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2007年4月22日

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レディ・イン・ザ・ウォーター

▼Cinema07-014:人間の役割、つながっている世界。

B000MTONDEレディ・イン・ザ・ウォーター
ポール・ジアマッティ ブライス・ダラス・ハワード ジェフリー・ライト
ワーナー・ホーム・ビデオ 2007-04-06

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「アンブレイカブル」「ヴィレッジ」「サイン」など、M・ナイト・シャマラン監督の作品に共通していえるのは、謎の答えを出さないことではないでしょうか。不思議を不思議として認める、ということかもしれません。たいてい多くのサスペンスであるとか、SFの映画では、最後に種明かしをして終わります。もちろん、M・ナイト・シャマラン監督の作品にも種明かしはありますが、それでも大きなレベルで不思議な雰囲気が薄い霧のように残る。それがいい。

「レディ・イン・ザ・ウォーター」は、とあるアパートのプールに住む海の妖精が、妖精の世界に帰ろうとしている。ところが彼女が水からあがったとき襲ってくる悪いけだものがいて、彼女は傷を負う。アパートの管理人クリーブランドが中心となって、彼女を助けようとする物語です。はたして彼女は、おおきな鳥に連れられて、妖精の世界に帰ることができるのか・・・。

おとぎ話のなかに彼女のことが出てくるということから、おとぎ話を参考にしてアパートの個性的な住人たちが知恵を絞って考えます。そして、それぞれがおとぎ話のなかの役割を担おうとする。人間は、ひとりで生きている存在ではなくて、大きな全体のなかで個々の役割がある。彼女を救うのは「記号論者(シンボリスト)・守護者(ガーディアン)・職人(ギルド)・治癒者(ヒーラー)」だそうです。が、いままでふつうの生活をしてきて、あなたは守護神だろう、と言われたとしても、え、いやーぼくはふつうのひとですよ、そんな超能力ないですって(苦笑)と戸惑う気持ちはすごくわかる。現実と非現実が奇妙に交差する世界のなかで、誰もが戸惑いながらそれでも海の妖精を救うために力を合わせる。

つらい過去のためにどもりながら寡黙な生活をしている管理人クリーブランドが、封印していた言葉を涙ながらに語りはじめるシーンでは泣けた。妖精ストーリー(ブライス・ダラス・ハワード)のこの世のものとは思えない、はかなげな顔、容姿が印象に残りました。4月22日鑑賞。

公式サイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/

*年間映画50本プロジェクト(14/50本)

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2007年4月14日

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トゥモロー・ワールド

▼Cinema07-013:子供こそが未来。

B000KIX9BOトゥモロー・ワールド プレミアム・エディション
クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン
ポニーキャニオン 2007-03-21

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2027年の近未来を描いた映画なのですが、ボディスーツもなければハイテク機器もありません。この映画で描かれているのは“人類が子供を生めなくなった未来”だからです。

少子化社会といわれていますが、まったく子供が生まれない社会というのは想像したことがありませんでした。その世界では、長寿ではなく、人類最年少の少年(18歳)がもてはやされ、彼がファンに殺害されたニュースが大々的に報道されていたりする。面食らったのですが、逆になんだかリアルです。

大人たちだけの世界というのは、もう未来がみえません。だからほんとうに荒みまくっています。美術品も破壊されるし、暴動も起きる。映画のなかで、世界中がテロで荒んでいて、ただイギリスの一部だけが存続している。そのイギリスでも移民を拒絶することによって、政府と地下組織のようなものが対立しています。そこに世界の運命を変えるひとりの少女が登場して、かつては活動家で現在はエネルギー省に勤めているセオが彼女を擁護して、ある場所へ連れていこうとするのですが・・・。

詳細はネタバレになるので避けますが、この映画は未来を描いたSFというよりも、戦争映画に近い感覚でした。アクション映画ですね。暴力的なシーンも多いのだけど、そんな荒廃した世界でもやさしく生きているひとたちもいて、その姿には胸を打つものがある。

歴史を過去から現在、そして未来につないでいるものは、大人ではなく子供たちではないか。子供を守ろうとするときに戦争に向かう暴力も止まる。ただ、タイトルはどうかと思いましたね(苦笑)。原題は「CHILDREN OF MEN」で、確かにそのままではいまひとつなのですが、トゥモロー・ワールドというと、どうしてもアンドロイドやハイテクな乗り物の映画を想像してしまいます。残念ながら、そういう映画ではありませんでした。4月14日観賞。

公式サイト

http://www.tomorrow-world.com/

*年間映画50本プロジェクト(13/50本)

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2007年4月 7日

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ブロークンフラワーズ

▼Cinema07-012:過去に会いに行くロードムービー。

B000I8O8Y8ブロークンフラワーズ
ジム・ジャームッシュ
レントラックジャパン 2006-11-24

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女たらしといえばドン・ファンですが、「ブロークンフラワーズ」はドンという名の中年の独身男が、過去に付き合った女性たちを訪ねるロードムービーです。

ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)はコンピュータ成金で、悠々としたリタイア生活を送っています。けれども独身貴族の彼は、結婚には興味がない。そんなわけで一緒に暮らしている女性に愛想をつかされて、出て行かれてしまう。なんとなく凹んでいると、20年前に付き合ったという女性から、ピンクの封筒に入った手紙が届きます。

手紙には、あなたと別れた後であなたの子供を生んだ、19歳になる息子が父親であるあなたを探しに行くのでそのつもりで、のようなことが書かれているわけです。けれども署名は何もなくて、誰なのか思い出せない。

彼の隣人が推理小説好きのおせっかいな男で、ドンに、これは何かの啓示だ、20年前に付き合った女を全部思い出せ、リストアップしろ、ネットで住所を探したから会いに行け、レンタカー借りといたぞ、のような感じですべてお膳立てしてしまい、彼は仕方なく過去の女性に会うために旅に出ます。

女性を見つけ出す鍵は「ピンク色(封筒)」「タイプライター(手紙の文字がタイプだった)」で、ドンは交通事故で亡くなった彼女を含めて5人の女性に会う。未亡人になってしまった昔の彼女と一夜を過ごすようないいこともあれば(その娘も裸でふらふらしていたりする)、野蛮な暴走族風の旦那(?)にぶん殴られることもある。それぞれの女性がそれぞれの人生を歩んでいて、不動産ビジネスで儲けて立派な家に住みながら子供を生まない選択をして殺伐とした生活を送っているひともいれば、動物と会話できるというあやしいドクターになってしまったひともいる。そんな彼女たちに、ドンはコンサバティブなスーツ+ピンクの花束という、おせっかいな隣人が仕立てたままの格好で会いに行きます。

ドンの旅はいわば過去に再会するための旅であり、彼が選択しなかった未来を傍観者として確認するための旅でもあります。もし彼女と付き合っていたら・・・という「もし」の世界を、再会した現在の彼女たちの姿に重ねてしまう。空白の時間を飛び越えて再会すると、とんでもなく変わっていたりもして、それでも時空を埋めるような仲になれる女性もいる。

幸運か残念なことか、ぼくは過去にお付き合いさせていただいた(妙にへりくだってるなー)女性とばったり遭遇することはないし、また探しに行くようなストーカー的な気分にもならないのですが、どうしているのかな?と思うことはあります。できれば遠くで、しあわせになっていてほしいものです。ネットがこれだけ活発になると、リアルライフはともかく、ネットで遭遇することもありそうですけどね(ひょっとしたら、ひそかにブログとか読まれていたりして)。

ドンが訪問する女性たちの家には、ピンク色の何か(バスローブであったり、名刺であったり、バイクのタンクであったり)があって、これが手紙を出した彼女かな?と期待させる。期待させるけれども、はっきりとはわかりません。物語の筋は単純なのですが、なんとなく疑問符を抱えつつ、さあ次の彼女だ、のような感じで好奇心が旅を急がせるような感覚がありました。

クルマでとんでもない田舎まで旅をするビル・マーレイの寡黙な感じがちょっと可笑しくて、特に台詞のない映像の間が秀逸でした。彼の魅力を引き出していると思います。ジム・ジャームッシュ監督の才能を感じます。サンドイッチをおごってやった若者に「過去は終わっちゃったし、未来はいまからでもどうにでもなる、現在が大事だ」などと語る言葉も印象的でした。

現在の自分がいちばんであり、生きてきたことに後悔していない、というような諦めにも近い安堵感がありながら、どこかにいるかもしれない隠し子の存在をほのかに期待してしまう動揺がよかった。成金で成功してリタイアしたし、人生を充分に楽しんで、もはや人生そのものを飽いてしまっていて、結婚もしていないけれど、やっぱり父親にもなってみたい、深層では家族のつながりを求めているドンの気持ちがよく描かれていると思います。

大笑いはしないけれど、口の端が緩むような上質のコメディです。観賞後に淡いようなあったかい気持ちを感じて、ほのぼのとしました。4月7日観賞。

*年間映画50本プロジェクト(12/50本)

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2007年4月 2日

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ヴァージン・スーサイズ

▼Cinema011:行き場のない想いと木漏れ日のような輝きと儚さ。

B00005HTH1ヴァージン・スーサイズ
ジェームズ・ウッズ, キャスリーン・ターナー, キルステン・ダンスト, ジョシュ・ハートネット, ソフィア・コッポラ
東北新社 2001-02-02

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まず、映画とは関係のないプライベートなことを。日曜日、もうすぐ90歳になるおばあさんの体調が思わしくなく、息子たちを連れて奥さんは実家(の母親の実家)に帰っていました。久し振りの独身生活ということで羽を伸ばしてしまったのですが、夜、お酒を飲みながら映画でも観るかーという感じで観はじめたのが「ヴァージン・スーサイズ」でした。

これがもう泣ける泣ける。ぼろぼろです。そこで、がんがんアルコールを煽ってしまい、酩酊して沈没。で、昨日はブログを書けませんでした(苦笑)。おまけに風邪もひいてしまって今日は声はがらがらだし。

