リコメンデーション・エンジン*1、について考えていたのですが、どうも気分がノリません。はっきり言ってしまうとITバブルの後遺症みたいなものじゃないでしょうか。理論先行のアタマでっかちな印象もあります。いやあデータベースが売れればいいんです、というSIの顧客を無視した思惑があるような気もする。
じゃあ、どういう考え方がいいのだろうと考えを巡らせていたところ、Consumer-generated media(CGM:消費者制作メディア)に至りました。
昨年の9月なので、記事としては古いものになりますが、Nikkeibp.jpで織田氏がConsumer-generated mediaの可能性を書かれています。
■Webマーケティングの近未来 第4回~Consumer-generated mediaとマーケティングの現状(その1)
つまり、個人や小さな団体が、ある分野に関して不特定多数の人に対してインフルエンサーとなり、プロモーションしてもらえ、検索エンジンなどを使って見つけてもらえるメディアを持つ環境が出現したと言えるだろう。そして、マスメディアのサイトと、その分野については対等に渡り合える。いや、Intelliseekの調査によると、90%のユーザーは、他の個人の意見に信頼をおいている、ということであるから、個人のブログの方が影響力が強いということが言えるかもしれない。
自分のことを考えても、上記の指摘は納得できます。
実は先週、SNSで足跡を辿ったら映画を監督されている方がいて、サイトをみたところ面白そうなので渋谷のシアター・イメージフォーラムまで観にいってきました*2。こんな「足跡プロモーション」も有りだな、と思いました。地道にビラを撒く作業に似ているのかもしれませんが、振り向いてくれる可能性は高い。
昨日は、やはりある方からインディーズCD+DVDのショートフィルムに出演してアルバムが発売、ということを聞いたので、新宿のHMVでそのアルバムを購入*3。影響されやすいのかもしれませんが(泣)
ひねくれものなので、僕の場合は特殊かもしれませんが、TVなどで「これおすすめです」というものより個人(知人ならさらにOK)が「作った」ものに惹かれる傾向がある。とはいえマスを無視しているわけじゃなくて、結局昨日はインディーズCDといっしょに、店頭でチャート1位の棚に置かれていたニューオーダーの新譜も買ってしまった。へえ、1位なんだ、と思ったことと、視聴したら割合よかったので購入したわけです。
たとえばメディアというのは、大きくなければいけない(=多数に影響を与えなければいけない)というマス発想が前提にあります。企業としてはより多くの利益を追求しなければならないので、多くの消費者に届くこと、購入していただくことは重要です。しかし、まったく違う方向のメディアとなるのが、ブログやSNSという気がしました。
さらに考えを深めていくと、ブログやSNSは、商品についての在り方も変えてしまうかもしれない。
多品種少量生産という顧客重視の発想に基づいたマーケティング手法がかつてありました。これは消費者が欲しいものを細分化して生産する、ということです。私見ですが、次には「欲しいものがないから自分で作っちゃえ」になるのではないか、と。つまり商品や情報を「作り出す」のがメーカーではなく消費者自身になっていくのじゃないかと考えます。行きすぎの考え方かもしれませんが、インディーズや自費出版が進化した形として、消費者がアーティストやジャーナリストになる。P2Pのような流通方法になって、生産者でありながら消費者にもなる。
ブログに関連するメディアの構造については、テクノクラティの佐藤氏のまとめた資料が、非常にわかりやすく参考になりました。
■ブログメディアの構造私論
一昨週の日経新聞に、大手広告代理店がブログ向け広告ビジネスに乗り出すと言う記事が載っていました。それを読んでちょっと「えー!?」と思ったのは僕だけでしょうか?
彼らは既存メディアの既存のやり方でブログをメディアとしてかんがえているのでしょうか?ここにアップした資料はあくまでも私論ですが、数年ブログと言うものに関わってきた経験から感じている事を少しブログメディアの本質って何だ?と言う側面からまとめてみたものです。
佐藤氏はブログを「メディアブログ」「ニッチブログ」「パーソナルブログ」の3つに分類しています
この佐藤氏が別にまとめたブログ動向などを引用しながら、FPNの管理人である徳力氏は以下のような記事を書かれています。
■日記系ブログとmixi日記の力関係はどうなるか?
丁度米国では、「米AOL、10代の若者向けにプライバシー制御機能付きブログサービス」を開始するというニュースもありましたが、今後は「大きな影響をもつブログ」を目指したい人は公開のブログ、「日記系のブログ」で一部の人とコミュニケーションしたい人はmixi日記やAOLのような公開制限のできるブログ、という流れができてくるのかなぁと感じたりします。
非常にわかりやすいと思いました。そして、実際にその通りになっている気がします。ブログ=日記、というイメージは個人的には既になくなりつつあって、コミュニケーションツールだと思っています。だから誰も反応してくれない「日々の独り言」を書いていても続かない、次第にやめてしまうんじゃないだろうか、と思います*4。
さらに付け加えるとすると、いま「心脳マーケティング」という本を読んでいるのですが、この本のなかで、マーケッターはすぐ1か2かという形に分類したがるが、人間の心や世の中の仕組みはそんなにデジタルなものではない、1でも2でもあるという状況がある、というようなことが書かれていました。実際に僕の場合にも、インディーズCDを購入すると同時にヒットチャートの1位も買っている。影響を与えたという意味では、SNSも店頭のPOPも同等なわけです。
とりとめがなくなってきましたが、「個人の閉ざされた日記でありながら、つながっているひとには多大な影響を与える。そのひととつながることがステータスになる」という徳力氏の分類をクロスオーバーしたものも考えられそうです。ちょっと宗教的な感じがして怖いですが。
ともあれ、「マス」と「個人」。「理系」と「文系」。「技術」と「芸術」。
そんな分野を横断した「組み合わせ」に僕は期待しています。
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*1:ECサイトなんかによくある「この商品を買っているひとはこんな商品も買っています」というやつですね。ファーストフード店では「ポテトもいかがですか?」という売り方をしていますが、ファーストフード店の場合、マニュアルにしたがって店員が機械的におすすめしているのに対して、リコメンデーション・エンジンは購買履歴のデータベースからおすすめをチョイスします。おせっかいという意味では、どっちもどっちという気もしますが、参考になることもある。書籍を購入するときなどでは、結構重宝しています。
*2:アナライフという映画です。
http://www.analife.com/
*3:イズミカワソラさんの『Scene Vol.1』です。
http://www.sorasora.com/cd.html
*4:その独り言を5ヶ月も続けているのがこのブログなんですけど。
投稿者: birdwing 日時: 00:00 | パーマリンク
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