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きみに読む物語

▽cinema06-041:現実の物語と書かれた物語。

B000HA4DZQきみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]
ニコラス・スパークス
ハピネット 2006-10-27

by G-Tools

「私の頭の中の消しゴム」にも似たテーマで、最近、記憶や脳に関することを主題として作られている映画や小説が多いような気がしました。それは流行のようなものかもしれないし、ぼく自身が興味を持っているから自然と引き寄せてしまうのかもしれません。介護施設で、年老いた男性がある認知症(老人性痴呆症)の女性に本(原題はTHE NOTEBOOK。ノートに書かれた物語)を読み聞かせます。読み聞かせる内容は、裕福な家に生れたアリーと、カーニバルの夜に彼女にひとめぼれしてしまったノアという男性の物語です。

ノアは肉体労働者で、彼女とはまったく育った環境が違う。フラッシュバックしてしまったのは、かつて学生時代にぼくもお嬢様的な女性を好きになってしまったことがあり、デートするためにアルバイトをして、デートが終わると江戸川区の風呂なし四畳半のアパートに帰ってカップ麺をすすっていました。毎年のように海外に旅行していて知的にも洗練されていた彼女と、地方から出てきたばかりで金もなければ自分らしい何かを持っているわけでもなかったぼくは、喧嘩することも多く、ぜったいにうまくいかないなと思っていたのですが(その通り、結局のところ別れてしまったのですが)、もしノアのように長い時間をかけても再会できることを信じて生きていくことができていれば何かが変わっただろうか、そんなことを考えました。こんな風に、もし・・・を思いめぐらせてしまうのも、物語として優れた映画のよさではあります。

なんとなく演出過多という印象もありました。いまぼくが求めている映画は、創られた演出がなく、静かに淡々と進行しながらそれでいて心に染みるような映画です。そんなわけで大袈裟な演出には少しひいてしまうのだけど、そうはいってもやはり感動しました。7月8日鑑賞。

公式サイト
http://kimiyomu.jp/

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(50/100冊+41/100本)

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2006年7月 2日

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ザスーラ

▽cinema06-038:仮想よりもリアルなゲーム。

B000EDWVO6ザスーラ [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-04-16

by G-Tools

家族でみたのですが、長男のツボにはまったらしく立ち上がって興奮して観ていました。それどころか、二度も観ようとしたのでさすがにぼくの方がうんざりしてしまったのですが、なんとなくわかるような気がする。たぶん、9歳ぐらいの少年にとって、現実と仮想が境界なく入り混じるような物語にものすごく惹かれるのでしょう。NHKの少年ドラマシリーズなどというものが遠い昔にありましたが、それに近い感じでしょうか。

兄と弟、そして年齢の離れたお姉さんがいる家族ですが、兄弟げんかしているうちに弟が地下で「ザスーラ」というゲームをみつけてしまう。これは宇宙を舞台にしたボードゲームというかスゴロクのようなもので、ネジを巻くと駒が動いてカードが出てくる。しかしながら、そのカードに書かれていることが実際に起こってしまうわけです。流星雨が発生、というと、ちいさな隕石が降り注いでリビングにぼこぼこの穴が空いてしまう。ロボットが故障、というとロボットが出てきて襲ってくる。宇宙飛行士が登場したり、いきなりワニのような異星人に攻撃されたり、さんざんなことになる。この玩具のスゴロクに運命が託されていてゴールしないと、地球には戻れないわけです。

エンターテイメントの背景に、兄弟の対立と和解というテーマもあるのですが、そのあたりのテーマを息子が理解していたかどうかは不明です。ちょっと恥ずかしいかも。この作品を面白がるとすると、スパイキッズあたりもいけそうだろうか。最近、息子といっしょに観る映画鑑賞にはまりつつあります。7月2日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(46/100冊+38/100本)

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ランド・オブ・プレンティ

▽cinema06-039:正しさがいくつもある社会がどこへ向うか。

B000EPFPBUランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション [DVD]
ヴィム・ヴェンダース
アスミック 2006-05-12

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静かな、よい映画でした。久し振りに泣けた。9・11から2年後のアメリカ、ベトナム戦争の後遺症を抱えているポールはひとりでテロを発見し、アメリカを守ろうとしています。そこに、姪であるラナが10年ぶりにもう他界してしまった母(ポールにとっては妹)の手紙を届けようとやってくる。ポールは戦争の余韻とテロに対する憎しみから、世界のすべてをテロ的な視点から眺めているのだけど、ラナとの交流のなかで閉ざされていた心が開いていく。もちろん開いていく過程には、混乱して泥酔してぼろぼろになったりもするのだけど。

憎しみというフィルターで世界を眺めると、どんなに平和な光景もテロのための何かに見えてくる。洗剤のダンボールに執拗にこだわり、それがテロのための化学兵器を作るための準備だと妄想を広げて、ものすごい装備で偵察をするポールは滑稽ですらあるのですが、ひとつの感情でしか世界をとらえられなくなったとき、心にはブラインドが落ちてポールのようになりかねないと思いました。

映像的にもすばらしい。夕焼けの色など感動的です。それでいて美しいだけではない。アメリカの貧困であるとか、病んでいる部分も映し出している。9・11のときにイスラエルでは喝采があがった、どうしようもないけれどそれが普通のひとたちだ、というエピソードも語られるのですが、戦争というのも正しさがいくつもあるから生じるわけで、ある国家の正義は別の国家の悪でもある。けれどもそういう社会においても、人間であることの優しさであるとか、救われる方法というのはきっとあるような気がしました。

