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2006年2月23日

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「ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング」シックス・アパート株式会社

▼book06-018:デザイナーとプログラマーの子供。

4822244946ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング
シックス・アパート株式会社
日経BP社 2005-12-28

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読みものというよりも実用書として充実した内容でした。どちらかというと雑誌(ムック)的な本です。ブログについての概要、29manブログで有名な渡辺英輝さんによる実況中継的な企画のフロー紹介、4社に取材した詳細な事例、シックス・アパート社の歴史、そして巻末資料としてビジネスブログ100社カタログが掲載されています。巻末の資料が結構役立っています。インターネットではなくて印刷物なので、掲載されているURLをいちいち打ち込まなければならないのが、面倒といえば面倒なんですが。

実用書的な内容はもちろん、ぼくがこの本でいいなあと思ったのは、シックス・アパート社の歴史「ブログことはじめ」でした。

シックス・アパート社といえばMovable Typeというブログのシステムで有名です。会社にもイントラで導入されているし、さらにぼくはココログで同窓会ブログの運営を試しているのですが、こちらはTypePadがベースです。したがって、やはりシックス・アパート社のシステムは馴染みが深い。

その成り立ちとは、デザイナーだったミナ・トロットさんとプログラマーのベン・トロットさんという、おしどり夫婦から生まれたとのこと。ふたりは高校で知り合って9年間お付き合いしたのちに結婚。そして23歳のときにMovable Typeが生まれました。

簡単にまとめてみると、デザイナーのミナさんは(なんか皆さんみたいだ)、自分の表現したデザインをブログでみんなに見てもらいたかった。さらに、せっかく見てくれたのならコメントがほしかった。作品集として保存(アーカイブ)もしたかった。そんな奥さんの要望を夫でありプログラマーのベンさん(和田勉さんみたいだ)が理解し、実際に開発して夢をかなえてあげた。これがMovableTypeだそうです。だから当初は「個人的なニーズを満たすためのツール」、要するに奥さんがインターネットでデザインを発表するためのシステムだったわけです。けれども「なるべく多くの人に使ってもらって、感想を聞きたい」ということから無料で配布。予想以上のダウンロードがあって、そのあと有償に切り替えたとのこと。

なんとなく絵本のおとぎ話風のサクセスストーリーですが、こころ温まるものがありました。デザイナーとプログラマーの夫婦の2つの異なる遺伝子が合わさった製品(子供のようなもの)であること。きっかけは奥さんの夢をかなえるという個人的な夢を発端としていたこと。奥さんには表現をみてもらいたいという切望があったこと。まずはとにかくビジネスよりもみんなに使ってもらおうという意思があったということ。そんなところに、惹かれます。

よいサービスであったり志の高い会社というのは、儲かることばかりではなく誰かのために何とかしてあげたいというような理想が掲げられているものではないでしょうか。ビジネスブログとは何か、何を大事にすればいいのか、という根本的な問いについて、間接的ではありますが、シックス・アパート社の誕生のエピソードが大きな示唆を与えてくれているような気がしています。

ところで、ひとつだけ気になったことですが(瑣末なことで申し訳ないのですが)、渡辺さんのパートで「企画のプランニング」という言葉は、なんか変な感じがしました。「企画のプレゼンテーション」が後にあるので、あえて「企画の」を付けた意図はわかりますが、ここは「プランニング」「プレゼンテーション」でよいと思いました。2月23日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(18/100冊+18/100本)

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2006年2月21日

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「おとなの小論文教室。」山田ズーニー

▼book06-017:この小論文教室は、痛い。

4309017444おとなの小論文教室。
河出書房新社 2006-01-07

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まいりました。特に前半の部分で、山田ズーニーさんの文章は痛いほど心に刺さりました。何度か涙が出そうになったほどです。今日の昼間に本屋で購入して、夜には一気に最後まで読み終えてしまいました。

正直なところ、ぼくは糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載されていた山田ズーニーさんの記事を読んだことはありませんでした。ところが、最近ぼくがブログに書いてきたキーワードがたくさん出てきて、自分でもびっくりしました。たとえば前半では「考える力」や「自分を表現する」ことの重要性。そして読者が大事であること。そのあとには「セルフプロデュース」という言葉も出てきます。まさに昨日20日のブログで書いたことです。

