▼book10-07:ウッフィーが流通するギフト経済への期待。
今年に入ってからツイッター(Twitter)が流行っています。
ツイッターは140文字で「いま何をしている?」を投稿するミニブログです。PCやケータイから、生活のナマのことばをリアルタイムで発信できます。気のあう誰かとゆるくつながって、チャットのようなコミュニケーションも利用可能。自由度の高い機能が好評のようです。
たぶん週刊ダイヤモンドの1/23号「2010年ツイッターの旅」という特集がひとつの起爆剤になったと感じていますが、テレビなどニュースでも取り上げられ、多くの著名人や企業も使いはじめるようになりました。ブログ黎明期もそうだったように、最初のツイッター利用者は一部のIT関連中心のユーザーでした。ところがキャズム(普及の溝)を超えたのか、ぶわーっと一般のひとにも使われるようになりました。
タラ・ハントの「ツイッターノミクス」は、ツイッターという名前がタイトルにありますが、実際に書かれている内容はツイッターだけではありません。
SNSやWikiなどWeb2.0と呼ばれるツール群を使って、ぼくらの生活はどのように楽しいものに変わるか、という事例と指針をまとめた本です。著者自身の体験談が多く引用され、ひとりの利用者としての成功事例が魅力的です。
どちらかというと、ツイッターの初心者向けというよりも、ある程度コミュニケーションができていて、さらにフレンドリンクを活かして仕事を発展させたり、もっと楽しいことをしよう、というひと向けでしょうか。あるいはフリーランスの個人事業主向けともいえます。クリス・アンダーソンの「フリー」は、どちらかというと社会全体の構造やビジネスモデルを主眼においた本という印象ですが、タラ・ハントの視点は比較的、等身大といえます。
この本のなかで何度も使われるキーワードに「ウッフィー」があります。
おもわず、ミュージシャンの広瀬香美さんが「Twitter」を間違えて「ヒウィヒヒー」と読んでしまい、歌まで作ってしまった経緯をおもい浮かべますが、彼女のようなおふざけのことばではありません。コリイ・ドクトロウというSF作家の小説「マジック・キングダムで落ちぶれて」に書かれていることばのようです。
ドクトロウが予見する未来では貨幣が存在せず、その代わりに「ウッフィー」が使われます。マーケット・キャピタルではなく「ソーシャル・キャピタル」において流通する通貨のようなものであり、ネット社会における評判や信頼といったところでしょうか。ドクトロウは、ウッフィーを増加させる3つの方法として、好かれること、つながること、一目置かれることを挙げています。
タラ・ハントは、市場経済に対してギフト経済ということばで説明していますが、ウッフィーの流通は個人だけでなくビジネスにも当てはまるといいます。顧客とのつながりがあり、信頼を得て評価の高い企業ほど、ギフト経済において企業価値が高まる。確かにその通りかもしれません。
と、いっても正直なところ、まだ全面的に肯定できません。個人はともかく、ほんとうにビジネスにおいてツイッターが有効なのか、半信半疑のところがあります。しかし、ツイッターが爆発的に利用者を拡大してから、社会的な変化が目に見えるようになったと感じるようになりました。いずれは企業における影響力も、はっきりとわかるようになるかもしれません。
「ツイッターノミクス」では、クリス・アンダーソンの「フリー」のように社会やビジネスモデルの構造を図解して、チャートで解説するような分析はされていません。しかし、体験や事例をもとにポイントを箇条書きにして、原則や注意すべきことを整理しています。これがわかりやすい。
たとえば、どうすればウッフィーを増やすことができるのか。ウッフィーをリッチにさせるために、タラ・ハントは5つの原則を教えてくれます(P.57)。
- 大声でわめくのはやめ、まず聞くことから始める。
- コミュニティの一員になり、顧客と信頼関係を築く。
- わくわくするような体験を創造し、注目を集める。
- 無秩序もよしとし、計画や管理にこだわらない。
- 高い目標を見つける。
一方で、オバマ大統領の選挙活動の成功から学ぶべき7つの教訓を挙げています。こちらは、コンサルタントのウマイア・ハックがハーバード・ビジネス・レビューのウェブサイトに掲載された教訓のようですが、彼女自身のウッフィーを増やす5つの原則と合致すると述べられています。以下の7つです(P.60)。