ヴィム・ヴェンダース監督の解説では、この映画が批判的であることを認めながらも、家族の物語を描くことでアメリカの正しさとは何かを問いただそうとしたこと、そして批判は愛情がなければできない、というようなことを語られていて共感しました。7月2日鑑賞。

公式サイト
http://landofplenty.jp/

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(46/100冊+39/100本)

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2006年6月24日

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鉄人28号

▽cinema06-035:育っていく、そして継承されるヒーロー。

B000B6H6D2鉄人28号 デラックス版 [DVD]
横山光輝
ジェネオン エンタテインメント 2005-11-25

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昔のヒーローはとにかく強かった。もちろんストーリーの流れのなかで挫折やピンチがあったとしても、すぐに前向きに復帰して、最後はハッピーエンドでした。ところが最近のヒーローはどこか完全無敵ではなくて、妙に生活を感じさせるような失敗やネガティブな面もさらけ出しているような気がします。息子とウルトラマンメビウスをみていてうーむと思ったのが、最初にメビウスが怪獣と闘うとき、どう闘っていいのかわからずにぼーっとしている。そのうち回転してビルを壊しちゃうのですが、地上にいる隊員から「なんて下手くそな闘い方だっ!」とか叱られてしまうシーンがありました。思わず笑ってしまったのですが、人間に叱られるウルトラマンというのは絶対的なヒーローではなく、なんとなくヒューマンな感じもしました。つまりカリスマ的な存在であっても、そんな弱みがあることが逆にヒーローの条件かもしれません。

昭和の頃の夢を実写で表現したのが鉄人28号だと思うのですが、家族で観ました。やはり最初から強いわけではなく(しかも色も鉄人カラーの青ではなく銀色で)、正太郎くんもラジコンの飛行機はうまく操縦できるけど鉄人操縦のプレッシャーに押しつぶされたりして、鉄人をごろごろと転がしてしまい、ビルを壊しまくります。ありゃりゃーという感じです。それでも諦めずにカイゼンしていく。一度ブラックオックスに負けたあと、バーチャルリアリティーらしきゴーグルの新しいコントローラで闘うのですが、コントローラは最先端ですが、鉄人をハードウェア的に組み立てている工場では旋盤が回っていて、いかにも職人らしきおじさんが頑張っている。そのおじさんたちが正太郎くんを応援していたりする。諦めずに粘り強くカイゼンすること、力を合わせて敵と戦う姿勢に、昭和のノスタルジーを感じました。いまそんな力を失いつつあるのではないでしょうか。

たぶん映画ファンからすると、デビルマンにしても鉄人28号にしてもULTRAMANにしても、酷評されるのではないかと思います。でも、ぼくはいいと思いますね。息子も楽しんでいたし。リメイクして古い時代の文化を新しい未来につないでいくのは大切なことです。

「破壊するために何かをつくったわけじゃない」というような正太郎くんの言葉が心に残りました。悪役のブラックオックスですが、操縦しているマッドサイエンティストっぽい宅見零児にも、息子をなくしてしまってロボットに息子の姿をみている哀しさもあり、せつないものがあった。正太郎くんの父は事故で亡くなってしまっているのだけれど、息子に託した「信じて進め」という言葉もよかったし、回想シーンはじわっときました。一方、社会的な観点からは、ブラックオックスの出現が「テロ」であることにも、なるほどと思いました。近い将来ロボットによるテロなんてこともあるのでしょうか。6月24日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(43/100冊+35/100本)

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2006年5月28日

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ストレイト・ストーリー

▽cinema06-034:ゆっくり生きましょう。

B0000A4HSJストレイト・ストーリー [DVD]
ポニーキャニオン 2005-03-02

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映画は旅のようなものかもしれないし、また人生かもしれません。すぐれた映画を観終わると、すばらしい人生を経験したような気持ちになります。この映画は、73歳のアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)が兄が脳卒中で倒れたという知らせを聞き、500キロ離れた兄のところへ行くというそれだけの物語です。しかもどうやって行くかというと、おんぼろのトラクターに乗っていく。

ちょうど老いや死について考えていた時期でもあり、脳梗塞で倒れて亡くなった父のことを思い出してブログに書いたりしていたので、この設定だけで泣けました。さらに何に泣けたかというと、トラクターに乗ってごとごと走るアルヴィンにオーヴァーラップするような麦畑など、ぜんぜんストーリーには関係ない映像です。旅の途中でさまざまなひとと出会い、自らの過去を振り返ったりもするのですが、このささやかなエピソードが心に染みます。あたたかい気持ちになれる。家族は束ねた木の枝のようなものだ、とか、年老いて最悪なのは若い頃を覚えていることだ、とか、兄ライルとはうぬぼれや怒りから10年も仲違いしていたのですが、兄弟は兄弟、とか、台詞だけでもぐっとくるものがありました。

老人のロードムービーともいえます。監督はデヴィッド・リンチ監督であり、しかしながら難解なあちら側の世界的なものはひとつもありません。タイトルの通り、ストレートに心に響く映画です。とはいえ、最初に旅に出たときに、おんぼろのトラクターがエンストして小型トラックに積まれてすぐに帰ってきてしまうのですが、黙って猟銃を持ってきたかと思うと、どかんと撃っておんぼろトラクターを爆破してしまうユーモアには、デヴィッド・リンチ監督らしいものを感じました。

子供の頃のように兄とふたりで星空を眺めたい、というそれだけで、ごとごとトラクターを運転する。途中で、クルマで送ってやろうか、半日あれば行ける、という親切なひともいるのですが、初志貫徹で断ってそれから何日もかけて兄のところへ行くわけです。でも、急ぐ必要なないし、時間もたっぷりある。忙しすぎる生活のなかで、こんな風にゆっくり生きてみることもよいものです。5月28日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(38/100冊+34/100本)

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