるちょっとした真実に腹を立てたり、お互いの性格の不一致が露見したり、あるいは仲直りしたり、どちらかというと生命を脅かす危険よりも、夫婦生活の危機の行方にはらはらする映画でした。

カーチェイスや爆破シーンなど満載のエンターテイメント系スパイ映画ではあるのですが、とんでもない状況下で、実は離婚暦があったというジョンの告白にジェーンはむかついたりしている。スケールの大きなアクションのなかで、ちまちまと繰り返される夫婦の会話が楽しめました。スパイ映画というより、夫婦アクションという感じでしょうか。これだけ緊迫感のある夫婦生活であれば楽しいかもしれない。ときには喧嘩したり仲直りしたり、ちょっと深い話などをすると絆も深まるものです。5月7日鑑賞。

公式サイト
http://www.mr-and-mrs-smith.com/top.html

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(34/100冊+30/100本)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2006年4月23日

a001162

シンデレラマン

▽cinema06-029:誇りに思われる父になりたい。

B000HCPVO6シンデレラマン [DVD]
クリフ・ホリングワース
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2006-10-20

by G-Tools

泣けました。音楽制作にへとへとになって消耗していたせいかもしれないのですが、とにかく泣けた。そもそも以前にも書いたかもしれないのですが、ぼくは静かに耐えるひとに弱いのです。寡黙だけれど強いひと、やさしいけれども厳しいひとに弱い。DVDを借りていたもののすっかりDTMに没頭していたので観ることができず、観ないで返そうかとも思ったのですが、月曜日の早朝3時まで観てよかったと思いました(その分、月曜日はまいりましたが)。

実在したボクサーの物語です。彼が生きているのは1930年代、大恐慌の時代であり、明日の生活にも困るような状況にありました。そして彼には子供が三人いる。空腹のためか息子はサラミソーセージを盗むのですが、息子を叱りとばさずにいっしょに肉屋に謝りに行き、「(どんなに貧乏だったとしても)おまえをぜったによそにはやらない」と約束する。そして約束と家族を守るために、みずからの拳で闘うわけです。闘うひとだけれども横暴ではない。チャンピオンに冒涜されても感情を荒げない。妻を愛していることを公然と言うし、ときには喧嘩もするけれども、それは家族を思ってのことだったりもします。子供たちにはほんとうに優しい。こんな父親になりたい。理想です。

名声から転落してどん底の生活を送っていたときに右の拳を骨折したのですが、そのおかげで肉体労働のときに左手を酷使しなければならず、ウィークポイントの左が強くなった、というエピソードがぼくは好きです。強さの理由が生活で培われたものだというのがいい。さらにその強さの背景には家族がいる。

全体的にフラッシュバックするシーンがよかった。ボクシングのシーンでも、映画的な演出というのがあると思います。映像のテンポもいいし、迫力がある。ロン・ハワード監督といえば、ダヴィンチ・コードもいよいよ公開になりますが、これは観てみたいと思っています。そして、「シンデレラマン」に関していえば、やはりラッセル・クロウが静かだけれども強い男として適役という気がしました。

仕事と趣味に消耗しつつあるのですが、誇りに思われる父になりたいものです。4月23日鑑賞。

公式サイト
http://www.movies.co.jp/cinderellaman/

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(27/100冊+29/100本)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)