- 自己組織的な運動を設計する。
- 一貫性をもって、しかし臨機応変に行動する。
- 計画は控えめにする。
- 人の和を拡げる。
- 親密度を高める。
- 真の革命を起こせるのは理想である。
上記から、ぼくが注目したのは3点。大声で叫ばないこと、無秩序を認めて計画性にこだわらないこと、そしてわくわくするような体験の創造です。
自己組織化やコミュニティとして個々のつながりを重視する点は、Web2.0と呼ばれた時流の傾向として当然であると感じました。しかし、大声で叫ばないこと、無秩序を容認することの2点は、著者自信も書いているように広告やマーケティングとの対比で重要です。
広告は大声で叫びがちです。キャッチコピーを大文字で雑誌や新聞で掲載し、ラジオやテレビのメディアを通じて何度も連呼します。一方、ツイッターなどのサービスでは「つぶやき」といわれるように、まず個々人によるちいさな発信です。発信した情報の届く範囲もCtoCであるため、基本的には個人から個人へのダイレクトなネットワークを経由して全体に拡散していきます。広告が最初から大声のメッセージを不特定多数の全体に向けて轟かせることに対して、ツイッターなどによる情報の伝播は、ちいさなささやきが波紋のように拡がっていくイメージでしょうか。
また、マーケティングでは、全体戦略からトップダウンによって、認知拡大、理解促進、導入促進というような段階の細部が設計され、費用対効果も徹底的に管理されます。ところが、ツイッターなどでは情報の広がりを管理できません。むしろ制御されることを嫌います。思いもよらないアイディアが爆発的に注目されたり、意図したコンセプトとは異なった側面から商品が支持されることもあります。
これらの広告やマーケティングにない原動力が、「わくわくするような体験」です。もちろん、広告やマーケティングも動機付けや期待感を「仕掛ける」ことはできます。しかし、企業やクリエーターによって仕掛けられたことであり、顧客自らが体験を望んでいるとは限りません。場合によっては押し付けがましい体験にもなりかねない。そういう意味で無秩序のなかから顧客がつくりだす体験は刺激的です。
無秩序については後半に章を設けて解説しています。ここでも6つの指標について書かれているので、ポイントだけ抜粋しておきます(P.207)。
- 固定観念にとらわれない
- オープンにする
- まちがいを認める
- 成功の定義を見直す
- 目標を設定する
- 達成度を測る指標を決める
ウッフィーによる顧客の信頼の獲得を基盤として、企業の成功事例に的を絞り、タラ・ハントは次のような「ウェブ上で顧客を増やす八つの秘訣」を掲げています(P.84)。
- 製品やサービスは、できるだけ幅広い層を対象に設計する。
- コメントには必ず返事をする。否定的な返事でもよい。
- 批判を個人攻撃と受け止めない。相手は、わざわざ時間を割いてカイゼンすべき点を指摘してくれたのである。
- 有益な指摘やアイデアには公に感謝する。本人にとってはうれしく、他のメンバーにとっては励みになる。
- 新機能や変更は必ず事前に報せ、フィードバックを求める。
- フィードバックを活かしてこまめに改善する。それによって、つねに顧客の声を聞く姿勢が伝わる。
- フィードバックを待つのではなく、こちらから探しに行く。コメントやメールが来なくても、顧客は一〇〇%満足しているのではない。
- どんなに愛されている会社や製品でも、あら探しをする人は必ずいると覚悟する。
いずれも重要な視点だとおもうのですが、ぼくが注目したのは6番目。「こまめに改善する」というところです。改善は日本人の得意とするところであり、機能が充実したり、使いやすくなるのはユーザーとしてはうれしいところ。しかし、なかには、開発者の自己満足によって何もアナウンスがなく、ある日突然、改善(改悪?)されることがあります。
ぼくがいまでも不愉快に記憶しているのは、はてなの一連の機能追加・変更でした。いまでは定着しましたが、はてなスターは、ほとんど何もアナウンスがなく、ある日突然に機能が追加されていました。しかも消すことができない。50%ルールなど、ある程度のベータ版で公開して、利用者の声を収集しながら機能を洗練させていくのはよい手法だとおもうのですが、何もアナウンスなしにいきなりの改善はユーザーをないがしろにしています。さらにそれが、複雑で使いにくいものであれば最悪です。
