髄膜炎の子供をもつ親の初心者メモ。
このエントリーに関しては、慎重に読んでいただけるようにお願いいたします。また、もし同じような境遇にある方がいらっしゃったなら、安易に判断せずに専門医と相談していただくことをおすすめします。というのも、ぼくは医療関連に関してはまったくのドシロウトであり、息子(次男くん)の入院をきっかけに調べ始めただけの一般人なので。
子供が月曜日に細菌性髄膜炎で入院しました。その経緯については、昨日のエントリー「75%の未来。」になるべく詳しく書きました。その後、重病であるということもわからずに、のんびりと構えていたのですが、どういうことなのか理解したかった。そこで、さまざまな方法で情報を入手しているうちに、次第にことの重大さに気付きはじめています。
さらに最先端の医療問題に関連しているらしい、ということをなんとなく察知しました。まだきちんと調べていないのだけれど、そんな匂いがする。個人的に、というかブロガーとして嗅覚が働いただけのことです。ひょっとして調べてみると面白いかも、と上空から俯瞰した鳥的な視野にひっかかるものがありました。
興味深いというのは非常に不謹慎なのだけれど、自分の息子の話であり、ひとごとではありません。探偵みたいですが(苦笑)、調べていくうちに、重大さだけでなくて社会的な部分も含めて、この病気のコンテクストのようなものが、ぼんやりとわかりはじめた。たぶん現在、注目されているのではないでしょうか。というのも、読売新聞の記事を興味深く読んだからです。
読売新聞の2007年9月13日の記事「細菌性髄膜炎 防げるのに」では、生後5か月の時に細菌性髄膜炎にかかったケースをもとに、「一命をとりとめたが、てんかん、難聴などの後遺症が残った。発達も遅れ、今も座ることも、しゃべることもできない。」子供に対して、今後このような子供をひとりでも救えないかと切実な願いを抱く田中さんという母親が、ワクチンの存在に気付き、5万9000人分の署名を集めたことが記事として書かれています。
以下、引用します。
国内の細菌性髄膜炎の60%以上はHib(ヒブ=インフルエンザ菌b型)と呼ばれる菌が原因で、ワクチンは100か国以上で導入されている。原因の25%を占める肺炎球菌にも乳幼児用のワクチンがあり、84か国で使われている。
ワクチンが導入された国では、細菌性髄膜炎の患者が激減している――。「なぜ、日本でだけ使えないのか」。衝撃を受けた。
さすがに自分の子供のことしか考えていませんでしたが、世界では少なくなりつつある病気のようです。さらに長文になりますが引用します。
記事で紹介された耳原総合病院(堺市)小児科部長の武内一さんの支援を受け、昨年10月、他の患者の家族と「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」を結成した。
会の活動もあって今年1月、Hibワクチンは国の承認を受けた。来年初めまでには輸入・販売体制が整い、接種が受けられる見通し。一方の肺炎球菌ワクチンは、近く厚労省に承認申請が提出される予定だ。
明るいきざしはあります。しかしながら、まだたくさんの課題を残している。世界の状況に比べると日本は遅れをとっているらしい。
だが、公費負担でまかなう定期接種に組み入れられる見通しはない。Hibワクチンは、生後3か月から1歳半までに計4回接種する。1回の費用は約7000円と見込まれ、約3万円の自己負担になる。
一方、世界保健機関(WHO)は、乳幼児への定期接種を推奨しており、Hibワクチンを導入した9割以上の国が定期接種としている。「日本も早急に定期接種で受けられるようにしてほしい」と田中さん。
日本の予防接種体制は、海外に大きく後れをとっている。他の先進国では、ポリオ、おたふく風邪に、日本の製剤に比べ副作用が少ないワクチンが使われ、乳幼児に下痢や嘔吐(おうと)を起こすロタウイルス胃腸炎への新しいワクチンの定期接種化が進んでいる。
「日本の常識は世界の非常識」と武内さんは嘆く。
ぼくの息子、次男君もインフルエンザ型の細菌性髄膜炎として診断されていました。病院からいただいた検体情報の結果には、莢膜抗原:b型と記されています。たぶんHib(ヒブ=インフルエンザ菌b型)だろうと思います。ちなみにWikipediaのインフルエンザ菌のページには、病原性として次のような記述があります。
膜株の感染症ではほとんどの場合b型が起炎菌で、敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性喉頭蓋炎、関節炎などを起こす。b型以外の莢膜株が人に感染症を起こすことは稀である。