というぐらい泣けた映画です(どういう映画だ・・・)。何よりもテーマ音楽がいい。もちろん映像もいいのですが。

いま酔いが醒めて考えてみると、ぼろぼろ泣くような映画ではないんじゃないの、と冷静な自分がいます。ロッキーならまだしも、ソフィア・コッポラの作品を観て泣いてる男ってどうだ?とも思う。けれども映画や音楽や小説には、観どき、聴きどき、読みどき、というものがあると思います。生活のなかのさまざまな文脈が絡んでくるときもある。たぶん複雑な状況下にあって、昨日はこの映画がめちゃめちゃツボにはまったのではないでしょうか。

前置きはこれぐらいにして、本題です。

「ヴァージン・スーサイズ」は10代の美しい4人姉妹をめぐる物語です。彼女たちは微妙な年頃ということもあって、異性や音楽など、さまざまなものに関心を持ちながら、一方では現実に対する漠然とした閉塞感も感じている。母親の厳しさのために、ますます行き場のない想いを募らせていきます。そして彼女たちは...。

物語的には少々うすっぺらな感じもしますが、どこか映像詩のようで、青春時代のきらきら感と儚さを感じました。

特にきらきら感と儚さを感じたのは、パーティーのシーンですね。ソフィア・コッポラ監督といえば、「ロスト・イン・トランスレーション」も観たことがあるのですが、あの映画でも、全体のなかでは異様に長すぎるカラオケのシーンがよかった。酔っ払って、はめを外して、世界がなんだかとてもきれいにみえて、楽しいのだけれど永遠につづくものではなく、目が覚めて現実に引き戻されると自己嫌悪に陥ったりもする。ソフィア・コッポラ監督は、そんな祭りの後に訪れるような儚さ、切なさを描くのがうまい監督ではないでしょうか。そもそも酔っ払ってどんちゃん騒ぎをして反省を繰り返すような儚い時代が青春ともいえるわけで。

彼女たちがボーイフレンドに電話をかけて、音楽で会話するところもよかったですね。あやふやな記憶を辿ると、トッド・ラングレンとかキャロル・キングとか、レコードをお互いにかけあって音楽で(歌詞を引用して)自分たちの気持ちを表現していたと思います。両親に知られないための暗号なのですが、これってかなり音楽を聞き込んでいないとできません。直接、言葉を交わすわけではないのだけれど、それでもお互いに通じている。その間接的に想いを伝える遠さがいいですね。音楽でコミュニケーションできている。いいなあ(しみじみ)。

けれどもそのレコードも、母親に燃やされてしまいます。エアロスミスは勘弁して、などと泣きながら懇願するのだけれど、大切にしていた音楽を暖炉にくべられたら、ぼくも暴れると思う。痛みが伝わってくる場面でした。

残念ながら最近のソフィア・コッポラ監督の「マリー・アントワネット」は観ていないのですが、これも泣けるかもしれない。いつか観ようと思います。時期が熟したときに。というか、DVDになったときってことか?4月1日観賞。

*年間映画50本プロジェクト(11/50本)

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2007年3月18日

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スイミング・プール

▼Cinema07-010:なんとなく盛り上がれないミステリー映画。

B0001X9D5Oスイミング・プール 無修正版
シャーロット・ランプリング リュディヴィーヌ・サニエ フランソワ・オゾン
東北新社 2005-01-21

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テーマ音楽が不安感をそそるいい感じで、フランスの避暑地の殺人事件という場面設定にも惹かれて借りてきました。イギリスの女流ミステリー作家サラは何となくスランプ気味で、出版社の社長からフランスにある彼の別荘で書いてみたらどうか、と薦められます。快適な別荘で、その社長の到着を待っているのだけれど、やってきたのは社長ではなく彼の娘と名乗るジュリーです。


このジュリーが奔放な女性で、毎日違う男を家に連れ込む。静かに創作活動に耽るはずだったサラは、すっかり調子を狂わされて彼女と対立するわけですが、やがて彼女の生い立ちなどに関心を持ちはじめる。そしてふたりをめぐる殺人事件が・・・。


ハレーションを起こしたような明るいリゾート地で進展する暗いストーリーという明暗のコントラストがよくて、わずかながらツイン・ピークス的な地方ゆえの人間関係のもつれと隠蔽された過去などが興味をそそるのですが、ぼくの感想をいえば、いまひとつ盛り上がれない感じがしました。ネタバレになってしまうので結末を述べるのは避けますが、ああそうですか、ぐらいの納得しかなかった。


とはいえ、なんとなく背徳というか後ろめたい文学的なトーンがよい。神経質で、凛としていて、それでいてどこかネジの外れたような中年の女流小説家サラを演じるシャーロット・ランプリングが、成熟した雰囲気を出していてよかったです。天候のはっきりしないイギリス的な空気を醸し出しています。3月12日観賞。


公式サイト(ENTERを押すと、音が出るのでご注意ください。でも、この音楽が好みなんですけど)
http://www.gaga.ne.jp/swimmingpool/


*年間映画50本プロジェクト(10/50本)

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