改善のヒントは、グーグルの開発哲学から学ぶことができます(P.104)。オッカムの剃刀はよく聞くことばです(Wikipediaの解説はこちら)。
グーグルのマリッサ・メイヤーは、二〇〇八年の年次開発者会議で、同社の開発哲学の一端を明かした。メイヤーは創設メンバーの一人で、現在は検索プロダクツとユーザー・エクスペリエンス担当の副社長を務めている。メイヤーによると、「最もシンプルなデザインが正しいデザインである」がグーグルの基本原則だという。これはいわゆる「オッカムの剃刀」の原理と相通ずるものがある。十四世紀英国の哲学者ウィリアム・オッカムは「ある現象を同じようにうまく説明できる仮説があるなら、単純な方を選ぶべきである」と言ったとされ、ここから、ムダを削ぎ落とすことをイメージして「オッカムの剃刀」という。
企業や技術(テクノロジー)にしても、結局はひとが関係しています。だから使いやすかったり、わくわくするような企業や技術に対しては信頼度が高くなる。つまり「ウッフィー」が増えます。一方で、信用を裏切られたり、不正があればウッフィーは減ります。ネットの世界では、個人にしても企業にしても、行動と考え方がガラス張りになっています。だから、特定の人間の意地悪だったりネガティブは、多くの人間に晒されている(P.154)。
たとえばあなたが誰かに意地悪をしたら、あなたに対する相手の評価は下がる。つまりあなたのウッフィーは減る。リアルの世界であればそこで終わりだが、オンラインでは大勢がそれを見ているので、大勢の人があなたのウッフィーを減らすことになる。逆にいいことをしてみんなの役に立てば、大勢の人があなたのウッフィーを増やす。企業にとって「いいこと」に当たるのは、多くの人の心を掴むようなすぐれた製品やサービスだ。そうした製品やサービスは注目され、大満足のエクスペリエンスの共有を通じてコミュニティが形成され、長く愛される。
あまりにも当然のことですが、コミュニティ先にありきではなく、「すぐれた製品やサービス」があり、そこに企業姿勢や開発哲学があるからこそ、ひとびとは期待したり、わくわくしたりします。製品やサービスの開発に注力せずに、コミュニティやツイッターなどの仕組みだけを使おうとしてもうまくいきません。
また、ツイッターがリアルタイムで「つぶやく」ことができるため、面白いもの、よいものがあっという間に口コミで拡がる一方で、不祥事や失敗もまたたくまに伝播します。新聞やテレビなどと違ってタイムラグがないので、その情報拡散のスピードにも留意する必要があります。
タラ・ハントは、ウッフィーによって企業が積極的に顧客から注目を集めるために、11のヒントを挙げて解説しています(P.155)。また、それぞれのヒントに代表的な企業事例を紹介されていますので、あわせて記述してみます。
- ディティールで差をつける。細部へのこだわりや気配りが特別な感じを演出し、満足感を高める。→モレスキン(P.155)
- ワンランク上をめざす。顧客の期待やベストプラクティスを超えるような満足感をめざす。→TED(P.159)
- 感情に訴える。製品やサービスへの愛着は、コミュニティを生み出す力になる。→ボージュ・オー・ショコラ(P.160)
- 楽しさの要素を盛り込む。思わず笑ってしまうような体験を創造する。→ヴァージン(P.163)
- あたりまえのものをファッショナブルにする。全然おしゃれでないものでも、クールにすることは可能だ。→日用品のメソッド(P.167)
- 「フロー体験」を設計する。みんながやみつきになるような仕掛けを用意する。→アップルコンピュータ(P.169)
- パーソナライゼーションの余地を残す。誰でも「自分だけの特別なもの」が大好きだ。→MOOカード(P.172)
- 実験精神で臨む。新しいことを試し、顧客を巻き込む。→スキニー(P.174)
- シンプルにする。使いやすいものほど愛される。→37シグナルズ(P.176)
- お客さまをまずハッピーにするビジネスモデルを構築する。顧客が自分の力を発揮できるようにすること、達成感を味わえるようにすること、人間関係をゆたかにすることを考える。→iPodとiTunes(P.178)
- 媒介役であるソーシャル・キャタリストをつくる。製品やサービスが生み出す体験を通じて人々を結びつける。