本気で何かを考え抜いたとき、人間の思考回路はある程度同じところに到達するのではないでしょうか。分野は異なっていたとしても、達人と呼ばれるひとたちの思考は似ているものです。ここ数日間、ぼくはたぶん山田ズーニーさんとかなり近い思考回路で、表現とは何か、ということを考えていたような気がします。しかしながら、ぼくにとってはシンクロしているような感覚があるけれど、客観的には違っているかもしれません。また、このシンクロ感覚も明日になれば消えているかもしれない。でも、かまわないと思います。ぼくにとっては言葉のひとつひとつが心のまんなかで共鳴するような感じがあり、一瞬だけでもその共鳴感覚を得られて幸せでした。

経験によって体得した言葉、余計なものを削ぎ落としていった言葉というのは、最終的にはやさしくてシンプルなものになると思います。けれども、どんなに簡単な言葉であっても、同じように苦しんだり考えつづけてきた経験があるひとにとってはわかる。一方で、そういう経験のないひとには別に心に刺さるようなこともなく、通り過ぎてしまう言葉かもしれません。

田坂広志さんの本を読んだときにも、ぼくはめちゃめちゃ感動したことがあったのですが、ひとによっては、なんじゃこりゃ?と思うだろうなという印象がありました。たぶんぼくの個人的な経験(と、本を読んだ時間および場所が呼び起こす何か)が共鳴したからこそ心に刺さるのであって、経験のないひとには、この感覚はわからないと思います。山田ズーニーさんの本も、ぼくのなかにある経験を引っ張り出すから、痛いんです。

書籍をはじめとして映画、音楽などの作品には、適切な出会う時間と場所があると思います。以前にも何かに書いたような気がしますが、果実に食べ頃の時期があるように、読み頃、観頃、聴き頃というようなものがある。その時期は絶対的なものではなく、読者によって異なるものだと思います。ぼくはこの本と、まさにベストな時期に出合うことができました。2月21日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(17/100冊+18/100本)

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2006年2月20日

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「EQマネージャー」デイビッド・R・カルーソ , ピーター・サロベイ , 渡辺 徹

▼book06-016:最終的に役には立ちましたが。

4492555285EQマネージャー
東洋経済新報社 2004-12-17

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辛辣で申し訳ないのですが、単刀直入に感じたことを結論から言ってしまうと、非常にまどろっこしい本でした。歯切れが悪いです。余計な引用が多すぎます。AかもしれないがBともいえるのように、あいまいな部分が多い。つまり感情(EQ)については研究が途上であり、きちんとした結果がないのでしょう。とはいえ、今日のブログで引用したように部分的には興味深い考察もあるので、たぶん冗長な部分を削除して半分ぐらいのボリューム(200ページぐらい)にすれば、非常に有用な本になるのではないでしょうか。2000円というのも高すぎます。1300円ぐらいでちょうどいい。

このまどろっこしさはどこかで感じたことがある、と考えて思いついたのですが、「書くことがないのに原稿用紙2枚を埋めなければならずに苦労して書いた息子の作文」でした。同じことを何度も繰り返したり、あるいは「楽しかった」「面白かった」のように抽象的な言葉を多用する。体系的にもなっていない気がします。

苛立ちに近いもやもやした気分を感じながら、あと何ページか気にしつつ、久し振りに早く終わった会社の帰りに喫茶店で読み終えたのですが、あと20ページ多かったとしたら、もやもやは確実に怒りに変わり、EQなんとかというシリーズの本全般に対する不買行動を起こしたかもしれません。しかしながら、このイライラはなんだろう、という感情分析ができたという意味で、最終的には役に立ちました。また、イライラを客観的にコントロールすることもできたような気がします。この本のおかげです。感謝しています。とはいえ、EQによる自己啓発セミナーに参加しませんか、と言われたら、申し訳ないのですが丁重にお断りしたいと思います。あまり効果は望めそうにないので。2月20日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(16/100冊+18/100本)

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2006年2月15日

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「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫

▼cinema06-015:冒険、思考の若さ、そしてオプティミズム。

4480062858ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
筑摩書房 2006-02-07

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感動しました。何度も読み直したい本です。読み進めながら何回もこのブログで引用もしているのですが、著者の梅田望夫さんは、CNETjapanで「英語で読むITトレンド」というブログを21カ月毎日書きつづけ(!)、現在はこの「はてな」の取締役も勤められています。ご自身のブログ「My Life Between Silicon Valley and Japan」の14日の日記では、この本が品切れ状況であることが書かれていました。当然だと思います。ものすごく内容の濃い本なので。ちなみに、梅田さんのブログはぼくと同じDeltaのテンプレートを利用されています。ちょっと嬉しい(でも真似したわけじゃありませんから)。

