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「デザインの輪郭」深澤直人

▼book06-044:最終形としてのシンプルライフ。

4887062605デザインの輪郭
TOTO出版 2005-11-10

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ちょうど同時に武満徹さんの「Visoins in Time」を読んでいるのですが、映画音楽について、映画そのものが饒舌であり音楽にあふれているものだから、「映画から音を削るということの方を大事に考えている」ということが書かれていて、深澤さんの感覚に近いものを感じました。考えない、手垢にまみれないものをデザインしたい、ということにぼくは深く共感を得ていて、いまぼくは過剰にいろいろな情報を収集したりアウトプットしていたりするのだけれど、最後に到達したいのは、何もないけど自分がいる、というような境地であるような気がしました。音楽でいうと、ぽーんと音が鳴ってそれでおしまい、あとはその音の余韻が水面に波紋のように広がっていく、というような。実はごちゃごちゃ言葉を書き連ねたり、テクノロジーを駆使して分厚い音を創るよりもそっちの方が困難極まりないもので、きっとそれは雑念や邪念にあふれている若い時期には到底できないもののような気がします。あらゆるぐちゃぐちゃを経験したあとで、ふっとその陽だまりのようなシンプルな場所に突き抜けたい。それがぼくの希望であり、その希望の可能性を感じさせてくれる本でした。6月28日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(44 /100冊+35/100本)

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2006年6月24日

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「1歳から100歳の夢」日本ドリームプロジェクト

▼book06-043:100人分の夢を想う。

49020970871歳から100歳の夢
日本ドリームプロジェクト
いろは出版 2006-04

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いつになくゆっくりと読んだ本でした。以前にエントリを書いたのですが、この本は1歳から100歳までのふつうのひとの夢を、顔写真と文章でまとめたものです。世代を超えた卒業文集のような感じでしょうか。言葉を味わい、笑顔を眺めつつ、ゆっくりと1ページ1ページをめくり、それぞれの方が抱えている夢と、夢の背後にずーっとつづいている生活のことを考えました。たぶん夢などの甘い言葉ではすまされない辛い時期もあったことだと思います。大病をしたり、心の闇に落ち込んだり、2ページでは埋められないぐらいの100人ぶんの人生が本の向こう側に広がっている。夢は大事だと思いました。そして大きすぎる夢を追うのではなく、等身大の夢を楽しめるような人間でいたい。詳しいことは知らないのですが、いろは出版はユニークな視点で、よい本を作っていると思いました。個人が夢を持つことが、最終的には社会をよりよく変えていくことだとぼくも思う。読み終えたので、この本は田舎の母に送るつもりです。6月24日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(43/100冊+34/100本)

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2006年6月13日

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「出現する未来」P. センゲ , O. シャーマー , J. ジャウォースキー , 野中 郁次郎 , 高遠 裕子

▼book06-042:個のなかに息吹く全体を出現させること。

4062820196出現する未来 (講談社BIZ)
講談社 2006-05-30

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最近ぼくが考えていることに最も近く、だから手にとって購入してしまったのですが、非常に考えるところの多い書物であり、機会があればブログで取り上げて深く考察してみたいと思っています。全体の意思を宇宙的な観点から展開するスピリチュアルな表現にはぼくは入り込めず、宗教的な部分にどっぷりと浸かると思考を停止させてしまう恐れを感じているのですが、「分割できない全体性」をどちらかというと西洋的というよりも仏教的な観点から追求し、経営学や認知科学や哲学を統合するアプローチには共感を得ました。

「U理論」を軸に展開しているのですが、U理論とは、まずありのままに見たり感じ取ること(センシング)、思考の流れを一度止めて自分を捨てて内省すること(プレゼンシング)、そこからまた流れを生み素早く行動すること(リアライジング)の3つの状態をあらわしています。

「私」を捨てて内省する状態が「無」の境地であり、そこで世界という全体とつながる。つながった関係性のなかから未来を出現させる。といってしまうと、かなりスピリチュアルで、どうかなとも思うのですが、ぼくがなるほどと思ったのは、自分というものは世界との関係性によって生成する「出現しつつある未来」のなかにしか存在しないということです。つまり絶対的な自己というものはない。そして世界とつながっている以上、個のなかに「世界」がある。

たとえば、「介護社会を変える」といっても問題が大きすぎて、手に負えません。ところが「ボケ始めた姉に困っている田舎の母親の相談にのる」ことならできる。そして、このぼくの生活という個のなかに、実は「出現しつつある未来(=母がボケたときにどうするか、そしてもっと大きな介護社会の問題)」があり、そのことをシミュレーションして考えることで、未来の自分の行動をリアライジングできるわけです。つまり、未来はいま仮想的に考えているぼくの思考のなかにある。