幅広い事例を収集するタラ・ハントの視点には凄いなと尊敬の念を抱きましたが、結局のところ、すべてにおいて注目できるのはアップルコンピュータという落としどころには若干のありきたりさを感じました。また、iPodとiTunesを事例として挙げている10番目、お客さまをハッピーにするという項目では、次のような幸福になる原因を引用しています(P.179)。
アメリカ心理学会は、幸福を構成する要素を調べるためにさまざまな文化圏で調査を行ったことがある。その結果、人が幸福を感じるのは、四つの要素のいずれかが成り立つときであるとの結果に達した。その四つとは、自らの力で状況を変えられること、問題の解決や願望の実現を通じて自分の能力を確信できること、家族や友人の結びつきを実感すること、自分を信頼し誇りを持つことである。
まず顧客を考えること。顧客がハッピーであるように設計すること。顧客満足度(CS:カスタマー・サティスファクション)重視のような姿勢は以前からあり、とりたてて新しい視点ではありません。新しい視点ではありませんが、成功している企業は×Web2.0という仕組みの活用がうまく実現できているようです。
成功要件の逆として、危険な徴候のチェックリストも掲載されています(P.230)。
- 顧客をウェブサイトにできるだけ長時間引き止めるために、あれこれ小細工をする。
- サイトのビジター数と閲覧時間数を重視する。
- 動画、コメント、画像などを自動投稿するための専用ソフトを使っている。
- 予算が厳しくなってくると、カスタマー・サービスやマーケティング関係の予算と人員をまず削減する。
- オンライン・コミュニティで製品やサービスが話題になり、予想外の使い方などが広まるのを好まない。
- カスタマー・サービスに関する規則がこまかく、規則外のことをするときはいちいち許可を得なければならない。
- 顧客をライバル会社に紹介したら、上司が激怒した。
- 製品の使い方を説明するDVDやマニュアルが大量に必要だ。
- 影響力のある人物を口説き落とし、ブログやTwitterで自社製品を取り上げてもらおうとしている。
- 会議やイベントに参加しても、売り込みに忙しく、会った人や話の内容を覚えていられない。
- ライバル社のFaceboolのページをチェックしては、敵のファンの数に一喜一憂する。
- 自社はダントツで、恐るるに足るライバルはいないと考えている。
前半は広告代理店、ウェブ制作会社のプランナーやコンサルタントには耳の痛いことばではないかとおもいます。
ドラッカーは「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と述べました。顧客重視の姿勢に徹することがマーケティングの極意であり、顧客重視を徹底すると採算性を超えた社会貢献のような姿勢さえ重要になります。
代替現実ゲーム(ARG)の例が興味深かったのですが、Cruel 2 B kindというゲームあるいはアコハという企業のplay-it-forwardは、現実世界で誰かに親切にすることでポイントを貯めていきます(P.241)。そんなゲームがあることをはじめて知りました。しかし、戦意高揚を意図した大量殺戮型ゲームに比べると、のどかで微笑ましい。このような発想がゲームの世界に生まれると、なんとなく幸福感も膨らむのですが。
クリス・アンダーソンが著書「フリー」のなかで述べた非貨幣市場について、タラ・ハントは「ギフト経済」という呼び名を使っています。似たようなことばであるけれど、ぼくは大きな違いを感じていて、藤井直敬さんの「ソーシャルブレイン入門」という本に書かれていたように、リスペクトは与えることはできても貰うことを強制できない。つまり、一方向だからこそ「ギフト」経済なのです。
繰り返すと、タラ・ハントは何も目新しいことは言っていないとおもいます。ひととひとのつながりを重視する、信頼や評価を大事にする、というようなことは、ネットが登場する前のアナログの世界から存在していたことでした。
田舎のような地域社会では近所づきあいによって、あったかいコミュニティを形成していました。隣りのおばちゃんが取れたての野菜を持ってきたり、おじいさんが子供たちにちょっとした声をかけることで、明言化したり可視化しなくても、無償による信頼の絆が生まれていました。特に日本という閉鎖的な地域社会では、逆にそうしたつながりは大切に育まれていたのではないでしょうか。
しかし、タラ・ハントが提示している現象は、そのような昔からあった社会と何が違うかというと、ネットの登場によってウッフィー(信頼・評価)が、定量化、可視化できるようになった、ということです。