髄膜炎もきちんとありますね。なので間違いはないか、と。さらに手もとの「一般細菌検査」の資料によると、BLNARという菌名が記されています。これは、βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)インフルエンザ菌のようです。以下もその解説です。
BLNARの存在が報告されたのは1980年であり、それほどBLNARの発生はそれほど古い話ではない[2]。しかし、2004年の北里大学の報告によると、検出されたインフルエンザ菌のうち21.3%(2002年)がBLNARであり[3]、また2007年の長崎大学による報告では、19.5%(1995-1997年)がBLNARであり[4]、近年の高い出現率が問題になっている。
つまりうちの息子の発症したものは、細菌性髄膜炎のなかでは比較的ポピュラーなパターンではないでしょうか。
というわけでいろいろとネットの海から情報を探しまくっていたのですが、ちょっと待て自分、とも思った。もちろん医療に対する理解は必要だけれど、何かとんでもない方角へ突き進んでいないか、と。
いま大切なのは、ベッドでぼんやりと眠る息子が元気になってくれることを祈ることであり、病気に対する情報収集にやっきになることではない。また、たくさんの情報が集まったところで、それは息子の病気を取り巻く現状を確認するだけのことであり、息子自体が置かれている状況は、また特別なものだったりするかもしれません。
そんなわけで、細菌性髄膜炎の息子をはじめてもった父であるところのわたくし(困惑)は、とりあえず病院にお見舞いに行こう、と思ったのでした。夜通しネットを検索して、安心するためのネタを探しまくるのではなくて。
不安はあっていいと思います。けれども不安を解消する場所はネットではなく、病院のベッドで元気になった息子の顔つきにあるのではないでしょうか。そのためにお医者さんは尽力していただいているし、親も親戚も応援している。それでいいじゃないか、と。
「知識だけあるバカになるな!」という本も読んだばかりでした。子育ての情報にいくら詳しくなっても、子供に接していなければ親として失格ではないか。病気に詳しくなったとしても、自分の子供が置かれている状況や苦しみをわからなければ、机上の情報を収集しただけに過ぎないのではないか。
ネットから離れて、病院へ行こう。
細菌性髄膜炎に対して若葉マークの父は、そんな風に考えをあらためています。元気に笑う息子の顔をイメージしながら。
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以下、細菌性髄膜炎に関する参考リンクです。
■Wikipedia 細菌性髄膜炎
症状
発熱、頭痛、嘔吐、不機嫌(乳幼児の場合)などがみられ、症状が進行すると痙攣や意識障害も現れる。
発熱は細菌感染の一般的な症状であるが、髄膜炎では脳脊髄液の圧力(脳圧)が高まり、脳自体に浮腫を伴うこともあるため、その刺激や血流の不足によって嘔吐、意識障害などの症状が現れると考えられている。
治療
患者が小児である場合、難聴の合併を予防するため、デキサメサゾン(合成ステロイド)を2日間併用することが多い。しかしデキサメサゾンの有効性についてエビデンス(科学的根拠)があるのは、インフルエンザ桿菌b型による細菌性髄膜炎の場合のみである。
■細菌性髄膜炎から子供たちを守りたい・・・
http://www.k4.dion.ne.jp/~zuimaku/
■髄膜炎って?
http://www.k4.dion.ne.jp/~zuimaku/g77.html
■細菌性髄膜炎
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_38.html
■むっち母の体験記 「救われた命」
http://homepage2.nifty.com/~sakura2001/taiken/mutti/mutti.htm
以下を引用。まったく同感です。変化を察知するのが大事だという気がしました。しかも早く。
でも、いつも手のかかる子が、あまりにおとなしい、そして笑わないというとき「おかしい」と感じることができるのは、親だけだと思います。この病気のことが周知され、早め早めに診断がつき、後遺症なく治癒する子どもが増えるようにと願い、メールしました。
投稿者: birdwing 日時: 01:31 | パーマリンク | コメント (4) | トラックバック (0)