ブログを含めとした情報化社会の全体を「神の視点」により俯瞰した洞察もすごいのですが、経営コンサルタントとしてグーグルの何が凄いかを分析されていること、さらには後半には自分の人生観を盛り込まれていて、これが非常に感銘を受けました。失敗もされたようですが、自分のためになった、という姿勢にも共感。そして、常に「新しい自分」に刷新し、冒険する。世界を楽観的に見渡す、などなど、あらためてぼくの背筋を正してくれた本でした。頑張ろう!という気持ちになった。

ぼくはまだまだ自分の周囲のことばかりにかまけていて、どこかへ行きたいのだけれど行けないジレンマに常に悩まされています。けれども世界を見渡すよりも、まずは雑多で瑣末なことの多い自分の生活からはじめようという気がします。自分を、そして自分の息子たちの未来を引き受けなければ、大きなことも言えない。そんなちいさな「いまここ」を起点として、インターネットの未来を、そこに広がる世界を考えていこうと思います。2月15日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(15/100冊+16/100本)

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2006年2月 9日

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「ブログ 世界を変える個人メディア」ダン・ギルモア

▼book06-014:次世代のジャーナリスト。

4022500174ブログ 世界を変える個人メディア
平 和博
朝日新聞社 2005-08-05

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この本を発行している朝日新聞社が、まさにテレビCMで「それでも/私たちは信じている/言葉のチカラを。」として「ジャーナリスト宣言。」というキャッチコピーを掲げています。挑戦的であり、捨てばちとも思えるようなコピーですが、ぼくはブログはマスメディアのジャーナリズムに対抗するものではなく共存できるものではないかと思っています。組織的な取材力を発揮できたり、世のなかに影響力を与える最大なものは、やはりテレビであったり新聞であったりします。

もちろんブログも影響を与えるものになりつつあるかもしれないけど、アメリカはともかく、日本ではまだそれほどの力はないのでは?というのが実感です。それはたぶん論争よりも「あそこのお店が美味しいよ」「そうだよね」「この本面白かったよ」「じゃあ買ってみる」的な共感を大事にする日本の文化があるからかもしれません。ぼくはそれを悪いとは思わないし、むしろそういう楽しみがあっていいと思う。けれども、その一方で、これからの社会を担うようなひとたちは、生活という泥沼から社会や世界という高い青空を見上げたような文章をたくさん書いてほしいですね。そのための環境は整ってきたし、書こうと思えばきっと書ける。ぼくらの時代を凌ぐような何かをきっと創り出せる。

一方で、さまざまな制約があるプロのジャーナリズムに対して、ブログは感情や感覚によってストレートに書くことができることが、いちばんのメリットではないかと考えています。理屈では正しいとしても、ちょっと何かが心の片隅をざわざわとさせる、ということがあります。そうしたざわざわ感をすくい上げるのもブログのよさのひとつです。

最終章で、ダン・ギルモアの原稿に対してアドバイスをくれたひとのひとり、エルウィン・ジェンキンズのコメントから「ブロガーはジャーナリストじゃない。僕らは情報の探求者、情報の構築者、そして知識の創造者だ。」と引用されていますが、彼の言葉に共感を得ました。正確さや迅速性、フェアであること以外のことが、ブログには求められているんじゃないでしょうか。

原題「We the Media」はもともとブログによって書かれ、読者のたくさんのコメントなどによって中途段階で間違いを修正しつつ、本として完成していったとのこと。ということを考えると共創的でもあり、著者というよりも編集者に近いところもあったかもしれない。そしてクリエイティブ・コモンズの著作権ライセンスシステムにしたがっているので、本を販売するとともに、インターネットでは無料で全部をダウンロードできるというかたちになっていたようです。ダウンロードしたコンテンツはそれこそWiki化してインターネットを通じてサイトに再掲載して、次々と新しい情報で書き換えたり書き加えていくこともできる。印刷された活字として死んでしまうのではなく、遺伝子を継承しつつ次の世代の文脈のなかで生きつづけていくライブなテキスト、というわけです。

次世代のジャーナリストとは、彼のようなひとのことを言うのでしょう。日本にもそういう人物がきっと出てくるような気がしています。それにしても表紙の帯で笑っている堀江さんが、かなしいなあ。2月9日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(14/100冊+12/100本)

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