ぼくは肯定すると同時に、タラ・ハントの提示する新しいギフト経済の社会に危惧も感じます。というのは、貨幣経済的な数の論理をギフト経済に持ち込むことによって、格差の構造や歪んだ価値観を生むことになるのではないか、とおもうからです。
サン・テグジュぺリの「星の王子さま」で、キツネが王子さまに言います。「かんじんなことは、目では見えないんだ」 と。5つ星による評価、フォロワーやつぶやきの数など、とかく数値的な可視化できるものに心を奪われがちですが、目にみえない徳を大切にしたい、と考えています。
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タイムリーなことに、ちょうど本日12日の19:00から、Book1st新宿店でタラ・ハントと津田大介さんのトークイベントが行われていました。定員40人の会場は既に満席だったのですが、Ustreamで中継されていたので、ウェブでイベントの様子をみることができました。
トークは基本的に通訳を交えながら、津田さんの質問にタラ・ハントが応える形式で進行。会場からの参加もあり、なかには話しながら感極まって泣いてしまう女性も。
UstreamのPOLLという機能を使って、視聴しているひとにアンケートを取ったり、立体的なイベントで感動しました。
視聴しながらパソコンで同時にメモした内容を簡単にまとめます。録音したわけではないので、聞き取ったままの記録を自分の解釈でリライトしています。太字の見出しは主として津田さんからの質問です。タラさんって「さん」付けで呼ぶとどこか変ですが(笑)。
■本を書こうとおもったきっかけは?
自分で本を書こうとおもいませんでした。3~4年ブログをやっていたのですが、出版エージェントから連絡があり、書くことになりました。
■ウッフィーとは?
コリイ・ドクトロウがSFのなかで書いたソーシャル・キャピタルです。その物語では、通貨は存在していません。ウッフィースコアで相手のプロフィールがわかります。スコアが高いと、信頼されている、たくさんのネットワークがあるということになります。
実際にオンラインのコミュニティにこのような通貨は流通していて、ウッフィーが貯まっているといろんな仕事をする機会に恵まれますよね。
■ウッフィーだけで生活ができるのでしょうか。
ウッフィーそのものは食べられません。それだけでは家賃も払えません。
でも、クレジットのようなかたちで貯めれば、最低限のお金しかなくても、あなたは信用されているから、ということで家賃を安くしてもらえる、食べ物がもらえるという風に生活ができる世界です。
■コミュニケーション能力、社交的ではないひとは?
ウッフィーはネットワークの規模に依存しません。社会に貢献すると貯まっていきます。したがって、社交的ではなくてブログやソーシャルネットワークに参加していなくても、オープンソースのさまざまなプロジェクトに参加したり、プログラムを書けば貢献できます。そして、ウッフィーが貯まります。
ウッフィーは他者に「気前よく与える」ことが大事なのです。
■オークションの評価制度もあったが、価値は捏造できるのでは。
ソーシャル・キャピタルは貨幣ではありません。相手によって価値が異なります。お金のように同じ尺度ではないため、偽造できません。
■匿名がいいのか実名がいいのか、どちらでしょう。
自分もニックネームを使っていますが、ニックネームと匿名はどちらもグーグルで検索できます。さまざまな議論がありますが、匿名は安全。
しかし、ツイッターは実名率が高いのも事実。長期的なウッフィーのためには実名のほうがよいでしょう。
(ここで視聴者にUst投票機能でアンケート。50%強が匿名)
「共有」に関心を持っています。Facebook、ツイッターなどのサービスです。これらを実名で使っていると、個人的なレベルで嬉しいことがあります。たとえば、東京に行くと書き込むと、「ここへ行ったらいいですよ」などのアドバイスや情報をもらうことができました。
(津田さんより)
ツイッターノミクスを読んで、匿名から実名にしたひとがいることも共有のひとつでしょう。オンラインで何かをシェアすることによって楽しいことができ、盛り上がるようになりました。人気のある番組はユーザー数が増えています。去年なら200人集まればよかったのですが、今年は1000人規模で集まります。
■ツイッターで助けられた、助けた経験は?