ブログで社会を変えられるのか、という課題も、この視点から論じることができそうです。さらに深いテーマもいくつかあるのですが、いずれまた。6月13日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(42/100冊+34/100本)

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2006年6月10日

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「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚

▼book06-041:すべてを破壊し、私企業は神になるのか。

4166605011グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)
文藝春秋 2006-04

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スタートは非常に優秀な学生ふたりが立ち上げたベンチャーだったかと思うのですが、グーグルのやってきたこと、やろうとしていることは、かなりスケールが大きいと思います。この本では、テクノロジーだけでなく、たとえば羽田で駐車場サービスをやっている夫婦の企業にとってグーグルは何をもたらしたか、というようなプロジェクトX的なエピソードを盛り込みつつ、さまざまな視点からグーグルの意義を検証していきます。新聞社でお仕事をされていた佐々木さんの文章は非常にわかりやすく、ああそういうことだったのか、と過去の出来事を再考することができます。

しかし、個人的な感想としては、広告ビジネス的なとらえ方はいまひとつ興味をひきませんでした。確かに、アドセンスなどのキーワード広告は画期的なものだったかもしれないし、その広告収益が企業を大きく変えたともいえるのですが、ではグーグルは広告業かというと、そうではないような気がする。

ぼくはグーグルは、情報の供給をライフラインに変えるようなビジネスという気がしました。ありきたりといえますが、かつてインターネットによるネットワークのインフラがライフラインに変わる、という表現があったかと思います。それは電気や水道と同じように、ネットワークの回線が生活に必要なものとなるということですが、インターネットで重要なのは回線はもちろんそこで供給される内容で、その内容によってはインターネットは電話にもなれば銀行にもなるし、テレビになったかと思うと雑誌だったりもする。職業安定所にもなれば政府にもなる。

プライベートなものであれ、パブリックなものであれ、ここでやりとりされているのは情報です。つまり生活に必要なあらゆる情報をタダで提供しますよ、というところがすごい。それはもはや検索でもなくて、情報を水や電気のように供給するビジネスです(水や電気だって有料ですが)。停電のように、グーグルが止まったら都会では生活できないようになるかもしれない。

それが権力だと思います。だから政治に左右されると非常に怖いものになるし、この本のなかでは新しい監視社会像というものが書かれていて、映画の「マイノリティレポート」のようにすべての人間の情報がデータベース管理される恐ろしさにも言及されている。そういえばグーグルは遺伝子情報をデータベース化する話もなかったっけ?などと思い出し、ちょっと身震いしました。学生の頃にガス代や電話代が払えないと、社会から取り残されたような気持ちになったものですが、危険な情報を配信している、ということでグーグル八分となったとき、自分の情報が検索に引っかからなくなるぐらいならいいのですが、アドレスやIDで遮断して情報そのものを提供してもらえなくなったりしたらかなしすぎる、などと思いました。6月8日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(41/100冊+34/100本)

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2006年6月 6日

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「「個」を見つめるダイアローグ」伊藤穰一

▼Books040:外側の思考の大切さ。

4478942269「個」を見つめるダイアローグ
ダイヤモンド社 2006-05-26

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内輪で過ごす時間はしあわせです。わかりあったものたちの間では説明する言葉も必要ないし、波風を立てずに、まあまあそういわずに一杯、という馴れ合いの感じになるものです。内輪だから許されることもあります。インターネットという内輪のなかだけで通用する表現もある。膨大な揚げ足取りと誹謗や中傷が繰り返されるのも、閉ざされた世界だから許容されているのかもしれません。

けれどもぼくはこの本を読んで、もっと視線を外に向けなきゃいけない、社会のこと、日本のこと、そして世界のことにも目を向けたほうがよい、とあらためて思いました。伊藤穣一さんも村上龍さんも、日本はもちろんさまざまな世界で活躍している日本人です。最近、多くのスポーツ選手も海外に出て行くようになりました。世界を視野に入れるのはなかなか勇気がいることですが、志は高く持っていたいものです。

ところで、グローバルな考え方というのは英語ができるということではなくて、意識の問題かもしれません。そのひとつの重要なキーワードが、この本のなかにも何度か出てくる「リスペクト」だと思います。ぼくは単純にリスペクトは「尊敬」だと思っていたのですが、なんとなく読後に意味が変わってきた。尊敬という、偉い・偉くないというレベルの話ではない。つまり、リスペクトというのは、まったく違う環境に育って、違う文化を持ち、考え方が異なる他者に対して、自分とはまったく違う「個」であることを、ありのままに認める姿勢ではないでしょうか。

ぬるま湯のなかにどっぷりと浸かっているぼくですが、もう少し危機感をもってみようか、などと考えました。まずは海外のサイトを英語で読んでみようと思っています。英語、苦手なのですが。6月6日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(40/100冊+34/100本)

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