(会場に質問)
A:アメリカの女の子で、アニメに興味があるひとがいました。歌詞を理解したかったのですが、漢字を翻訳できなかった。そこで訳してあげました。
B:ツイッターノミクスの本がいいと言っていたら、こういうイベントがあるよ、ということを教えてもらいました。いまイベントにも参加でき、本にサインをもらうこともできます。
C:私は癌の体験があります。同様に癌の宣告を受けて悩んでいるひとに病院や情報など教えてあげたところ、そのひとに癌の情報が集まりました。そのひとから「いま丸の内線で泣いているのはわたしです」という書き込みをもらい、感動しました。また、水道橋博士さんや東浩紀さんにリツイートーしてもらったところ、ブログのアクセスが3000PVにも上がりました。
報道関係の仕事をやっていたのですが、ちょうど仕事をやめようとおもっていたときなので、力付けられました。
(タラさん:立ち上がって「ありがとうございました」)
■「正直者が馬鹿をみない社会」は理想だけれど、皮肉や酷い書き込みもあります。どうすればいいでしょう?
2つ具体例を挙げます。
まず失敗した例。
数年前にブログに否定的なことを書いてきたひとがいました。コミュニティで影響力の強いひとで、守りを固めなければと闘いました。しかし、相手は何百も書いてきました。もうこういうことはしないほうがいいとおもいました。
次にうまくできた例。
がっちり守るのではなく、別の反応があるのではないかと気付きました。
相手に関心があるような返事を書くのです。「あんたの本なんて最低」と言われたら、馬鹿と返すのではなく「どういうところが?」とか「だからどうなの?」冗談をもって返します。個人攻撃をされたとおもわないほうがいいでしょう。ネットで書き込みをしていると、ときどき相手が感情のある人間だということがわからなくなりますが、相手にも感情があります。
(津田さんから)
アタマでは理解できますが、酔っ払ったり怒ったときは返すようにしていますね。炎上に対する対処法に正解はありません。感情的に怒るぼくの対応が好きなひともいることに気付きました。
ツイッターを続けていくと、自分をよくみられたい、とおもうようになります。正直に書こう、とおもっていても、最終的には自分の言いたいことをいえなきゃしょうがないなと考えるようにしています。
(タラから)
感情の発露には拍手を送りたいわ。どの程度、感情を出すかについては、文化によっても違います。特にネガティブな感情を直に出すのは、気をつけたほうがいいですね。
■会場からの質問
(日経Bizオンラインの方から)
ポスト広告マーケットでは、従来の広告ではできなかったコミュニティができます。しかし、ソーシャルメディアは、いまのところマスメディアです。ウッフィーを貯めるというモデルが、今後、広告でどう生かされるのでしょうか。
(タラさん)
どんな業界でも時間が経つと変わっていきます。たとえば音楽業界。レコードがなくなり、テープになり、mp3などのデジタルダウンロードが主流になってきています。ジャーナリズムでもオンラインの活用が増えていて、広告もひとつの例にすぎないのではないでしょうか。
北米では、たくさんの調査が行われていますが、ある調査では購買の意思決定において、78%が「自分の買うブランドと何らかのコミュニケーションをとりたい」と答えています。
ソーシャルメディアが生まれる前には、ブランドやメーカーとコミュニケーションをしたいとは考えませんでした。自分の買うブランドとコミュニケーションをとりたいということは、メーカーとの関係が深くなるということです。広告においても革命的なツールになることでしょう。
(津田さんから)
だれでも簡単にできるウッフィーの貯め方ってありますか?
簡単ではないですね。脳を切り替えて、これからの新しい未来にわくわくしてほしい。そうすればきっとウッフィーも貯まるでしょう。
投稿者: birdwing 日時: 21:43 | パーマリンク
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